福島継勇 通信・自動車・医療に重点供給

2021-10-20 14:55:13

王衆一=聞き手

 

福島継勇(ふくしま けいゆう)

京セラ(中国)商貿有限公司董事総経理

明治大学卒業後、京セラ株式会社に入社。主に半導体パッケージや電子部品の営業畑を歩む。1993~99年、京セラ初の中国駐在員として生産拠点の設立などに携わる。2020年1月より現職。

 

京セラの創業者・稲盛和夫氏(89)は、中国財界のほとんどの人に知られている。20世紀には多くの日本人企業家が中国の企業に影響を及ぼした。だが今世紀に入ると、日本の企業家に関する書籍を、街中、特に空港や大型書店などで見掛けるのは、稲盛氏ぐらいになってしまった。

セラミック包丁と言えば、中国の消費者は京セラを思い浮かべる人が多いだろう。だが、実際の京セラはどのような企業なのか、それを良く知る人は多くない。今回は、京セラ(中国)の福島継勇・董事総経理にインタビューし、特に通信や自動車、医療分野などにおける最新状況を聞いた。

 

――京セラ製品の多くは5G(第5世代移動通信システム)などの分野で使われていますが、具体的にどこに使われているのでしょうか。

 

福島継勇 京セラは、スマートフォンやウェアラブルなどの通信端末や周辺機器、基地局、サーバーなどの情報通信インフラに欠かせない、小型・高性能・高信頼性の各種デバイスやソリューションを提供しています。例えば、5Gや高速光通信のネットワークに使われるセラミックパッケージ、高周波コネクタ部品などを展開しています。

今年は中国の5G技術が正式に商用化されて2年目となります。5G基地局の設置と整備が進むと同時に、スマートフォンなどの通信端末においても5G対応機種が数多く発売されブームとなりました。さらに各業界のBtoB (企業間取引)業務においても5G技術を応用した展開が始まっています。

京セラは、これら5G通信産業の発展に欠かせない部品やデバイスをワンストップで提供し、今後も多彩で活力があり、環境に優しいICT(情報通信技術)を用いた生態系の実現に寄与する、部品・デバイス・ソリューションの総合供給メーカーを目指します。

 

――通信の分野以外に、中国の自動車産業も巨大な変化が起きています。

 

福島 ここ数年来、自動車産業にはかつてない変革が起こりつつあり、CASEの概念(コネクティッド・自動化・シェアリング・電動化)が提唱され、急速に普及しています。同時に、IT企業などの異業種による自動車の製造分野への進出が市場競争の構造を変え、「ソフトウェア・デファインド・ビークル」(SDV、産業生態系の再生)などといった新しい話題が注目を集めています。

京セラは自動車産業のサプライチェーンの中では川上に位置し、自動車の電装や情報通信事業に携わる第2~4階層の供給企業向けに部品・サービスを提供しています。代表的な製品として、インストルメントパネル(計器盤)やバックミラー、フロントガラスに運転者向けの情報を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)」などのディスプレイ製品があります。京セラはさらに1、2年以内に次世代の3D-HUD製品の市場投入を目指し、研究開発に取り組んでいます。

また、寒冷地での電気自動車の走行距離向上に必要なセラミックヒーター、レーザレーダーの小型化を実現する、高性能セラミックパッケージ、フィルターなどでも市場をサポートしています。京セラは、自社製品の小型化・高性能性・高安定性を活用し、自動車産業におけるCASEの実現に貢献していきます。

 

――昨年以降、新型コロナ感染症の発生により、中国は医療業界、特に医療機器への投資を拡大させました。

 

福島 京セラは人類の健康な生活への貢献を目指し、ファインセラミック技術などの可能性を絶えず追求し、医療用の材料と製品の研究開発を進め、医療・ヘルスケア分野に多くの製品を提供しています。代表的な製品として、すでに医療分野で広く使用されている人工関節や化学製品、非接触式温度計、呼吸器、血液計などの設備に使用するコネクタ、X線・免疫生化学分析計に使用されているメタライズセラミック製品があります。また、医療機器用ディスプレイや手術・血液分析計などに使われる各種光学レンズなどが挙げられます。

さらに現在、身体装着型機器の血流センサーや、患者情報の識別や医療材料の追跡に利用されるRFID(非接触型)電子タグ、血液検査のための細胞分離および濃度計測装置などの開発も進めています。京セラは、医療分野で技術革新を続け、品質の高い新製品・新技術を生み出し、人々の安心・安全な生活に寄与するため、中国の医療・ヘルスケア市場を継続的にサポートしていきます。

 

河南省で今夏起きた豪雨災害に対し、京セラは天津経済技術開発区慈善基金会を通して被災地に見舞金として20万元を寄付した(代表して感謝状を受け取る福島氏)(写真提供・京セラ<中国>商貿有限公司)

 

――改めて、中国市場に対して、御社はどのような貢献を果たしていくお考えでしょうか。

 

福島 それは、5Gインフラ、データセンターおよびサーバー、半導体製造装置用部品、医療・ヘルスケア関連の製品・サービス(医療機器、医療ロボットなど)などになります。今後も中国のこうした市場をどんどん開拓していきたいと考えています。

 

総編集長のつぶやき

稲盛氏には何度かインタビューし、企業経営などについて話を聞いた。しかし、京セラの実際の部署を取材したのは初めてだった。通信・医療などの先端分野で、京セラが部品サプライヤーとして欠かせない役割を果たしていることが分かった。

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