ギターでみんなを元気に
写真=長舟真人 聞き手=萩原晶子
(最終回)
下田藤百史さん(23歳)
(プロフィール)
和歌山県出身。2017年7月より上海を拠点にギタリストとして活動中。
——上海に来られたばかりと聞きました。
はい。今年の7月から上海に拠点を移し、週末を中心に上海市内のレストランやイベント会場などでライブを開催しています。来る前は上海と聞いてもどんな場所なのか想像もできませんでしたし、正直いい印象もなかったのですが、「実際はどうなんだろう」と思い始めたのが最初のきっかけでした。
——住んでみてどうですか?
生活は少し不便ですが、ギターを演奏できる環境は日本より多いと思いました。外国人とその場でセッションできる場や、国籍を問わず音楽で交流できる機会もたくさんあります。それと、上海人は自分を表現することを恥ずかしがらないですよね。先日も現地の子どもたちが演奏中のステージ前で踊り出したのですが、それを見て大人もいっしょに踊ったり。自分が感じたように、やりたいようにやっているところが素敵だな、と。そういうことって、生きているなかで必要だと思うんです。
——ギターを始めたきっかけを教えてください。
姉の中国留学です。やりたいことを決めた姉を見て「自分も何か身につけなければ」と思ったとき、家に父のギターがあったんです。最初はエレキギターでロックを弾いていたのですが、いっしょに演奏できるメンバーが見つからず(笑)、音をすべて一人で表現できるフィンガーピッキングの奏法にたどりつきました。ソロなので身軽に移動できるのもこのスタイルの魅力だと思います。ですが、上海ではまだマイナーなジャンルだそうです。皆さん弾き語りだと思うようで、「何を歌うんですか?」と聞かれることも。でも、演奏後に「感動しました」と言われると、「歌がなくても音だけで伝わるんだ」とうれしくなりますね。
——今後やってみたいことはありますか?
今は、9月にアメリカのカンザス州で開催されるギター選手権に向けて練習中です。世界のレベルに挑戦してみたいですね。それと、これまではカバー曲を中心に弾いていたのですが、今後は一人のアーティストとしてオリジナル曲の制作にも力を入れていきたいです。作曲する上で常に考えているテーマはポジティブであること。聴いた人が笑顔になれるような、「強く生きていこう」と思えるような音楽を、上海でいろいろな刺激を受けながら作っていきたい。大きなテーマとしては、「命」や「人生」でしょうか。僕は12歳のときに母を亡くしているのですが、そのときの衝撃はずっと僕の音楽に影響を与えていると思います。
——上海市内にお気に入りの場所はありますか?
カフェ「KaiXinGuo」です。何回かライブを開催させてもらったお店なのですが、マスターのTakaさんに元気をもらえる場所でもありますね。「日本と中国の架け橋になる」と長年上海で頑張っている方です。目標の実現のためにまっすぐ進んでいるTakaさんの姿勢を見ると、自然に元気になれるんです。
下田さんオススメの上海——「KaiXinGuo」
音楽と中国茶のある憩いスペース
上海市内でもっとも有名な日本人経営のカフェといえば、ここ「KaiXinGuo」なのではないだろうか。場所は日本人学校浦東校の近く。日本人の子育て世代が多く住むエリアだ。豊富なフードメニューや日本人パティシエの手がける中国茶を使ったオリジナルデザートにはファンも多く、マンゴーや抹茶を使った手作りケーキの味にも定評がある。日本人の個人経営店ならではの味と空間を楽しむことができる店なのだ。
そんな「KaiXinGuo」のもう一つの魅力は、定期的に音楽ライブを開催していること。もちろん、下田さんも定期的にここでギターを弾いている。「子どももノリノリで楽しんでいる」と下田さん。バーやライブハウスに行くのはちょっとハードルが高いと感じる家族連れも、安心してのんびり音楽を楽しむことができるという。
旅行者的「KaiXinGuo」の楽しみ方といえば、やはり中国茶だろう。日本語OKのスタッフが入れ方や味わい方を解説してくれるので初心者でも安心。長期滞在者向けに茶芸師の資格を取れる講習会も開催されているという。お茶を飲みながら、ついでにお勧めの観光スポットや、上海生活のことを聞いてみるのもお勧めだ。
上海市浦東新区東綉路66弄東和公寓6号棟1階
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