聞き手=萩原晶子
南蘇州河の散歩ゾーンに佇む「八号橋芸術空間1908粮倉」
古い工場や造船場、廃飛行場の格納庫など、さまざまな建物をリノベーションした美術館やギャラリーが人気を得ている上海。そんななか、いま話題を集めているのがここ「八号橋芸術空間1908粮倉」だ。担当者に話を聞いてみた。
Q:「八号橋芸術空間1908粮倉」について教えてください。
竣工当時の壁面や屋根をそのまま生かしてリノベーションしている
——オープンは2017年5月です。建物はもともと中国通商銀行の第二倉庫として1908年に建てられたものです。その後、杜月笙の私邸兼倉庫としても使われていました。3階建てて建築面積は約2,000平米。その建物を、「倉、河、橋、磚(レンガ)、木」という5つの要素を採り入れてリノベーションしています。もともとこの蘇州河沿いのエリアは、船で運搬された物資用の倉庫が多く建てられた場所。周辺を散策していただければ、福新面粉厰など築100年以上の文化財建築がたくさん見つかると思います。
1930年代にここで生活していた杜月笙と妻
Q:主にどのような作品を展示していますか。
——国内外のアーティストによる作品展を開催しています。ジャンルは問いませんが、中国の書画や現代水墨画などの企画展が7割を占めていますね。今年は現代工筆画展、朱新昌の山海経画展、洪健によるラズロ・ヒューデック建築のスケッチ展などを開催しました。特に中国の伝統的な絵画展に力を入れていて、「八号橋」の名前を冠した水墨画の学術展や、学生、若い人を対象にした中国工筆画の青年画家作品展なども開催しています。
2フロアに約100点のミニチュア作品と写真作品を展示
Q:来館者はどんな方が多いですか。
——伝統文化に関心のある中高年層と、アートに興味がある若い人ですね。趣味として伝統文化やアートを楽しむ人が増えているので、私たちもそういった方々のライフスタイルに溶け込むような、興味を持ってもらえるような企画展作りをしています。それと、同じ建物内に人気ビアバー「啤酒阿姨」やヨガスタジオがあるので、セットでのんびり楽しむ方も多い。蘇州側沿いの風景を見ながら散歩ついでに、という方もいます。
Q:2018年10月7日まで、田中達也展「微型現場」を開催中ですね。
——中国でも「Ins(インスタグラム)」で大人気の日本人ミニチュア作家・田中達也氏の中国初個展です。展示数は約100点。どの作品もお客さんが自由に撮影して、SNSにもアップできるようにしています。もう、開幕前からものすごい反響でしたね。オープニングには地方から駆けつけてきたファンもたくさん参加していましたし、メディアの取材も殺到しました。ミニチュアアートという概念がとにかく中国では新鮮ですし、SNSと連動したアート展という仕掛けもユニークでした。
開催中の田中達也展は連日大盛況
田中氏の「Ins」写真みたいに、きれいに撮れるか挑戦中
Q:今後について教えてください。
——海外との文化交流の拠点としても成長していきたいと考えています。常に重視しているのは、さらにクリエイティブで、価値があって、影響力のある作品を展示すること。目標としては、ここ蘇州河エリアの中心的アートスポットとして、国内外のクリエイターやアートに関心のある人をより惹きつけられる場所になることです。国内はもちろん、海外でも注目される民営ギャラリーになれたらと考えています。
八号橋芸術空間1908粮倉
上海市南蘇州路1247号
021-6346-2958
9:30〜17:00
館内は撮影、拡散OK