宮崎洋一 医療市場で新たなチャンス

2021-02-18 16:08:34

王衆一=聞き手

 

宮崎洋一(みやざき よういち)

東芝中国総代表兼東芝(中国)有限公司董事長・総裁

国際基督教大学卒業後、東芝に入社。長年、半導体および電子分野の業務を担当。米国、韓国などで駐在後、2019年3月より東芝中国総代表に就任。

 

昨年11月の第3回中国国際輸入博覧会(輸入博)で、東芝が展示した重粒子線がん治療システムが多くの中国人来場者を引き付けた。

過去30~40年間、東芝は家電企業として中国で広く知られてきた。近年、東芝のエレベーターや原子力発電設備も徐々に中国メディアに取り上げられているが、同社のがん治療システムは一般の消費者にはあまり知られていない。中国の国家政策において医療が重視されるにつれて、昨年以降、多額の資金が医療システムに投入されている。中国で今後、最も市場の見込まれる業界の中で、医療はその重要な構成部分となるはずだ。

社会インフラの重要な提供企業である東芝に、近年どのような変化が起こったのだろうか? 東芝中国総代表兼東芝(中国)有限公司董事長・総裁の宮崎洋一氏に話を聞いた。

 

――新型コロナウイルスは中日両国でも再び感染が拡大しています。東芝では感染対策期間中、どのような行動や変化がありましたか?

 

宮崎洋一 100年前、欧州で発生したインフルエンザにより、世界各国で非常に多くの人々が亡くなったことを私たちは知っています。昨年、新型コロナが発生してから、私たちはすぐに在宅ワークを毎週1日行う方法を採用しました。それから間もなく、中国が感染症をコントロールし、感染症と闘う能力を持ち、効果があることを目にしました。現在、日本の会社では基本的に20%の社員が出勤し、他の社員は在宅ワークです。中国の状況はもっと良くて、出勤している割合は日本より高くなっています。

感染拡大後、変化が比較的大きかったのは在宅ワークのニーズで、5G(第5世代移動通信システム)通信のニーズもかなり高まりました。幸い、東芝は10年前にすでに関連の変革体制の構築を始めており、現在、新型コロナ下におけるさまざまなニーズに対応できています。今年、ワクチンの接種などが進むにつれて、医療分野での努力によって、私たちは新型コロナに打ち勝つことができるでしょう。

 

――昨年の輸入博の会場で、東芝はエネルギーと医療の分野の展示に力を入れていましたね。実は中国の消費者にとってなじみがあるのは東芝の家電です。東芝の原子力発電設備について知っているのは一部の専門家のみです。

 

宮崎 東芝は昨年の輸入博で、重粒子線がん治療システムを展示しました。

東芝は原子力発電技術を持っており、これをがん治療に応用するため、多くの研究開発を行っています。がん治療への応用は、東芝だけが行っているわけではなく、日本や世界のいくつかの企業もこのような研究開発を行っています。

輸入博で展示した東芝のがん治療システムは、大型の治療設備です。東芝のこの設備を大型機関銃に例えるなら、他の一部企業の設備は拳銃か小銃のようだと言った人もいました。それぞれの治療設備にはそれぞれの用途があります。東芝の技術には、通院の回数を少なくし、がんの治療を終わらせることができるという特長があります。

今年、東芝は山形県に納入された重粒子線がん治療システムが治療開始する予定です。日本以外では、韓国のソウルなど2カ所でも建設を開始します。輸入博の反応から見て、中国は東芝のがん治療システムに強い興味を持っているようです。東芝も中国のがん患者の方々に治療システムを提供したいと願っています。

 

――日本メディアの報道によると、東芝は血液検査でがんを発見できるそうですね。

 

宮崎 この技術については、19年に日本メディアで発表を始めました。東芝は血液1滴から13種類のがんを発見できる検査キットを開発しました。がんにかかっているかどうかを2時間以内に99%の精度で判定することができます。20年にがん患者を対象に実証試験を始め、21~22年に人間ドックの血液検査などで実用化することを目指しています。検査費用は2万円以下と、かなり安く抑えられます。

特にがんは早期発見ができれば、より良い治療を行うことができます。がんを発見し、東芝のシステムを使って治療できること、これが東芝の近年の比較的大きな変化の一つです。

 

昨年の輸入博にて、メディアに向けて製品を紹介する宮崎洋一董事長(写真提供・東芝(中国)有限公司)

 

――中国市場のもう一つの大きなニーズは、現在も依然としてエネルギーです。

 

宮崎 東芝はこのほど、エネルギー分野の新たな計画を発表しました。再生エネルギー関連事業の売上高を30年度に19年度の約3・4倍に当たる6500億円とする目標です。

世界の大部分の国や企業はカーボンニュートラルの目標の実現に向けて努力しており、水素エネルギーや二酸化炭素の回収などの技術が新たな発展のチャンスを迎えています。東芝は原子力発電所の建設、原子力発電ソリューションプランのほか、水力発電――電気の使用量が比較的少ない時間帯に下池から上池に水をくみ上げ、電気の使用量が多い時間帯に上池から下池に水を落とすことによって発電する揚水式発電システムも建設しています。近年、中国にある東芝の水力発電機器製造工場の業務は、一貫して比較的高いレベルにあります。

水素エネルギーについて、メタノールを燃料として発電する技術は、すでに中国の多くの地域で実際に使用され始めています。特に都市から比較的離れた地方において、メタノール発電の市場はこれからも大きな拡大の余地があります。

医療とエネルギーは今後も一貫して中国における東芝の業務開拓の重要な内容となるでしょう。

 

編集長のつぶやき

 11年に東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生した後、日本の原子力発電技術の企業に大きな転換が起こった。東芝は社会インフラや半導体分野を得意とするほか、医療分野の研究開発や市場開拓にも力を入れ、安定した経営の基盤を打ち立てた。 

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