米(5)
姚任祥=文
中国の多彩な米食文化を紹介するシリーズ。5回目は、米の粉を使った餅料理や餅菓子などに焦点を当てる。
粉片
米はご飯やおかゆだけでなく、ひいた粉を使ってさまざまな料理や菓子を作ることができる。その中で最も一般的なものが米粉(ビーフン)だ。白米を水に浸し、ひいて粉にした後、布袋に入れて水分をしぼり取る。それを取り出したら、粘り気が出るまでたたいてのばし、鍋で蒸す。半熟程度まで蒸したら、小さな穴がたくさん空いたところてん突きのような長い筒に入れ、後ろから押し出して細い麺状にし、再び蒸す。蒸し上がったものを乾燥させると、多くの人に愛されるビーフンの出来上がりだ。
ビーフンの製法は清の時代に福建から台湾に伝わったという。台湾北部の新竹は風が強く、乾燥に適しているため、ご当地産のビーフンが有名だ。「米粉埔」と呼ばれるところには、客雅渓という川が曲がりくねって流れ、平らな河原の砂地が比較的乾燥している。そこで製造業者は、竹で編んだむしろの上にビーフンを広げ天日干しする。車で通ると、川原いっぱいに干されたビーフンの風景が見え、この地の独特な景観となっている。
ビーフンはもともと在来米(インディカ米)で作られていたが、米だけでは固まりやすく、品質をコントロールするのが難しかった。そこで改良が重ねられ、トウモロコシの粉を加えることで食感により弾力が出て、安定して大量生産できるようになった。
ビーフンは炒めてもスープと煮てもおいしく、人々に愛されている食べ物だ。炒めるときの主な具材は、キャベツの千切りや肉の細切り、セロリなど。スープを加えて混ぜると、よりいっそうおいしくなる。
天日干しにされる大量のビーフン(福建省泉州市、vcg)
同じ米が原料でも、雲南地方の「米線」と台湾の「米粉」(ビーフン)は異なり、米線はやや太めで、炒めずに熱々のスープに入れて食べる。このスープが独特で、まず野菜と薄切りの肉や魚などの具材を食卓に並べ、次いでぐつぐつと煮立ったスープを出す。このスープには少量のが入っていて、なんとも香ばしい。そして米線が運ばれてきたら、スープが熱いうちに先に具材をスープに入れ、最後に米線を入れる。こうしたスタイルの料理は「過橋米線」と呼ばれ、具材は全部で10種類以上にも及ぶ。
甘い「米苔目」(米粉うどん)は、台湾の夏で一番人気のある米の軽食・菓子だ。在来米と片栗粉を混ぜた後、まず湯を入れてよく混ぜ、次に冷水を少しずつ加えながら、指先で軽くひねられる程度まで柔らかくする。その後、小さな穴のある容器に入れたら、麺状に絞り出して冷水に入れ、形を固める。冷水から取り出したら、甘いシロップをかけて召し上がれ。
この他に、「米粉片」「河粉」「粿条」(いずれも米が原料の平打ち麺、台湾風フォー)は作り方が似ており、材料の混ぜ具合が違うだけだ。主な材料は、在来米にトウモロコシ粉やクログワイの粉を加え、さらに油と小麦粉を少々混ぜたものに過ぎない。大きな鍋で湯を沸かし、油を塗った長方形の浅い容器を入れ、味付けした生地を流し込んで蒸すだけだ。
広東省の順徳には、「陳村粉」という平打ち麺に似た軽食がある。だが作り方は凝っていて、選りすぐりの米を半年以上寝かせて乾燥させ、しっかりとした米質にし、蒸すとより弾力が出るようにしている。さらに、必ず石臼で粉をひくというこだわりぶりだ。こうして作られた陳村粉は普通の河粉よりも3分の1ほど薄いが、口当たりは滑らかで、河粉と同じくらい弾力がある。だが手作業のため手間がかかり、生産量は限られている。
私が17歳で米国に留学していた頃、漢声出版社の『中国の米食』という本を持って友人のアパートに遊びに行った。すると、友人皆が河粉(平打ち麺)を食べたくなり、備え付け家電のジューサーで米をひいてみた。ところがジューサーは壊れてしまい、がっくりして作るのをやめたことがあった。
多彩な中国のビーフン料理
糕粿(中華風餅)
ライスミルクで作る糕粿は、中国人の知恵の象徴ともいえるだろう。一体誰が石臼を発明したのか。また誰が「臼でひく」ことを思いついたのか……私はいつもそう考える。この偉大な発明によって、水びきから湿式粉砕、乾燥粉砕などの技術が派生し、ライスミルクや糕粉、水溶き粉、潮粉、生粉、熟粉など米の粉を使った多様な食材が生まれた。そして、悠久の歴史があり、百種類近くもある私たちの糕粿文化を築いた。中国の各省には、蘿卜糕(大根餅)や桂花年糕(モクセイ餅)、寧波年糕、豚油(ラード)年糕などがあり、各地の糕(餅)は味や作り方が異なっていても大きな違いはない。
台湾では年糕は「粿」と呼ばれ、黒砂糖や白砂糖、アズキなどの甘口もあれば、赤タマネギや干しエビを加えた甘辛い粿もある。お正月には、亀の甲羅に似た形の赤亀粿や草籽粿(ヨモギ餅)などを、ご先祖様や神様に供える。点心(菓子・軽食)の中で代表的なのは碗粿(ワーグイ)だ。日本から伝わった餅文化も、私たちの糕粿文化と基本的には同じだ。
「碗粿」は在来米のライスミルクを使う。作り方は簡単で、米汁とラードで炒めた干し大根、豚肉の細切り、シイタケ、少量の干しエビを一緒に蒸すだけ。碗粿を盛るのに使う器はとても質素で、庶民の味の代表である碗粿と見事にマッチしている。
「草籽粿」は以前「鼠曲粿」(ハハコグサ餅)と呼ばれ、中身は干し大根の千切りと少量の豚ひき肉を混ぜたものだ。かつては清明節のお供え用だったが、今では健康食品となり、街角や観光地でよく見かける。「赤亀粿」の中身は甘いこしあん、ピーナッツやゴマのペーストなどが一般的だ。また、甘酸っぱい味もあり、酢漬けキャベツにニンニクのみじん切りを少々加え、しょうゆと砂糖で炒めて作る。赤い色はめでたさを、亀は長寿を象徴し、餅の上には縁起の良い文字が入っている。
私の一番のお気に入りは台湾の「甘粿」(台湾風あんこ餅)だ。餅米粉と在来米(インディカ種のうるち米)の粉を約7対1の割合で混ぜてライスミルクを作り、リュウガン、煮たアズキと一緒に蒸しあげる。昔、田舎の古い大きな台所では大きな蒸し器を使って蒸し、蒸し器の四隅に中が空洞の竹を立てて蒸気を逃がしていた。1回蒸すのに3、4時間はかかり、蒸し上がったら1日冷まし、少し硬くなったら切り分けていた。
中国大陸から移ってきた人は、これを溶き卵で包んで油で炒めることが多い。台湾出身の人は、直接油で焼いたり、溶き卵を混ぜた小麦粉を付けて揚げたり、パクチー(香菜)のみじん切りを加えた溶き卵の汁を付けて揚げたりする。炒めても揚げても、おいしく仕上げるコツは丁寧さと根気だ。
「糕仔」(餅菓子)類は、ひいて乾かした米粉を弱火で炒り、砂糖とラードを混ぜてふるいにかける。そこに、いろいろな味を加え、型に入れ蒸して作るケーキ風の菓子類だ。
「発糕」(中華風蒸しパン)も在来米のライスミルクを使い、薄力粉とふくらし粉を混ぜて作る。原料の割合をきちんと守れば、蒸すと口が開いたように裂ける。つまり、真ん中が割れてふっくら膨らまなければならない。田舎の人は、発糕が膨らまないと、来年は物事がうまくいかない、特に金運が下がると強く信じた。
香港の広東風蘿卜糕(大根餅)は、こんがりとした焼き目と細かく切った具材・大根、米の粉が醸し出す繊細な食感が絶妙だ。一方、強い弾力の寧波餅は、しっかりこねるので生地が引き締まり、スライスして食べる必要がある。セリホン(中国からし葉)や豚肉の細切りと一緒に炒めたり、スープで煮たりするのが一番だ。
昔はお年寄りの家に誕生日祝いに行く際、テーブルには長寿を祝う桃まんじゅうと麺の他に、寧波餅が数段にも積み重ねられているのをよく見たものだ。これは子孫の繁栄や富と栄達を意味した。モクセイとラードの餅は蘇州の名物で、マイカイ(バラ)、ナツメのこしあん、ゴマなどさまざまな味があり、材料も凝っていて芳しい。