日米の新展開から考える日中の今後

2024-04-30 10:03:00

経済安全保障も対抗を意識 

今回の日米首脳会談、米日比3国首脳会談で、軍事面での連携とともに重要なテーマとなったのは経済安全保障でした。岸田首相を後から追ってワシントンに向かった齋藤健経済産業大臣は、岸田首相がバイデン大統領と会談するのと並行して、米国のジョン・ポデスタ大統領上級補佐官はじめ日米の通商・産業経済、環境、国家安全保障担当者らの会談に臨みました。 

ポデスタ上級補佐官は、バイデン政権で気候変動問題を担当してきたジョン・ケリー大統領特使の後任として気候変動の国際交渉を担うとともに、気候変動関連法である「インフレ抑制法(IRA)」の実施を監督する立場にある人物です。2014年、当時のオバマ大統領と中国の習近平国家主席が気候変動に関して初めて米中合意に至った際、ケリー氏らと共に中心的な役割を果たしたのがポデスタ氏でした。 

米国が米中対立を先鋭化させる中にあっても、数少ない米中連携のフィールドとなる可能性を持つ気候変動問題においてさえ、今回の日米同盟の「深化」においては、中国への対抗・けん制ということが強く意識されていることが垣間見えます。また、米日比3国首脳会談の場で齋藤経産相は岸田氏の左隣の席に着いていました。3カ国の連携においても「経済安保」が重要なテーマの一つになっていたことを物語るものでした。 

重ねてですが、何よりも重大なことは、これらの全てを貫くのが、バイデン大統領との首脳会談後の共同記者会見で岸田首相が用いた言葉に依るならば、「中国を巡る諸課題」、すなわち、「中国の脅威」への対抗・抑止ということに行き着くことです。米国のエマニュエル駐日大使が、米ブルームバーグのインタビューで、「台本をひっくり返し、孤立の当事国を中国にすることがわれわれの戦略だ」と述べたことは、あまりの「あけすけ」なもの言いで言葉を失いますが、日米首脳会談をはじめとする今回の一連の流れが目指すことの本質を端的に表現していると言えます。日中関係と日本のこれからにとって、看過、座視できない、重く、深刻な問題が浮かび上がってきたと言えます。 

そこで、私たちにとって一番大事な命題は、こうした日米同盟の歴史的変容を前に、これからの日中関係とどう向き合っていくのかということになります。 

日中関係の今後に向き合う 

端的に結論から言えば、日米同盟を「所与の前提」とする「生き方」(行き方)を脱却することであり、日米関係と日中関係の非対称性を超克することだと考えます。 

「所与の前提」からの脱却とは、要は、深い思索なしに、日米同盟がなければ日本は生きられないと受け入れてしまうこと、全ての前提として日米同盟ありきの考え方に立つ「生き方」を、一度疑ってみる勇気が必要だということです。軍事同盟としてグローバルに広がる日米同盟がなければ日本の私たちは本当に生きることができないのでしょうか!? もっと新たな発想で世界の平和と発展を求める道はないのでしょうか。日米同盟基軸という「行き方」を疑うことなく唯々諾々と隷従していく、私たちは、そんな生き方でいいのでしょうか。 

もう一つの、日米関係と日中関係の非対称性を超克するという課題については、すでに考えるところを書いたことがあります(2022年11月号)。「日中平和友好条約」において、日中両国が戦火を交えることがないのは当然として、他に対しても脅威を与えたり戦争を仕掛けたりすることはしないという決意を鮮明にしているのですから、中国を対象とする軍事同盟の性格を濃くする日米同盟の土台となっている「日米安保条約」との非対称性を克服して、日米間においても「日米平和友好条約」に変えていく努力がなされてしかるべきではないかと問題提起しました。 

そんなことはいずれも「絵空事」だと笑い飛ばして終わり、でしょうか。21世紀はまだ70年以上あります。世界は大きく変わろうとしています。広い視野、深い視界で世界の大きな流れを見ようではありませんか。時代は新たな世界秩序を求めています。今、その揺籃期にあるのです。 

と、述べてきて、しかし、理想だけを語っているわけにはいかないことも重々承知しています。米中対立があらゆる場で先鋭化する時代に「差し当たり」、私たちにできることは何か、なすべきことは何かという問いに向き合うことも大事です。 

そこで思い起こすのは、昨年11月、サンフランシスコでの岸田首相と習近平国家主席との首脳会談で、「戦略的互恵関係」の推進を再確認したことです。言うまでもありませんが、「戦略的互恵関係」とは、2006年10月に首相に就任して初の外国訪問として中国を訪れた安倍首相と胡錦濤国家主席の首脳会談で合意された「共通認識」で、08年5月、日本政府の招きで日本を訪れた胡錦濤国家主席と福田康夫首相との間で交わされた「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明」で明記されました。とりわけ、この「共同声明」と同時に発表された「日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表」では、日中両国が協力して取り組む課題、ミッションについて70項にわたって詳細に述べられています。この「共同プレス発表」を読み込めば数十くらいの具体的なプロジェクトは容易に導き出されます。どんなに日中関係の現状が険しくとも、こうした具体的プロジェクトを一つでも二つでも実行に移して「戦略的互恵関係」の内実を高めていく、つまり言葉だけに終わらせずに有言実行としていくことで、日中関係を前に進めていく、そんな覚悟と努力が今こそ必要だと考えます。 

この「差し当たり」の取り組みの積み重ねの中から、両国の信頼関係を再構築し、みずみずしく、力強く豊かな日中関係を切り開き、築いていくことを目指すべきだと考えるのです。 

人民中国インターネット版 

  

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