映像制作で世界を回る

2017-11-01 13:54:55

写真=長舟真人 聞き手=萩原晶子



 

石谷崇史さん (48

沖縄県石垣島出身。インディペンデントでテレビ番組のディレクター、映像制作などの仕事を手掛ける

 

——上海に住み始めたきっかけと、お仕事について教えてください。

 普段は海外にいることが多いので、上海にいるのは月に2週間ほど。住んでいるというより拠点の一つという感じでしょうか。拠点になった理由は妻の上海転勤です。その前に、最初に上海を訪れたのは1998年でした。上海東方テレビ(当時)と共同で制作した音楽番組の仕事に関わったのがきっかけです。現在はインディペンデントで番組制作、自主制作映画、テレビ番組のディレクターなどの仕事をしています。あとは、上海にいるときは主夫として日々食事の用意や洗濯、掃除などをしています。得意料理はゴーヤチャンプルーです。


——普段はどんな番組や映画を制作しているのですか。

 最近では、昨年NHKで放送された音楽番組『ABUソングフェスティバル きゃりーぱみゅぱみゅ バリ島へ!』や、ミャンマーの伝統音楽をテーマにした自主制作映画『チョーミン楽団がいく!』などを手掛けました。ライフワークとして続けているのは、聖書の中に出てくる音楽をテーマにしたドキュメンタリーの撮影です。そのために毎年1回エルサレムに行き、ヘブライ語の勉強をしています。少しずつ制作して、死ぬまでに完成すればいいかな、と。昔から同じ流れで現在に続いているものというと、やはり音楽なのではないかと思っています。いい音楽を映像作品で残していきたいという思いはずっとあります。


——今年5月に横浜で上演され、8月に上海でも上演される舞台『3年前の君へ』のプロデュースも手掛けていると聞きました。

 俳優の小松拓也さんが脚本を手掛け、クラウドファンディングで資金集めをしながら試行錯誤しつつ作っている舞台です。僕はアソシエイトプロデューサーとクレジットされていますが、資金がなかなか足りないため、実際は宣伝映像を作ったり、字幕スーパーを出す係なども担当しています。横浜での公演は連日満席で、「感動しました」という声も多く、大成功でした。実際に中国で仕事をしていた小松さんの脚本はとにかくリアル。段文凝さんが演じる中国人女性とのラブストーリーなのですが、中国人の考え方や発言、行動など、どれも的を射ていると思いました。上海では8月19日、20日の2日間に万代南夢宮上海文化センターでの公演を予定しています。


——上海でお気に入りの場所を教えてください。

 宜山路の「維吾爾餐廳」です。ウイグル族が経営していて、麺はお代わり無料など昔ながらのサービスもそのままです。仕事が忙しいときなどにこの店に来ると落ち着きますね。98年に上海で偶然ウイグル料理を食べたときに「激ウマ!」と思ってからずっとウイグル料理が好きです。上海では「それしかない」と思うほどです。僕は、心はエルサレムにありますし、世界のほかの都市に住みたいとも思っています。でも、なぜかいつも上海に戻ることになってしまう。あ、ひょっとしてウイグル料理が自分をここに呼び寄せているのかも……?

(写真=長舟真人 聞き手=萩原晶子)

 

 

石谷さんオススメの上海——「維吾爾餐廳」

 

ホッとする料理と自由な雰囲気

 ここ数年、上海では西域料理と呼ばれるジャンルのレストランが人気だ。新疆ウイグル自治区よりも広い範囲の料理を指すようだが、手打ち麺や羊肉、クミンなどのスパイスを使った料理はウイグル料理に似ている。どれもショッピングモール内に大型店を構えるチェーンで、食事時は行列ができている店も多い。

 そんな中、数が減っているのが昔ながらのウイグル料理の路面店である。石谷さんオススメの「維吾爾餐廳」は、長年昔ながらのスタイルで経営している貴重な店だ。必ず頼むのは写真左側のウイグル式混ぜ麺だそう。羊肉の串焼き、羊肉の餃子も定番だ。店内には小さなステージがあり、毎晩ウイグルダンスや音楽のショーを上演している。お客さんも巻き込んでのダンスは特に盛り上がる。

 上海で初めてウイグル料理を食べ、その美味しさにハマってしまう日本人は多い。羊肉が苦手という人も、ウイグル料理なら大丈夫だという人もいる。気に入った店に通い、店員と片言のウイグル語を交わしているような在住日本人もよく見かける。味付けが日本人の口に合うのはもちろんだが、石谷さんは「ウイグル族の気楽で自由な雰囲気にホッとする」という。日本では体験できないウイグル料理店のあの雰囲気を、上海でぜひ味わってみてほしい。


上海市宜山路280

地下鉄349号線「宜山路」駅から徒歩5


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