胡鞍鋼=文
新時代の主要矛盾に重大な変化
国情の認識、特に中国社会の主要な矛盾についてきちんと把握することは、異なる時代の発展戦略を確定する理論的基礎となる。社会・経済の発展段階が矛盾の変化を決定し、中国共産党の中国社会の主要矛盾に対する認識もまた時代と共に進み、時代の発展と共に3回の重要な変化を遂げてきた。
1回目は毛沢東時代(1950年代半ば~1978年)である。極端な貧困の中で社会主義建設に入り、2010年の農村貧困基準によると、7億7000万人の貧困人口がおり、貧困発生率は97・5%という高さであった。このため、中国共産党第8回全国代表大会で初めて、現在の主要矛盾はもはや階級闘争ではなく、人民の経済・文化の迅速な発展に対する需要と、現在の経済・文化が人民の需要を満足させられない状況との間の矛盾であるとした。社会主義建設の道の探求過程でも、文化大革命期に発生した生産闘争に代えていわゆる階級闘争を用いるやり方など、いくつかの曲折があった。しかし全体からすると、毛沢東時代には生産力発展はかなり大きな成果を挙げ、比較的独立し、整った工業システムと国民経済システムが打ち立てられた。
2回目は改革開放時代(1979~2011年)である。党の第11期中央委員会第6回全体会議の決議で毛沢東時代の経験と教訓が総括され、現段階における中国社会の主要矛盾は人民の日増しに増える物質文化への需要と遅れた社会・生産との間の矛盾であると再度提起された。まさにこの社会矛盾の正確な認識に基づいて、中国経済の発展は加速し、この期間中の中国の国内総生産 (GDP)の年間平均成長率は9・9%にまで達し、世界中の経済成長の記録を打ち破り、所得上位中級クラスの国家の列へと躍り出たのだ。
3回目は中国の特色ある社会主義新時代(2012年~21世紀中葉)である。新時代に入ると、中国の社会生産力レベルが全体として顕著に向上し、遅れた社会・生産はもはや社会・経済発展の最重要な制約要素とはならなくなった。しかし工業化の進展が速まり、経済が飛躍的に発展すると、所得格差の拡大、経済構造のアンバランス、資源環境の悪化、需要と供給の不一致などの一連の問題の発生を避けることができなかった。このため、中国共産党第19回全国代表大会の活動報告では重要な判断がなされた。それは、中国の特色ある社会主義が新時代に入り、中国社会の主要矛盾はすでに人民の日増しに増える素晴らしい生活への需要と、不均衡・不十分な発展との間の矛盾へと変化しているということである。
矛盾の主要な側面が、遅れた社会・生産から不均衡・不十分な発展へと変化したが、それには二つの重要な内容が含まれている。一つは生産力発展が極めて高いレベルにまで達しておらず、発展の不十分さがやはり今まで通り矛盾の主要な側面であること。もう一つは、発展の不均衡が新たな矛盾となり、かつ発展の不十分に比べてより重要になっていることだ。
次にいくつかの具体的な例を挙げてみよう。イノベーションの不十分さから見ると、2016年の中国全社会の研究開発投資はGDP比2・11%で、2000年の0・89%と比べると比較的大きく伸びてはいるものの、米国(2015年は2・79%)との差はいまだに大きい。都市と農村の医療・衛生の不均衡から見ると、2016年の都市と農村の1000人当たりの医療・衛生ベッド数はそれぞれ8・41と3・91個で、この差はここ数年ずっと縮小する兆しは見られない。19種の主要疾病の中で、14種の疾病の農村人口比は都市人口の死亡率よりも高い。文化発展の不十分さから見ると、国家統計局のデータによれば、中国の文化産業の付加価値がGDPに占める割合は、2005年の2・3%から2015年には3・97%に上昇し、年平均増加速度は0・17%に達したが、それでも米国・日本・韓国などの先進国よりもはるかに低い。生態発展の不十分さから見ると、世界銀行のデータによれば、中国の二酸化炭素排出が国民総所得にもたらす損失の割合は3・1%で、米国の0・8%、世界平均の1・4%よりもかなり高い。エネルギー消費が国民総所得に占める割合は0・4%で、米国の0・05%よりもはるかに高い。
新たな矛盾を打ち破る
新時代に新たな矛盾が生まれ、新たな矛盾は新たな思想を呼び起こす。中国社会の主要矛盾はすでに、人民の日増しに増える素晴らしい生活への需要と不均衡・不十分な発展との間の矛盾に変化している。このため、習近平氏を核心とする党中央は、新時代の中国の特色ある社会主義思想を明確に提起して、深く説明し、人民を中心とすることを堅持し、供給側構造改革を業務の主軸とし、発展の不均衡・不十分による各種の問題を取り除くために理論的指導と基本方策を提供している。
習近平総書記は、2015年の中央財政経済指導グループ会議で初めて、「供給側構造改革」を提起した。供給側構造改革には、構造の最適化と供給の増加という二つの側面が含まれ、新時代の不均衡・不十分という問題の解決に優れた処方箋を提供するものだ。具体的に言えば、供給側構造改革を主軸とする新思想には以下の三つの内容が含まれる。
一つ目は、構造変革により発展の不均衡を解決するもので、これは今までの経済発展の不均衡を超越し、人民の素晴らしい生活の各方面に影響を与える文化・社会・生態なども含まれている。無効な供給を減らし、有効な供給を拡大し、供給システムの質を向上させることを主な方向性とし、供給構造の需要構造に対する適応性を高めるものである。
二つ目は、原動力変革により発展の不十分さを解決するもので、発展の原動力を労働・資本・資源・環境などの要素による駆動から、イノベーション駆動に転換する必要があり、量の追求から質の追求へ、速度の追求から効率の追求へと転換させることだ。
三つ目は、供給側構造改革は人民を中心とすることを出発点・終着点とし、終始「人民の素晴らしい生活に対する憧れ」を中心として、一方では人の全面的発展を促進し、個人の発展の不均衡・不十分を解決し、またもう一方では社会の全面的進歩を促進し、社会発展の不均衡・不十分を解決する必要がある。両者は互いに補い合い、互いに促進するもので、根本から発展の不均衡・不十分という問題を解決する。
15年より供給側構造改革が推進されて以来、まずは顕著な成果を挙げている。具体的な例をいくつか挙げてみよう。一つは投資構造の絶え間ない最適化で、ハイテク産業の固定資産投資の増加速度は明らかに製造業よりも高く、例えば17年の製造業の固定資産投資の増加率は4・8%であったが、コンピューター・通信とその他電子設備製造業の増加率は25・3%にまで達している。次に、過剰生産能力削減の効果が顕著であることで、17年の政府活動報告で、石炭業界で1億5000万㌧以上、鉄鋼業界で5000万㌧前後、石炭発電業界で5000万㌔㍗という年間目標任務が確定され、すでにどれも目標をクリアしている。最後に、新エネルギー、新業態が絶えず形成されており、17年の情報発信、ソフトウェア、情報技術サービス業の成長は26%で、従来型サービス業をはるかに上回っている。
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