女性の装い

2021-04-28 11:15:54

姚任祥=文·写真

服飾史

中国の歴史上、女性の服装に関する記述はそれほど多くない。数少ない資料の中から、私は特色ある23のスタイルを選び出し、型紙を起こし、更紗生地と洋風のビロードやシフォン生地を使って実際に縫い上げてみた。

これらのデザインは、春秋戦国時代(紀元前770~同221年)の「深衣」(上下が一体化したワンピースふうの服装)から始まり、清の兵が17世紀半ばに万里の長城を越えて南進したときに現れた「馬甲」というチョッキや、満州族の旗人(「旗」と呼ばれた支配階層)が着るゆったりした「旗装」から変化し、今や中国女性を代表するチャイナドレス「旗袍」まで、各時代で異なる中国女性の服装スタイルがうかがえる。

これら23タイプの服飾を前に、私はそのデザインや素材から、それぞれの時代の女性が大切にする品性と風習を見たような気がした。華やかで開放的であれ、保守的で堅苦しいものであれ、ごてごて雑然としたものであれ、「女為悦己者容」(女性は自分を愛する人のために美しく装う)という気持ちに時代の境界線はない、と私は信じている。

旗袍(チャイナドレス)は、かつて中国女性の代表的な服装だった。小さい頃、母親たちが着ているのを見ると、いつも厳粛さの中にもあでやかさが漂う美しさを感じていた。だが、今では旗袍を着る女性は少なくなり、むしろ胸元や背中を露出して流行のセクシーさをアピールする人が多くなった。実は、旗袍は女性のしなやかな美しさを引き立てるだけでなく、漢方医が首や胸元をあらわにしないように勧める漢方の医学理論にもかなっている。胸元を冷えや寒さから守れば風邪にもかからず、病気になりにくいのだ。

これらの服装を再現して作る中で、私は自分たちの古代の服装が、日本や韓国、東南アジアの伝統的な服装に明らかに影響を与えていることを見て取った。もし東西の異なる生地を選び改良すれば、新たな中国服の流行が生まれるかもしれない。

 

ビロードやシフォン生地で再現した古代中国の女性の服装

 

化粧と髪飾り

中国の古代四大美女――西施、王昭君、貂蝉、楊貴妃は、歴史上それぞれ「沈魚」「落雁」「閉月」「羞花」でその美しさが形容されている。

例えば西施(春秋時代)。彼女が川のほとりで洗濯をしていた時、川の魚が彼女を見て、あまりの美しさに泳ぐのを忘れて沈んでしまったという話から、「沈魚」がその美貌の代名詞となった。

王昭君(前漢時代)の場合は、異郷に赴く際、望郷の念から悲しい別れの曲を琵琶でかき鳴らすと、空を飛んでいた雁がその音色を聞き、王昭君の美しい姿を目にし、羽ばたくことを忘れて地に落ちたという話から「落雁」となった。

「閉月」は、架空の人物である貂蝉(後漢時代)が夜空の月を見ていたとき、月の女神・嫦娥が貂蝉の美しさには勝てないと自らを恥じて、急いで雲の中に隠れてしまったという伝説に由来する。

有名な楊貴妃(唐時代)の話では、彼女が触れた花は、彼女の美しさに自ら恥ずかしそうに頭を下げ、「羞花」となったという――こうした彼女たちの美しさは、長く私たちの心に生き続けている。

 

中国の伝統的な家具「面盆架」。正面に丸い鏡がはめ込まれ、二つの洗面器があって洗面や化粧に使う

美しくありたいというのは女性の天性であり、多くの女性は自身の美を一層引き立てるために化粧をし、髪飾りを付けるものだ。

子どもの頃、私は時代劇や武侠ドラマ(中国武術によるアクション劇)が好きだった。中でも登場する女性たちのファッションが好きで、髪飾りや身に付けるアクセサリーに興味があった。いろいろ空想しながら、髪型も髪飾りも違う24人の女の子を紙に描いたりした。

古代のアクセサリーは、金、銀、銅などをたたき薄くのばして作られていた。当時は今のような鋳型を作る機械がなかったので、全て腕の良い職人による手作りだ。その腕前は信じられないほど素晴らしい。

 

著者がテレビや映画の時代劇などをもとに描いた中国女性の24タイプの古典的な髪形・化粧

中国の古い典籍には、女性の肌の手入れに関する記載や研究が数多くあり、またたくさんの図表による文献・資料が残されている。それらは、化粧の仕方や顔や髪の手入れ、体の香りを良くする方法、整髪や髪を染めるやり方、さらに美容に良い食事療法など多岐にわたって描かれており、しかも全て年代考証がしっかりしている。

そして何より貴重なのが、その多くが化学的成分を含まないオーガニックな調合による手入れ方法で、今もなお使えるという点だ。また、その中で古代の化粧品の基本的な製造工程も紹介されており、実に面白く驚かされる。

また私は、頬紅や眉墨、口紅などの変遷に関する資料も見つけた。ここから化粧の仕方の歴史的な進化も分かる。それらを分析すると、唐代が最も開放的な時代のようだった。服装から髪型、化粧の仕方まで、唐代はきっと文化が大融合する時代だったと思う。

 

唐代の化粧方法(左から右へ)

清朝末期の権力者だった西太后が使っていた肌や髪の手入れの漢方の調合表も整理してみた。あの時代で権力を振るって72歳まで生きたこの女性は、黒々とした髪に一本も欠けていない歯と、きめ細やかな肌をしていたと伝えられている。私はその秘密を知りたいと思った。

これらの調合表には、4種類の漢方薬で作られた――今風に言えばダイエット用の入浴剤「消脂玲瓏浴」から、16種類もの漢方薬が入った美顔パックの「玉容散」、シャンプー用の「菊花散」、虫歯予防とホワイトニング効能もあるうがい薬の「潔白牙歯不松動」まで、非常に細かに調合されており、実に行き届いた「ケア」をしていたことが分かる。

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