写真=長舟真人 文=萩原晶子
上海市内の各公園には、園内に住むねこの世話をするボランティアがいる。多くが近隣に住む高齢者で、早朝や夕方に餌を設置したり掃除をしたりしている。それを支援する若い人たちが微博などでつながっているケースも多い。SNS上で餌代を集めたり、里親を探したりする形だ。
一方「静安公園」は、若い人が直接ねこの世話をしている公園だ。 デパートやブランドモール、5つ星ホテルなどが集まるエリアで、近くに昔ながらの集合住宅が少ない場所だからかもしれない。そんな上海有数の繁華街の真ん中にある公園なのだが、ここに住むねこたちはどれもとても穏やかだ。見かけるねこの6割ほどに去勢手術済みの目印である耳カットも入っている。毎日公園に来るというボランティアに話を聞くと、現時点で園内に住むねこは約30匹。去勢手術などの費用は自分たちで捻出しているという。
耳カットのあるねこは、去勢、避妊手術済み あくびがうつるほど市民と馴染んでいる
「静安公園」はねこにとって住みやすい公園だ。しっかりしたボランティアがいるだけでなく、隠れやすい太湖石の洞窟や築山もある。山の中には人見知りのねこたちがいて、人通りの多いベンチのあるエリアには人好きで構ってもらいたいタイプのねこたちが住んでいる。性格に合わせた居場所があるのだ。
ボランティアが毎日ご飯をくれる
人見知りのねこは、人が来ないエリアに居住
公園の南門は延安中路に、北門は南京西路に面している。北門側には地下鉄2、7号線「静安寺」駅もあり、通勤時の近道にと「静安公園」を通り抜けている人も多い。だが、そんな忙しい人たちも、ねこに行き合うとつい立ち止まってしまっている。スマホのカメラを構える人から、ねこの背中の模様を見て、「これは山水画に似ている。上の方が山肌で、下の白い部分は雲霧で」と、芸術談義を始める人たちもいる。
毎日いる老ねこ。カメラを向けられても落ち着いている
人が座っているベンチにわざわざ登ってきたり、公園で過ごすおじさんのひざに乗って暖を提供しているねこもいる。「静安公園」は、上海市民とねこの関係を垣間見ることができる場所だ。
個性的な色柄のねこが多い
静安公園
上海市南京西路1649号