写真=長舟真人 文=萩原晶子
新型コロナウイルスのニュースがネット上を埋め尽くしていた2020年2月21日、微博や豆瓣では「延慶路丑猫」というワードが静かに盛り上がっていた。ヘンな顔の白黒のねこが延慶路のある小区(住宅区域)で繁殖しており、爆紅(ネットで大騒ぎ)状態だという話題だ。このニュースだけ浮いていたため、多くの人の目にとまったようだった。
延慶路は、昔ながらの小売部(雑貨やタバコ、飲み物を売る窓口)や果物屋が点在する500mほどの通りだ。1930年代前後に建てられたコロニアル風建築も多い。竺菊香、周宝奎などの往年の舞台役者のほか、中国の藍染を研究していた蒐集家・久保マサ、上海を代表する近代画家の一人・程十発などがこの通りに住んでいたことでも知られている。
「上海栄建食品銷售有限公司」の咪咪
つぶれたような形状で一見心配になるが、天然のカギしっぽとのこと
通りを代表する看板ねこといえば、タバコや飲み物、ペットフードなどを売る「上海栄建食品銷售有限公司」の咪咪(10歳/雄)である。10年間、店の前を行き交う人を眺め続けているねこで、幸運を呼ぶというカギしっぽの持ち主でもある。いつ通りがかってもそこにいてくれる安定の看板ねこだ。
店の前の歩道のふちで通りを眺めるのが日課
小花に会える「大福里」
立派な門のあるレンガ造りの住宅「大福里」も延慶路で見るべき歴史建築の一つ。この入り口にある小売部「大福雑貨店」には、看板ねこ歴3年の小花(3歳/雌)がいる。やや人見知りだが、たまに立ち寄るとレジのある窓口が開けっ放し、店員が席を外している状態で小花だけがいる、という状態の日もある。信頼されているねこなのだ。
奥に引っ込んだ小花を飼い主が連れてきてくれた
撮影中、通りの住人や小区の入り口で検温をしている警備員に「延慶路丑猫」について聞いてみた。話題になっている白黒のねこについては、全員が「見たことがない」とのことだった。
上海市延慶路
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