熏依社画廊

2017-11-15 14:28:17

アートに関わる人に聞く、上海のいま

  聞き手/写真=萩原晶子

 20176月に復興中路へ移転オープンした「熏依社画廊」は、2006年のオープン当時から一貫して「アジアの現代アート」に力を入れている。このギャラリーでの展示を機に世界へ羽ばたいた日本の若手アーティストも多い。独特の選球眼で上海のアートファンたちを魅了し続けているオーナー兼ギャラリストのShunさんに話を聞いた。

——今年から復興中路でリスタートを切りました。「熏依社画廊」のあるエリアはどんな場所ですか? 

Shun:復興中路は100メートルごとに歴史建造物が点在するストリートです。画廊が入っている「克勒門公寓旧址」は、1929年に建てられたイギリス風の建物。新中国になってからは、庶民向けに一部屋一家族を基準に一般住宅として分配されました。「熏依社画廊」はそのうちの3部屋を借りています。上海が「東洋のパリ」と呼ばれた租界時代にはお金持ちの資本家や外国人がゆったりと暮らし、その後はこの3部屋に3家族がぎっしり暮らしていた。さまざまな歴史が詰まった空間なんです。近年、街の景観をよくする公共プロジェクトの一環として外壁にペンキが塗られたりしているのですが、やり方が粗雑なのが残念ですね。古い建物のメンテナンスはもっと丁寧にしてほしい。周辺のゴミ片付けや庭のみどり、花壇の整備など、少しずつですが良い影響を与えられるよう頑張っているところです。 

——近々個展が始まると聞きました。

Shun:松枝悠希という日本の若手作家さんの個展を予定しています。東京芸大でデザインの博士号を取ったアーティストですが、個展は今回が初めてです。彼とは約10年前からいっしょに仕事をしているのですが、いまでは韓国、アメリカ、台湾など各地で活躍するアーティストに成長しています。現時点で再来年まで展示会の予定が入っているとのこと。私もうれしい限りです。今回の展示会のテーマは中国語で「土鶏蛋」なのですが、日本語に訳すのは少し難しいですね(笑)。オープニングは1111日(会期は1210日まで)。ぜひご期待ください。

——今後の「熏依社画廊」について教えてください。

Shun:日本を代表する作家さんと若手作家さんをバランスよく紹介していきたいです。来年度は、生前お世話になっていた南嶌宏氏の追悼展を予定しています。評論集の中国語版の出版と、氏が評論を書いたアーティストの作品を中心とした構成になるのでは。来年は日本年でもあるので、日本人アーティストを世界に発信していきたいですね。これまで10年間、「M50(莫干山路50号)」でギャラリーを運営してきました。移転後の現在は、スペース自体は少し小さくなりましたが、古き良き時代の上海文化が蓄積された場所。音大も近く、とても文化的なエリアで気に入っています。今後もアジアのコンテンポラリーアートを中心に、質のよい展示会を開催していきたいと思います。

 

熏依社画廊

上海市復興中路13633108

021-5496-1918

12:0020:00(月曜休館)

 

Shun

紹興市出身。ギャラリスト、画家。北京大学、東京大学、エスモードのパリ校などでマルチメディア、経済、ファッションを学び、2006年より上海でギャラリーを経営。

 

「熏依社画廊」のShunさんに聞く、いま上海で観られるお勧め展

Shun:「昊美術館」(祖沖之路2777弄)のジュリアン・ルーズフェルト展「マニフェスト」はすごかったです。スペースいっぱいに大型スクリーンを設置し、映像作品を同時に展示するという迫力満点の展示会でした。映画史、芸術史だけでなくサブカルチャーや演劇のファクターも盛り込んだ、ユーモアと風刺に富んだ作品たちに思わず引き込まれました。

会期:20171231日まで

 

 

 

 

 

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