多様な文化育む山地と盆地 町歩きでパンダの魅力体感

2025-04-17 14:38:00

盆地の中の日常生活

四川の東半分は、中国四大盆地の一つである「四川盆地」だ。 

四大盆地のうち、他の三つは中国北西部の乾燥地帯に位置する。だが、西側に隆起したチベット高原のおかげで、四川盆地は、季節風気候に恵まれ、空気に潤いがあり、豊かな植生が広がる楽園のような土地になった。さらに、四川盆地は比較的安定した沈降地域であり、プレート同士の圧力や摩擦に影響されず、大地震による大規模な被害からほぼ免れてきた。このことが、四川盆地が巴蜀文明を育み、数千年にわたる繁栄発展の歴史を持つようになった大きな要因かもしれない。 

にぎやかな町から雪山を眺望 

朝早く、成都の写真家嘉楠さん(仮名)は自宅のベランダで、カメラを持って慎重に構図を決め、静かに待ち始めた。空が明るくなり、遠くの雪山がその姿を現した。嘉楠さんはすかさずシャッターを切り、都市と雪山が織り成す美しい画面を写真に収めた。 

四川省の省都成都市が位置する成都平原は、四川盆地の西部にあり、盆地の中でも特に平坦な地域だ。その西側には貢山を始めとする横断山脈の山々が300以上連なり、果てしなく続くスカイラインを描いている。このような独特な地理的位置に恵まれた成都は、世界で唯一、人口1000万人以上の都市でありながら標高6000級の雪山を望むことができる都市だ。 

成都には、嘉楠さんのような雪山撮影愛好家が少なくない。彼らは「成都から雪山を眺める会」を結成し、雪山の撮影や情報共有、関連知識の普及などに取り組んでいる。 

「近年、成都では雪山を撮れる日がますます多くなっています。生態環境の改善の効果だと思います」と嘉楠さんはうれしそうに語る。 

豊かな自然に恵まれ、数千年の歴史を誇る四川盆地の人々には、どこか独特な「ゆったりとした気質」が根付いている。その代表格ともいえるのが、16年連続で「中国で最も幸福な都市」ランキング1位に輝いた成都だ。 

成都の茶館に足を踏み入れれば、その独特な暮らしの哲学を肌で感じられる。 

大慈寺のように、数百人から千人規模で茶を楽しめる大きな屋外茶館もあれば、路地裏の空き地に竹製のテーブルと椅子を二、三脚並べただけの小さな茶店もある。成都は茶館の数が驚くほど多く、それは中国の他のどの都市にも見られない光景だ。 

竹の椅子に深く腰を沈め、足を竹製の足置きに乗せる。柔らかく弾力のある竹が、体を心地良く包み込む。のんびりと茶を飲んでいると、いろいろな売り声が聞こえてくる。 

「丁丁糖(成都の伝統的なあめ)はいかが?」「耳掃除しませんか?」「お嬢さん、手相占いをしますよ!」 

成都の茶館では、単に茶を飲めるだけではない。講談を聴き、川劇を見て、耳掃除や靴磨き、マッサージなどもしてもらえる。ひとしきり茶を楽しんだ後には、四川の家庭料理を味わうこともできる。まさに、成都の日常そのものが織り成す、生きた風俗画といえる。 

そんな悠然とした大慈寺の茶館のすぐそばには、中国南西部で最も有名で現代的な繁華街の一つである「春熙(チュンシー)路」が広がっている。伝統と現代が違和感なく共存する、このような包容力こそが、成都の魅力かもしれない。 

受け継がれる伝統劇への情熱 

寛窄巷子(成都の観光スポット、古い街並みを残した横町)の火鍋店に足を踏み入れると、中央の舞台で川劇(四川の伝統劇)が演じられていた。袖をひるがえしたり、振り向いたりするたびに、仮面が次々と変わる。「面白いぞ!」と客席から大きな歓声と拍手が上がった。 

これは、「変面」という、川劇の中の伝統の技だ。 

この「変面」は、大昔、人々が猛獣を追い払うために顔に奇怪な模様を描いたことに由来するという。それが後に川劇の舞台芸になり、名役らが代々、創意工夫を凝らしながら発展させてきた。 

川劇は、京劇と同じく「唱打(歌せりふしぐさ立ち回り)」などといった要素からなるが、四川方言で演じられる川劇は、よりドラマチックで、四川人独特のユーモアがある。 

例えば、有名な演目『帰正楼』では、物乞いの丘元瑞がこう歌う。 

「あんな立派な楼閣に住んで何になる? 橋の下にいれば、雨漏りの心配もないさ。あんな肉を食べて何になる? かゆを食えば、歯に挟まる心配もないさ!」。ここから、四川人の軽妙なユーモアと皮肉が感じられる。 

午後2時。成都の「三花川劇団」の劇場では、毎日の公演が始まる。設立から8年、ほぼ年中無休で川劇を上演してきた。小さな劇場には、成都の各地から川劇を愛する人々が集まる。 

劇団の柱の一人である陳英さん(54)は、12歳で川劇を学び始めた。18歳で劇団を離れ、一般の仕事に就き、結婚し、家庭を持った。そして、2015年、かつての仲間たちとの再会をきっかけに、劇団を立ち上げる決意をした。 

観客は、30元の入場料で、2時間半の公演を存分に楽しめる。高齢者はさらに割引があり、20元で観劇できる。陳英さんの話によると、チケットの売上げだけで、劇団の運営費などのコストや出演者の報酬を賄うことは難しいという。彼らが今まで続けてこられた理由は非常に簡単だ。それは、ここなら毎日舞台に立てるから。「私たちは川劇を愛しています。だからこそ、少しでもその伝承の力になりたいんです」と陳英さんは語った。 

上一页123下一页
関連文章