習近平経済思想と中国経済の発展

2018-03-02 15:34:03

文=胡鞍鋼

 

 中国共産党第19回全国代表大会(党大会、19大)では習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想が確立され、新時代における14カ条の基本方針が打ち出された。そのうち、「一つの中心、五大発展」の理念は新時代の発展を統率する新理念であり、習近平が打ち出した創意ある中国の発展思想と発展真理である。「一つの中心、五大発展」は習近平経済思想の核心となるもので、「人民を中心とする」発展思想の堅持は、誰のために発展を求めるかという問題の解決だ。「五大発展理念」の堅持はいかに発展するかという問題の解決であり、中国の経済活動とマクロコントロールを指導する上での主軸である。この5年間、中国経済に起こった一連の大きな変化と重要な成果が十分に証明したように、習近平経済思想は新時代の中国の特色ある社会主義経済の法則を正しく反映したものだ。中国の特色ある社会主義経済建設は発展に向かって新たな道を切り開いた。

 第1に、経済発展におけるイノベーションの原動力がより強くなっている。「習近平経済思想」は、イノベーションによる発展が解決するのは質の高い発展に向けた根本的な原動力の問題であると提起する。昨年、中国は科学技術研究の分野で多くの成果を挙げ、量子コンピューター、高速鉄道「復興号」、世界初の量子暗号通信の柱となるネットワークから旅客機C919と水陸両用航空機AG600の初飛行の成功まで、さらにライフサイエンス、スペースサイエンス、モバイル決済など多数の分野における国際的なイノベーションで世界から注目された。中国のオリジナルイノベーション能力はさらに新たな段階に入り、世界の先端科学技術を十分に取り入れた上で、新しい道を直接切り開き、中国の特色ある「トンネルでの追い越し」というイノベーションの道を歩み、先発の優位性をつくり出し、世界のイノベーションの流れをリードしていく。イノベーションは経済成長においてますます重要なけん引役としての役割を果たしている。昨年の中国の研究開発への投資額は1兆7000億元に達し、研究開発費の割合は21%を超え、欧州連合(EU)の初期メンバー15カ国を上回り、技術取引額の国内総生産(GDP)に占める割合は2010年の095%から昨年の156%まで上昇し、技術取引額は1兆2500億元を超えた。これは科学技術のイノベーションへの投資から生まれた「本当の財産」であり、科学技術の進歩による寄与率は10年の509%から昨年の571%まで上昇し、科学技術による駆動が生産要素による駆動に取って代わる傾向がよりはっきりしている。

 第2に、経済成長の協調性がより顕著になっている。「習近平経済思想」は、バランスのとれた発展が解決を重視するのは質の高い発展における不均衡の問題であると提起する。一つは、経済構造がよりバランスのとれたものになることだ。昨年の消費による寄与率は約65%に達すると見込まれ、名実共に経済成長をけん引する「バラスト(底荷)」になった。19大報告は消費促進のための体制仕組みを充実させ、経済発展に対する消費の基礎的役割を強化することを提起した。今年のマクロ経済の安定、国民福祉の向上における消費需要の役割はさらに際立つようになる。もう一つは、地域発展の構造がより合理的になることだ。昨年3月、党中央、国務院は雄安新区設立を決定した。これは深圳経済特区、上海浦東新区に続く全国的意義を持つ新区であり、千年の大計、国家の大事である。中国は都市圏を主体とする、大小都市と集落が調和して発展する都市部構造を次第に形成し、地域調整の仕組みがより成熟し、生産要素の配置と流動がより効果的になる。

 第3に、経済成長の背景としての生態環境がより美しくなっている。「習近平経済思想」は、グリーン発展が解決を重視するのは質の高い発展における人と自然の調和という問題で、グリーン発展でなければ、生態系が破壊され、自然も人間も滅亡に向かうと提起する。昨年、中国の生態環境の状況は明らかに改善され、大気、水、土壌の汚染予防対応活動は明らかに効果を挙げ、単位GDP当たりのエネルギー消費量、単位GDP当たりの二酸化炭素排出量は年間の予定目標を繰り上げ達成し、主な汚染物4種類の排出量削減は年間の制約的指標を超過達成した。19大報告は「グリーン」を現代化強国の核心目標と初めて位置付け、今年の中央経済活動会議は汚染予防対応の難関攻略戦をしっかりと行うことをあらためて強調した。これは生態文明建設の推進についての党中央の断固とした決意と政策決定の力強さを示している。中国は経済成長のグリーンエネルギー時代を切り開いていく。

 第4に、経済成長の開放的な構造がより広大になっている。「習近平経済思想」は、開放は繁栄発展を実現するために通らなければならない道であり、開放型発展が解決するのは質の高い発展における内外連動の問題であると提起する。昨年、中国のGDPが世界全体に占める割合は前年の1481%から154%に上昇し、世界経済の成長に対する寄与率は37%に達した。世界貿易機関(WTO)の予測によると、17年の世界の貨物貿易量の成長率は36%に達し、16年の13%をはるかに超えるという。17年の中国の貨物輸出入貿易量は15%以上成長し、世界全体に占める割合は前年の1145%から1271%に上昇し、世界貿易の成長に対する寄与率は45%以上に達した。中国の世界に向けた貿易、投資融資、生産、サービスのネットワークが徐々に形成されている。

 第5に、経済成長の結果がより公平なものになっている。「習近平経済思想」は、公平な発展は社会主義制度の優位性の根本的な体現であり、共同富裕は小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的建設の最終目標であると提起する。昨年、全国民1人当たりの可処分所得は9%以上増加し、都市部と農村部住民の1人当たりの可処分所得はそれぞれ83%と87%増加し、年初に定めた所得増加と経済成長をほぼ同期させるという目標を超え、依然として全世界で国民所得の増加が最も速い国だった。昨年、営業税から増値税への移行を含め、中国が企業に対して行った減税費用整理は1兆1200万元(約1700億)近くになり、世界で人口の最も多い中間所得層をさらに確保拡大し、20年に小康社会を全面的に完成するための国民所得の倍増と貧困の完全撲滅という目標を期日通りに実現するために決定的な成果を挙げた。

 要するに、習近平経済思想とは中国経済がこの5年間に挙げた成果を支えた重要な支柱であり、新時代の中国の特色ある社会主義経済建設の成功した実践である。経済の新常態(ニューノーマル)に順応し、それを導く政策的枠組みが絶えず改革を深層に推し進めるに伴い、習近平経済思想は必ず新時代の社会主義経済理論の新しい一章を書き上げ、新時代の中国の特色ある社会主義経済建設が勝利から次の勝利へと進むように導くに違いない。

 

 

胡鞍鋼

清華大学国情研究院院長、清華大学公共管理学院教授、博士課程指導教授。1988年に中国科学院の工学博士の学位を取得し、91年から92年までエール大学経済学部で博士研究員として在籍。2004年にロシア科学アカデミー東洋学研究所から経済学博士の称号を得る。中国の国情研究に関連する著作が日本語を含めて多言語に翻訳出版されている。

 

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