文=萩原晶子 写真=長舟真人
4〜5月、市民が外出できなかった期間、外にいるねこたちはどうしていたのだろうか。小区内では、一階に住む人や小区内の売店の人が世話をしたり、PCR検査での外出時に餌を置くなどのサポートがあったという。では小区外、普段世話をしている人が行けないエリアのねこはどうしていたのだろう。
静安寺エリアの隠れオールドホテル「静安賓館」
庭石の隙間にねこ。広大な芝生広場や雑木林、竹林などがあり、ホテル庭園はねこにぴったりの環境
「静安賓館」は、1920年代に「海格公寓」として建てられた歴史的建造物内のホテルだ。デザインはスパニッシュ様式で、現在もフロントやカフェに当時のままの調度品や家具が置かれている。オープンは1980年とのこと。だが、上海を代表するオールドホテル・「和平飯店」「国際飯店」ほどの知名度はない。立地も、「昆侖大酒店(旧ヒルトン上海)」と「上海賓館」に挟まれた、道路側からは見えない地味な場所にある。
食事中。草むらのトレーに近所の人が置いたキャットフードが
しかし、一歩敷地を入ると広大な庭があり、華山路から烏魯木斉中路へ抜けられる竹垣の歩道がある(2022年6月現在閉鎖中)。ここに20匹ほどのねこが暮らしている。耳に切れ込み(避妊手術済み)のねこもいる。
食後のひととき。のんびりしているが、人が近づくのは苦手
「静安賓館」と、隣にそびえる「上海賓館」は2020年以降入国者用の一時隔離施設として利用されている。門の前にはロープが引かれ、防護服姿のスタッフが見回りをしている。ねこたちは、ロックダウン中ホテルの駐車場案内の人に見守られていたらしい。そのスタッフによると、閉鎖前に普段餌をあげにくる近所の人に餌を託されたとのこと。入口の小屋のなかにはキャットフードの大袋がまだたくさん残っていた。
駐車場係がいる小屋はねこの食糧ステーションにもなっている
住んでいるねこたちは人見知りが多いが、駐車場の人によると「黄色くてきれいなねこが多い。呼ぶとちゃんと来る」そう。6月以降は近所の人たちも世話に訪れるようになったそうで、「今日はお腹いっぱいだからあまり出てこないかも」とも。ねこたちにも普段の生活が戻りつつある。
上海市華山路370号
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