胡鞍鋼 王洪川=文
中国共産党第18回全国代表大会(党大会、18大)以降、中国の世界における地位と役割に根本的な変化が生まれ、興国(豊かになる)段階と強国(強くなる)段階が交わる歴史的方位に位置するようになった。第19回党大会の報告で初めて「社会主義現代化強国」が総目標とされ、中国は今まさに「二つの百周年」の奮闘目標の合流点にあって、これは中国が豊かになるという興国の目標の実現だけでなく、さらには強くなるという強国の新時代の幕開けをも意味する。
習近平主席は、中国は強国にならなければならず、各方面どこでも強くならなければならないと指摘した。中でも多くの目標に、それに対応するための特定計画あるいは中・長期計画があり、かつ強国目標の実現に向けた明確なタイムテーブルがあって、経済・製造業・科学技術・人的資源がさまざまな側面から中国の強国時代を開く基盤を反映し、強国を支える基礎となっている。中国は予見し得る今後数年で、すでに提起されているいくつかの基礎的な強国目標を確実に実現し、着実に強国の基盤を固めていくだろう。
1番目に、世界経済強国の隊列に加わること。21世紀に入った最初の15年(2000~15年)、中国経済は高速成長を維持し続け、国内総生産(GDP)の年間平均成長率は9・6%に達し、世界のGDP(PPP、11年米ドル換算)の総量に対する割合は7・43%から17・26%に上昇し、9・83ポイント上がった。15年から20年まで、中国の経済成長率目標は6・5%以上を保ち、GDP総量は96兆元(15年の元換算)に達し、購買力平価 (PPP、11年米ドル換算)で中国のGDPは25兆9200億㌦に達する見込みで、世界における割合は15年の17・3%から20・24%に上昇するだろう。これは中国が再び前倒しで経済目標を実現し、今まさに加速して現代の経済強国となることを意味している。
2番目に、世界製造業強国の隊列に加わること。製造業は国民経済の主体であり、世界強国になるために通らなければならない道である。21世紀に入って、中国では従来の工業化から新型工業化への転換が加速し、世界最大の工業国・製造業国・製品輸出国・ハイテク製品輸出国・ハイテク産業付加価値国となり、第16回党大会(02年)で提出された2020年基本工業化の核心的目標と主要指標を前倒しで実現した。中国ではすでにポスト工業化時代の基本的特徴も現れていて、工業付加価値がGDPに占める割合、工業の就業人口が全体に占める割合もピークに達し、さらに進んで下降傾向を見せている。「中国製造2025」行動綱領によれば、中国の製造業と情報化、インターネット化、デジタル化の深い融合を推進し、質の高い成長、ミドル・ハイエンドの成長、国内外製造を主とする成長へと転換して、20年までに中国は基本的に工業化を実現し、製造業大国の地位をさらに固めて、25年までに世界製造強国の隊列に加わる。
3番目に、世界のイノベーション型国家の隊列に加わること。イノベーション能力は国力を強める第一の原動力であり、第18回党大会では、科学技術イノベーションは社会生産力と総合国力を向上させる戦略的支えであり、必ず国家発展の全局における核心的地位に置かなければならないとされている。「国家イノベーション駆動型発展戦略要綱」によれば、20年までに中国は世界のイノベーション型国家の隊列に加わり、その時には中国の研究開発に従事する人々のフルタイム当量(FTE)が550万人に達する見込みである。中国の国際科学論文の被引用数は02~12年では世界第6位であったが、07~17年には第2位にまで上昇した。中国は名実共に世界のイノベーション型国家となって、50年に世界科学技術イノベーション強国をつくりあげるための基礎を固めた。
4番目に、世界の人的資源強国と人材強国の隊列に加わること。20年までに、中国の生産年齢人口の通算教育年数平均は10・8年に達し、中でも大学以上の教育人口は15年の3億8000万人から20年には4億人を突破する見込みで、人的資源強国の隊列に加わるだろう。人材という角度から見ると、20年までに、中国の人材資源総数は1億8000万人を超え、高度技術人材が技能労動者に占める割合は3分の1に達し、市場主体での登記数は1億戸に達し、中国の高等教育人口(大学・単科大学以上の人口)は15年の1億7000万人から20年には2億人を超えると見られる。その時には名実共に世界の人材強国となるだろう。
5番目に、企業強国の隊列に加わること。十数年前、世界トップ500社にランクインする中国の国有企業は十数社であったが、中国経済、特に中央企業(国有企業の中で中央政府の管理監督を受ける企業)が迅速に強大化すると、世界トップ500社における「中国勢力」が形作られた。16年、中国大陸部で世界トップ500社にランクインした企業は103社に達し、2000年度に比べ、94社増加した。営業収入から見ると、16年の中国の非金融企業が世界トップ500社に占める割合は22・9%に達し、企業の利益獲得能力から見ると、15年の中国大陸部の世界トップ500社は、世界トップ500社全体の利潤総額の19・9%を占めている。中国企業は熾烈な国際競争の中で常に差を縮小しつつあり、企業の強さは国家が強くなるための基礎になっている。
このほか、積極的に社会主義文化強国を建設する。第18回党大会の報告では、社会主義文化強国建設の基礎をよりしっかりとしたものにすることが提起されている。ここ数年、中国のラジオ・テレビ利用者数は3億3000万戸を上回った。テレビドラマ放映数、テレビ番組制作時間、録音製品、録画製品、書籍総印刷部数、雑誌総印刷部数、新聞総印刷部数、電子出版物などのような主だった文化製品とサービス、そして消費人口は世界トップであり、文化強国は国家の富強に向けたソフトパワーの基礎を固めた。
要するに、強国の基盤はその他のいくつかの強国目標を実現するために、しっかりとした基礎を打ち立て、社会主義現代化の世界的強国を全面的に建設するために基本的な保障を固めた。振り返ってみれば、中国は確かに「建国」という立ち上がる段階、「興国」という豊かになる段階、「強国」という強くなる段階を経てきたが、この「豊かになる」こととは共同の豊かさであり、この強さとは共同の強さであり、共同の豊かさがあってはじめて共同の強さがあるのだ。これがまさに社会主義制度の政治的強みであり、社会主義市場経済の経済的強みであるのだ。
(本稿は胡鞍鋼教授と清華大学国情研究院助手研究員・公共管理学院ポスドクの王洪川氏の共同執筆による)
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