最も権威のある『全唐詩』の全注釈書が登場

2023-07-12 12:18:00


中国社会科学院文学研究所研究員で名誉学部委員の陳鉄民氏と北京語言大学教授の彭慶生氏が共同監修した『新修増訂注釈全唐詩』が、今年2月に出版された。1800万字余り、全5巻の堂々たる同書は、180人以上の中国の唐詩研究者が心血を注ぎ、唐詩研究の最新成果を取り入れたもので、中国の唐詩の整理・注釈の新たな進展を体現しているだけでなく、中国の唐詩研究分野における最高の学術レベルも代表している。 

唐代詩歌の集大成である『全唐詩』は、清の康熙44~45(1705~06)年、康熙帝の命を受けた彭定求ら10人によって編さんされた。唐・五代の詩人2200人余りの約4万8900首の詩を収録しており、これまで編さんされた古典詩歌集の中で、内容が最も多く、影響力が最も大きく、唐代の歴史、文化、文学を研究する上で極めて重要な参考資料である。 

しかし、内容があまりにも膨大なため、全注釈書が出版されたことはなかった。1992年、『全唐詩』の注釈作業が始まった。有名な唐詩研究者で北京大学中国言語文学科教授の陳貽焮氏が編集長となり、全国の唐詩研究者180人余りが共同で編集作業を行い、10年近くを費やし、2001年に全5巻の『増訂注釈全唐詩』(文化芸術出版社、2001年5月出版)を完成させた。全体で計1500万字、そのうち注釈が1000万字近くあった。出版されると、学界から広く注目され、好評を博した。 

当時、中国でシンポジウムに参加した日本の漢文学者で専修大学文学部教授の松原朗氏は、同書の常務副編集長の陳鉄民氏に、「『増訂注釈全唐詩』のような大著の注釈は、非常にシンプルなのではないかと思ったが、実際に見てみると、あるべきものが全てそろっていて非常にうれしく感じた。一気に2セット買って、1セットを研究室に、もう1セットを自宅に置いている」と話した。彼は後に陳氏への手紙の中で次のように書いた。「母校の早稲田大学に講義に行った際、松浦友久先生(中国古典文学研究者)の研究室にも『増訂注釈全唐詩』があるのを見た。松浦先生は、『この注釈書によって陳貽焮先生の名は永遠に残るだろう』とおっしゃっていた」 

『増訂注釈全唐詩』が出版された後、編集者らの自己チェックと読者からのフィードバックにより、いくつかの改善すべき部分が発見された。さらに、唐代の文学・歴史や『全唐詩』に関する近年の研究で、多くの新しい成果が現れたため、同書の編集委員会と出版社の黄山書社は改訂・再版を行うことを決定した。改訂・増補作業は12年に開始され、陳鉄民氏と彭慶生氏が編集長を務めた。最終的に完成した『新修増訂注釈全唐詩』は、唐詩研究の最新成果を取り入れ、詩人の生涯事跡を記載する「作者小伝」と注釈に新たに補充と訂正を行い、1万以上の新しい注釈が加えられ、もとの書籍より300万字多い1800万字となり、現時点で最も権威のある『全唐詩』の全注釈書と呼ばれている。 

中国唐代文学学会会長で西北大学中国文化研究センター主任の李浩氏は、「『新修増訂注釈全唐詩』は、中国の現在の唐詩の整理・総括に関する三大プロジェクトの一つであり、唐代の文学・歴史の研究者にとって不可欠な辞書でもあり、時代ごとの文学全集に対する注釈作業の最先端に立っている」と評価した。 

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