冬至と占い

2023-01-17 16:03:08

姚任祥=文

冬至は旧暦の二十四節気の一つで、「冬節」とも呼ばれ、新暦の毎年1221日または22日に当たる。北半球の冬の始まりの日とされ、一年の中で昼が最も短く、夜が最も長い日だ。 

歴史書『尚書』によれば、中国人の祖先は少なくとも2500年前の春秋時代には冬至の日を割り出し、「日短」と称して昼間が最も短い一日としていた。冬至は二十四節気の始まりの節気でもあるため、古代においては非常に重要な祝日とされていた。『後漢書・礼儀志』にも「冬至前后、君子安身静体、百官絶事、不聴政、択吉辰而后省事」(冬至の前後、君子は体を休め、百官は仕事を休み、政を行わず、吉日を選んで行うがよし)とあり、漢代には冬至はすでに国が定める祝日となっていたことが分かる。歴史書『晋書』にも、魏晋時代には毎年冬至になると国を挙げて祝賀の宴を催し、「其儀亜于正旦」(その規模は新年に次ぐもの)だったと記されている。

 

冬至の主な風習 

~湯円を食べる~ 

古くから冬至の食べ物と言えば、北方地域はワンタンや水餃子、南方地域は湯円(白玉団子)が主流だった。台湾は南方からの移民が多いため、冬至に湯円を食べる習慣がある。台湾では冬至に食べる湯円は「円仔」と呼ばれ、もち米をこねて作った紅白の小さな団子のようなものだ。中に落花生やゴマ、砂糖を入れ、玉子大に包んだものは「円仔母」と呼ばれ、祖先への供物として供える。祖先を祭る儀式が終わると、昔の台湾の風習では湯円を門や窓、机、戸棚、家畜小屋などに貼り付け、神の加護を祈った。 


冬至の日に食べる鮮やかな紅白の湯円(vcg)

~冬の栄養補給~ 

冬は寒いので、中国では古来、冬至に栄養補給をする習慣がある。これは、前漢(紀元前206年~紀元25年)の高祖・劉邦が冬至に犬の肉を食べたことに始まるという。台湾でも以前は犬の肉を食べて滋養強壮を図る習慣があったが、1998年に法律で禁じられた。現在、冬至の栄養補給には、薬材で煮込んだ羊の肉や鶏肉が一般的で、干したリュウガンともち米の炊き込みご飯や、おかゆもよくある滋養強壮食だ。


中医薬材を買い求める人たち。薬材と肉を一緒に煮込むことで滋養強壮に役立つ(四川省楽山市で、『中国民俗芸術』より)

~祖先を祭る~ 

冬至に祖先を祭るのは、古くからの農業社会の風習で、清朝の康熙24(1685)年出版の『台湾府誌』にも次のように記されている。「是日、長幼祭祖、賀節、略如元旦」(この日、老いも若きも先祖を祭り、元日の如く冬至を祝う)。台湾の人々にとって冬至にご先祖さまを祭ることは、年越しと同じくらい大切だったことがうかがえる。また、冬至の日に先祖を供養した後、代々続く霊廟で盛大な宴会を開き、一族が集まって食事をすることを「食祖」(先祖と食す)と呼んでいた。 

冬至の先祖の供養は当日の早朝か正午に始まる。先祖にお参りする際、まずは供物台を用意し、そこに供え物として三牲(鶏・鴨・魚の3種のささげもの)あるいは五牲(鶏・鴨・魚・豚・羊)、それにご飯・酒・十二菜碗(12種の精進料理や菓子)・果物・湯円などを並べる。供物台には線香とろうそくの他、神にささげる金紙と先祖にささげる銀紙も用意し、供養した後に燃やしてあの世に「届ける」。  

供物台には、向かって右側に神仏の像や絵が置かれ、左側にはご先祖様の位牌が置かれる。ここに祭られているのは、一般的に釈迦像か観音菩薩だ。神仏像と先祖の位牌の手前には香炉が置かれ、その両側には灯明と花瓶がある。供物は、中心から外へ向かって酒杯・三牲・果物・菓子・精進料理の順に並べられる。 

台湾で最も凝った供物台と言えば、福建省南部から伝わる閩南式の3段組だ。最上段の長机には神仏像・香炉・灯明台・照明器具が置かれ、中段には花瓶や果物が並ぶ。さらに下段の八仙(正方形のテーブル)には、香炉を乗せる台と粉末の香炉をたく浄炉やコップが置かれる。 

供物台には、占い用の「筊杯」が置かれている家もある。これは神託を得る道具で、道教の占いの儀式に由来する。 

冬至にも関係する占いの儀式は実に奥が深い。 

杯は主に竹や木などで作られ、三日月の形をしたものが二つで一組になっている。いずれも丸みを帯びた面と平らな面があり、丸みを帯びた面が「陰面」、平らな面は「陽面」とされている。 

台湾の道教の寺院ではいつも杯が見られ、信者がおみくじを引く際、杯を落とすように投げて神様の思し召しを聞く。この神意を仰ぐ儀式のことを「擲」と呼ぶ。 

台湾の多くの家庭では、この方法によって亡くなったばかりの家族の位牌や神様にお伺いを立てる。擲を行う前に、質問したい者は自分の姓名と生年月日、年齢と住所、さらに尋ねたいことを念じる。続いて一対の杯を合掌するように両手で包み込み、拝んだ後、手を開いて杯を下に落とす。 

落ちた杯が示す答えは3通りだ。上を向いたのが陽(平らな面)と陰(丸みのある面)一つずつの「一陽一陰」ならば、「聖杯」「允杯」と呼ばれ、神の許しを示す。また両面とも陽は「笑杯」と言い、神のほほ笑みを意味し、尋ねたいことをもう一度はっきり伝える必要がある。もし両面とも陰ならば「陰杯」「無杯」と呼ばれ、神の同意は得られなかったことになる。 

神に祈って未来を占うのは人類古来のやり方だが、現代社会に生きる私たちは、専門的な情報と経験を活用して答えを導き出すべきだと思う。「天は自ら助く者を助く」と言われるように、神仏に問うような問題の多くは「杯」がなくてもおのずと答えは見つかるだろう。 

中国人は日ごろから祖先を敬い、裕福な家には祖先代々の肖像画を飾るための部屋もある。中国の古典小説では、大家族に何か重大な事が起きたときは必ず「祖先を祭る廟堂」に集まって相談し、誓いを立て、是非を判断する。 

ディズニーのアニメ映画『ムーラン』(花木蘭)は、中国人の誰もが知っている物語を題材としており、そこには私たちの「祖先の廟堂」が生き生きと描かれている。映画を見た世界中の子どもたちは、中国人にとってご先祖さまは常に一族の中心にいて、重大な決断を「実行」する役割を演じてきたと知るだろう。冬至は、そんな祖先への思いを深めてくれる大切な日である。 

 

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