古田肇 岐阜県知事:「観光交流」で江西省を積極アピール

2019-02-02 13:02:17

聞き手=于文 写真=呉文欽

『君の名は。』の舞台として、また、47都道府県の中で唯一中国と関わりがある名前を持つことで知られる岐阜県は、近年中国人の訪日観光客が延べ1000万人を超える一方、日本人の訪中観光客が低迷する現状を憂慮し、友好省である江西省の観光やグルメなどを積極的に紹介するなど、不均衡な人的交流の是正に努力を重ねている。新年第1弾の「この人に聞く」は、友好省から贈られた子どもの絵に目を細める親しみ深さが印象的な古田肇岐阜県知事から、中日関係と地方交流についての知見を得た。

 

古田肇岐阜県知事

――岐阜という県名の由来は、中国と深い関わりがあるということですが、その由来をお聞かせください。

 古田肇知事 日本の47都道府県の中で、中国とのご縁がある名前は岐阜県だけだと思います。もともと岐阜は井之口と呼ばれていましたが、戦国時代に織田信長が当時稲葉山城と呼ばれていた現在の岐阜城を戦い取った時に、天下統一をするのだという意気込みを示すために、地名を岐阜と変えたのが始まりです。その名付けの際に相談した方が中国への造詣が深く、周の文王が立ち上がり、800年の太平の基を築いた陝西省の岐山の「岐」と、孔子が生まれた山東省の曲阜の「阜」を取り「岐阜」と名付けたと言われています。孔子を「文」とすれば、天下統一して世の中を平定した文王を「武」、つまり文武両道を旨とし、世の中の中心となることを目標にしようと、織田信長が「天下布武」と呼ばれる号令を発しました。つまり岐阜という名前は、日本の中心であり、日本統一の拠点であり、しかも文化の中心でもあるということを示す、非常にありがたいものなのです。

 

――1988年の岐阜県と江西省の友好関係締結から30周年を迎え、昨年11月に知事は3回目の江西省訪問をされました。最も印象深かったことをお聞かせください。

 古田 私は政府の役人をしていた頃に、数えきれないほど訪中しました。知事になってからは、友好提携している江西省を3回訪問しています。前回は10年前の友好提携20周年の年で、節目には訪問をさせていただいています。

 江西省では南昌に毎回行っていますが、10年の間に建物や街並みが大きく変わり、非常に活気のあるダイナミックな大都会になったという印象を受けました。前々回は世界遺産の廬山などにも足を運びましたが、江西省は革命の重要拠点で、まさに「人民中国」の原点と言えるでしょう。その江西省と、織田信長が立った岐阜県という「出発点」同士のご縁で協力交流をするのは、非常に良いことですよねと、今回の訪問でもお話させていただきました。

 

――30年の交流で得た実績と成果についてお話しください。

 古田 主に人的交流です。子どもたちの交流や県民の交流を行うことで関係を深めてきました。岐阜県は「木の国山の国」とも呼ばれ、森林が豊富です。江西省も森林の国ですから、森林をテーマとした交流も行ってきました。30年をかけ、着々とそうした交流を進めてきたと自負しています。

 今回の訪中で特に話題になったのが観光交流でした。2010年から17年までの8年間で、中国から岐阜県を訪れる宿泊客がざっと4倍に増えています。しかも17年には16万人、昨年の1月から8月までですでに18万人と、今も増え続けています。そこで江西省の皆さんにもぜひ岐阜県の素晴らしさを体験していただこうと、旅行社の方々を試験的に招待し、新しいツアーを組んでいただく試みを行いました。中国はブログやSNSが盛んですから、微博(ウェイボー。中国版ツイッター)を活用したり、あるいは有名なブロガーの方々に来ていただくなど、ネットを通じて岐阜県の魅力を伝えるようにしています。昨年11月に新しいツアーが江西省で組まれたため、江西省からも次々と観光に来ていただいているところです。

 一方、江西省には世界遺産がいくつもあり、昔から避暑地としても有名です。そこで、「中国一美しい村」と言われる婺源県を岐阜県の人々に知ってもらい、岐阜県からも観光客を送り出すなど、今後の相互の観光交流についても特に積極的に議論しています。

 また、今回の江西省訪問では、岐阜県の魅力を展示する観光展を行いました。昨年9月には江西省から常務副省長率いる代表団も訪日し、岐阜県で江西省の観光展を行いました。このような交流を深めることについても覚書を交わし、具体策を議論しているところです。

 

江西省を訪問した古田知事(後列の右から2人目)は、江西省人民政府直属機関第二保育院を訪問して園児と交流した(写真・岐阜県庁提供)

 

――日本を訪れる中国人観光客は増加の一途ですが、反面日本人観光客の訪中はなかなか増えないようです。日本人が中国を訪れる意義はどういう点だと思われますか。

 古田 「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、実際に行っていろいろな人と交流を進めることで、本当の友好関係ができるのではないかと思っています。また、観光という言葉の「観」は「みる」という意味で、「光」は「ひかり」です。つまり、旅行先が持つ地域資源や素晴らしいものをじっくり観て、そこから何かを学ぶことこそが「観光」なのだと私は考えています。ですから、中国への観光も中国の素晴らしさを学び、そしてお互いに交流を深めていくということが、大変重要だと思っています。

 

――国家間の関係は地方交流に影響を及ぼすと思いますか。また、地方交流は国家間の交流促進・発展に何をもたらすと思われますか。

 古田 岐阜県は今まで両国関係の状況にかかわらず、江西省との間で一貫して地道に地域対地域の交流を進めてきたと思っています。両者の目指す交流は、「『確固たる信頼関係』に基づき、『持続的に一貫して』行われ、『深化発展』し続ける」という三つの原則で今までも行われてきましたし、今後もやっていきたいと申し上げました。

 昨年10月に安倍首相が日本の首相として7年ぶりの訪中を実現し、習近平主席との会談で、日中新時代を築くべく地方都市間の交流を強く訴えたのは、国家レベルでの交流を進めるためには、土台に強固な地域間交流があってこそという思いのアピールであったと私は思っています。会談した江西省党委員会の劉奇書記や易煉紅江西省省長のお言葉からも、日中間の交流促進の必要性を感じる強い気持ちが伝わってきました。そんなことから、私は地方間におけるハイレベルでの積極的な交流が今後必要であると痛感しました。私は、先ほど申し上げた三つの原則にのっとり、今後もより積極的な地方間交流を進めていきたいと思っています。

 

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