『看天下』 原発汚染水の海洋放出を巡る論争
福島第一原発の汚染水の海洋放出に対して、国際世論は主に二つの「陣営」に分かれている。欧米諸国とメディアは大体この行為を支持しているが、近隣諸国や太平洋島しょ国は主に反対している。海洋放出計画の支持者は、国際原子力機関(IAEA)が発表した報告書を論拠に挙げる。しかし、それを疑問視する声もある。
第一に、東京電力は汚染水の全アルファ放射能と全ベータ放射能に関するデータしか公表しておらず、ネプツニウム237、プルトニウム239、プルトニウム240、アメリシウム241、アメリシウム243、キュリウム242などの放射性毒性が強い超ウラン核種の濃度に関するデータを公表していない。これは、汚染水の海洋放出における重要な安全上のハザードの一つである。第二に、実は現在の技術でトリチウムを除去することは可能だが、日本側は経済的代償の比較的低い海洋放出案を選んだ。第三に、IAEAの報告書は、日本が一方的に提供したデータや情報に大きく依存している。
このほか、多くの専門家は、現在、汚染水がもたらす長期的な影響に対する私たちの認識はまだ不十分であり、このような状況で、海に放出するのは軽率な決定であると考えている。希釈された汚染水が国際基準を満たしても、排出総量には変化がなく、大量のトリチウムの排出によって海洋生態系や食物連鎖の中で生物濃縮が発生し、ひいては人体に影響を及ぼす可能性があることを懸念している。米国ジョージ・ワシントン大学のエネルギー・環境法の専門家であるエミリー・ハモンド氏は、「IAEAの仕事を信頼することはできるが、同時に、国際基準を満たすことが、環境や人間への影響が『ゼロ』であることを意味するわけではないと認識しなければならない」と述べた。