賈宇輝 百万基の実績踏まえ展望
王衆一=聞き手
賈宇輝
日立電梯(中国)有限公司総裁。ハルビン工業大学博士卒業後、2000年に日立電梯(中国)有限公司に入社し、01年に日立ビル技術(広州)有限公司の総経理を務め、13年に日立電梯(中国)有限公司技術開発総部の総経理となる。17年に日立電梯(中国)有限公司の副総裁を務め、19年に日立電梯(中国)有限公司の総裁に就任。
北京の麗澤SOHOビルでも、広州の周大福金融センターでも、長沙国際金融中心でも、乗客を行きたい階に送るため、高層ビルで使われている便利で快適なエレベーターは全て日立のものだ。日立電梯(中国)有限公司は成立から20年余りを経て、中国市場に100万基の製品を提供しており、この市場における高層ビルのエレベーター需要を大いに満足させてきた。
中国の不動産市場が成熟に向かうにつれ、エレベーターも新しい製品の急成長から、市場を細分化し深く開拓していく方向へと変化している。日立電梯ではどのような変化が起きているのか。同社の賈宇輝総裁に話を聞いた。
――エレベーター100万基とは小さな数字ではありませんが、日立電梯はどのようにして中国でそれを実現したのでしょうか?
賈宇輝 1999年の出荷基数は1万基で、昨年は11万5000基を販売して、12万基を出荷して、私たちは絶えず自己突破を実現しています。生産能力については、五つのエレベーター工場と二つの部品工場を配置し、合理的な配置の全体資源とIoT化によって年産12万基を超える生産能力を達成しました。全国をカバーするサービスマーケティングネットワークチームを構築し、90以上の支店機構と1400以上のサービス拠点を展開することによって、市場のニーズに迅速に応えられるようになっています。そして「サービス主導」というマーケティングモデルと戦略提携モデルで、市場シェアの著しい発展を実現しました。
――エレベーター市場の中で、中国と日本などの違いは何ですか?
賈 欧米や日本などの発展が早い国では、エレベーターの保有量は安定してきています。新しいエレベーター市場の発展は比較的緩やかで、業界の主な収入はエレベーターのメンテナンスなどのサービス事業から来ています。対照的に、中国エレベーター市場はまだ新しい市場で、エレベーターの保有量の持続的な増加につれて、アフターサービス市場の将来の見通しが広がっています。
市場需要から見れば、中国の都市化、軌道交通の整備、公共施設の建設、社会の高齢化、消費のアップグレードなどの要素は、全てエレベーター業界の発展を促し続けるもので、特にポストコロナの時代には、新しい発展チャンスを迎えることでしょう。
中国の都市化の進展と共に高層ビルの数もますます増え、高速で大容量のエレベーターに対する中国市場の需要も急速に増加しています。例えば、2019年9月、当社が広州一の高層ビルである広州周大福金融センターに設置した分速1260㍍に達するエレベーターは、ギネス世界記録に認定され、世界で最も速いエレベーターとなりました。
中国市場および世界市場の多様化する需要にさらにしっかりと応えるため、昨年1月に、当社は広州に世界で最も高いエレベーター試験塔であるH1 TOWERを完成させました。これによって、日立の超高速エレベーター、ダブルデッキエレベーター、大容量エレベーター、スマート運行管理システムなどの研究開発・試験はより行いやすくなりました。
――新しいエレベーター市場のほかに、古い建物の後付けエレベーターが新しいブームとなっています。貴社はこの方面に、どのような特色がありますか?
賈 早くも2005年に、当社は後付けエレベーターの設置という民生プロジェクトに積極的に参加し、それを推進し始めました。古い建物に後付けでエレベーターを設置するというプロジェクトの特徴に合わせ、当社は専門の工事サービス会社を設立し、「ワンストップ式エレベーター設置サービス」を提供しています。同時に、従来の工事プロジェクトの施工期間が長く、施工の影響が大きかったという問題に対し、後付け専用の積木式昇降路エレベーター「LGE‐E」を開発し、出荷前にエレベーターをユニット化するようにしたため、施工期間も今までよりも70%近く短縮し、設置の際の住民生活に対する影響を最大限に低減させています。
そのほか、不動産管理会社が導入されていない古い住宅地で生じたエレベーター管理問題に対し、当社はエレベーターの委託管理サービスも行っています。当社のELECLOUD®というクラウドサービスセンターおよびビッグデータ・メンテナンスプラットフォームによって、24時間体制でエレベーターの運転状況をリモートで監視し、エレベーターにカスタマイズ化したサービスソリューションを提供し、エレベーターの安全運転を保証するものです。
――最近の中国社会は質の高い生活を強調しており、さらには生産と製品の低炭素化をとても重視しています。これらの点で、日立電梯はどう対応していますか?
賈 日立グループの「脱炭素社会」「高度循環社会」「自然共生社会」という目標に合わせ、当社は環境価値の創造における企業活動を絶えず加速させ、製品ライフサイクルのどの部分においても、エコと環境保護を推進しています。省エネ・環境に優しい製品や環境価値創造型ソリューションにより、建築におけるエネルギー消耗の低減、エネルギー再生、情報モニタリングの可視化などの需要の実現を積極的に推進しています。
現在、当社は中国の五つのエレベーター製造工場全てにおいて中国の国家グリーン工場認定を獲得しており、工業・情報化部の「グリーンサプライチェーンモデル企業」認定も受けています。日立グループの2030年カーボンニュートラル目標に基づき、当社は現在、全バリューチェーンの省エネと排出削減推進を実施し、経済的利益・社会的利益・生態学的利益の持続的な協調・最適化を促進しています。
「モビリティ」は日立がこれから重点的に発展させていく事業分野の一つで、日立は人々が高層ビル間の移動の際に遭遇するだろう課題に注目し、スマート化ソリューションと製品により、効率的で快適な空間移動を実現させようと努力しています。未来の価値創造はより良い顧客体験にあると私たちは信じており、当社は今まさにデータに駆動され、人工知能(AI)によるデータインサイトにけん引された開放型イノベーションを急速に推進しており、人・建物・社会に新たな価値を提供し、エレベーターがより人に優しく、より良いサービスを提供するように取り組んでいきます。
2019年廊坊国際エレベーター展で日立電梯は河北省廊坊市の開発区にある小学校に6000冊の図書を寄贈し、エレベーターの正しい乗り方を普及した(写真提供・日立電梯<中国>有限公司)
編集長のつぶやき
中国市場に100万基ものエレベーターを提供した上で、日立電梯はエレベーターを高層ビルサービスの一環とし、業務範囲を拡大して、新たな発展方向を探り当てている。