中日で新ブランドを共同開発
劉徳冰 ブランド中国戦略計画院副院長
沈暁寧=聞き手・写真
国家ブランド指数(NBI)の考案者であるサイモン・アンホルト氏はかつて「ポジティブで強大な国家ブランドはグローバル化時代において極めて重要な競争優位性を意味する」と述べた。「ブランド強国」である日本のトヨタ、ソニー、東芝、三菱など長い間名を馳せた国際的なブランドが映し出したのは日本の姿に他ならない。この10年間でファーウェイ(華為)、ハイアール(Haier)、中国鉄道グループ株式会社(CREC)、国家電網などの中国企業の国際的な評判が上昇し続けており、これらは世界に中国を紹介する国際的な名刺となった。世界第2位と第3位に位置する経済大国である中日両国が海外での協力・ウインウインを実現する道を探し求める中で、ブランドの共同開発は双方の経済協力に全く新しく深い意味を持つ新天地を切り開くことになるはずだ。これに対し、ブランド中国戦略計画院副院長の劉徳冰氏が本誌インタビューに答え、自身の見解を語った。
――現在の中国はブランド開発をどのように見ていますか。現在の発展や将来のビジョンをお聞かせください。
劉徳冰氏 国家ブランドとは一つの国が全世界の人々の心に刻む総合的なイメージであり、民族の素養と全体的な国力をまとめて体現するものです。中曽根康弘元首相が外遊時に、自分の左の頬はトヨタで右の頬はソニーだと言ったことを記憶しています。ブランドは世界における日本のイメージをつくる上で重要なものだったといえます。
2014年6月、習近平総書記が河南省を視察した際に「中国製造を中国創造へ転換し、中国の速度を中国の品質に切り換え、中国製品を中国ブランドに移行していくのを推し進める」という重要な指示を出しました。中国のブランド開発に方向を明示し、モデルを明確にし、方法を計画したのです。
16年の中国経済は予想を上回る6・7%の成長を実現しましたが、中国経済の持続的な成長を推し進める基礎はまだもろく、新旧原動力の転換を促すモデルはまだ見通しが明らかになっていません。国外では「脱グローバリゼーション」や「マイナス金利」、財政政策の景気刺激策の効果不足などという不確定要素の課題に直面し、国内では過剰生産能力の解消、需要と供給のバランスの実現、不動産と金融リスクの防止という激務が存在しています。このような背景の中で16年に国務院が「ブランドのけん引作用を発揮し需給構造のバージョンアップを推進させることに関する意見」を公布したことは、中国ブランド開発が供給側構造と需要側構造の向上を推し進める全く新しい発展段階に入ったことを表しています。
同年12月、世界各国の貢献度を表す「良い国指数」ランキングで中国の国家ブランドは163カ国の中で64位と発表されました。これは中国の国家ブランドが文化的アイデンティティーと国際的な責任などの面でさらに大きな努力を果たすべきだということを意味しています。
16年に行われた第4回「中国国家イメージ国際調査」によると、中国の全体的なイメージは6・2ポイント(10ポイント満点)で、15年より0・3ポイントアップし、特に18歳から35歳の若者層が中国に対して全体的に良いイメージを持っていることが明らかになりました。米国、中国とロシアは依然として国際事業で最も強い影響力を持っています。悠久の歴史を持ち、魅力あふれる国家イメージと勤労勤勉の国民イメージが海外のインタビュー回答者が持つ中国の一般的な認識のようです。中国製品は海外でのイメージに改善が見られ、特にアフターサービスに対するイメージが格段に向上しました。漢方、武術、中華料理は中国の最も代表的な文化要素となりました。高速鉄道は中国の科学技術の成果を最も知らしめるものです。そして、「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」イニシアチブは徐々に海外で認知され、受け入れられています。回答者のうちの64%が、中国がグローバルガバナンスにおいてより大きな役割を果たすことを望んでいます。
17年5月10日にこの日を「中国ブランドの日」にすることが決定し、中国共産党第19回全国代表大会(党大会、19大)では「現代化経済体系の構築」が提示されました。これらの好ましい要因はみな中国ブランド開発の発展環境を整え、発展空間を構築することに、極めて重大な役割を果たします。
これに対し、ブランド中国戦略計画院はさらに「研究を深め、教育を推し進め、プラットホームをつくり、サービスを革新し」、中国のブランド開発のために構想を練り、プランを立て、経験をまとめ、知恵を出しているところです。
――中国ブランドの国際的な影響力はどのぐらいですか。中日の企業が共同で国際的なブランドをつくり出すにはどのような協力の余地がありますか。 劉 現在、国家電網、テンセント(騰訊)、アリババ、ファーウェイ、レノボ、中国建築、中国石油などの中国ブランドが世界においてすでに一定の知名度と影響力を持っています。全体的に言って、中国ブランドの国際的な影響力はまだ発展する力が多く隠されていますが、客観的に見て以下の三つの問題が存在しています。
一つ目は全体的な規模がまだ小さいということです。2016年度「世界のトップブランド500」のランキングを分析すると、500社中227社が米国企業で占められ、米国は安定してブランド大国の首位に位置しています。イギリスとフランスは41社が入っていて第2位です。日本、中国、ドイツ、スイス、イタリアがブランド大国の二番手であり、日本は37社、中国は36社の企業が入っています。世界第1位の人口総数、世界第2位の経済力、強大な製造能力と技術レベルを持つ中国にとって36という数字は決して多いとはいえません。
二つ目はブランド主導産業の進出が少ないということです。世界のトップブランド500は50の業界をカバーしていますが、中国はエネルギー業界でたった5社しか入っていません。飲食、メディア、インターネット業界ではそれぞれ3社ずつです。自動車業界と小売業界には一社も入っていません。これは、中国製品が世界に分布しているとはいえ、ブランド集中度の高い産業で中国ブランドが依然として非主流にあることを意味しています。
三つ目はブランドの成長する潜在力が構造的に不足しているということです。新しいブランドの数はその国の活力と後発の優位性を示します。16年度の世界のトップブランド500には、27社が新しくランキング入りしています。そのうち、16社が米国で5社が中国です。米国の新ブランドは主に食品、ファッション、おもちゃ、建築材料など従来の製造業に集中していますが、中国は工事、不動産、金融の業界に分布しています。これは生産能力に優位性を持つ中国の製造業に警鐘を鳴らすものです。
日本企業とのブランド協力展開について、発展の余地は非常に大きいと思います。双方の協力の重点は経済危機における産業ブランドの被害と回復の早期警戒に関する研究の展開にあります。日本経済は「失われた10年」を経験し、中国経済もまさに「中所得国のわな」の課題に直面しています。匠の精神や100年企業文化を生み出した日本の経験などは中国が「中所得国のわな」に対峙する重要な手段や対策になります。この点において双方が交流を深める価値があり、中日企業はブランド経験交流活動、推薦ブランドの合同創設、ブランド体験留学の促進など協力プロジェクトを合同で打ち出すことができます。