世界の関心を集めた19大 「習近平新時代思想」に衆目

2017-12-27 13:52:26

 

中国共産党第19回全国代表大会(党大会、19大)には、世界から格別に高い関心が集まりました。例えば、大会現場で報道する中国大陸部外の報道記者が過去最多の1818人に達したこと、日本では開幕式当日(1018日)、衆議院議員総選挙を間近に控えていたにもかかわらず、多くのメディアが習近平総書記(国家主席)による「大会報告」をトップニュースとしたことなどが指摘できるでしょう。同時に、「報告」や代表の発言に世界に対するメッセージ性が少なくなかったことなど、19大には新たな一面もありました。何より、会場で報道記者に配布された「報告」が、なんと、計12カ国語で用意されていたことなどからも、中国と世界との関係が新たな時代を迎えたことをうかがわせてくれた党大会だったといえるでしょう。それには、下地がありました。

中国の大きな変化を反映

習総書記就任後の第1期(2012~17年)に世界が注目した中国での出来事として、大胆な反腐敗キャンペーンの徹底、資本の純輸出国(中国の対外投資が外資導入を上回る)への移行、そして、今や世界的プロジェクトとなりつつある「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」の提起などが挙げられます。いずれにも、中国が大きく変わりつつあることを、世界が如実に認めたといえるでしょう。

特に、今年は、世界が中国を大いに意識した国際会議が立て続けに開催されました。例えば、1月、習近平国家主席がスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会に初めて出席し、5月に北京で「一帯一路」国際協力サミットフォーラム(北京フォーラム)を開催すると宣言。その北京フォーラムには、世界29カ国から元首・政府首脳が参加したほか、110カ国・61の国際組織から政府、企業の代表ら総勢1500人が参加する大盛会となりました。さらに、その直前の4月には、米国で中米首脳会談、6月、カザフスタンのアスタナで上海協力機構(SCO)の加盟国首脳理事会第17回会議、7月、主要20カ国(G20)首脳会議―ハンブルグ・サミット、9月、福建省廈門(アモイ)で第9回BRICS首脳会議が開催されており、習主席の言動に世界の衆目が集まりました。19には、こうした内外での国際会議(本誌の今年各号のこの欄を参照)における世界の中国への関心の高さが反映されていたとみられるでしょう。

毛沢東思想と同列の指針

 さて、19大で特に注目すべきは、「報告」が、実に32万字余り(報告時間3時間20分)に及び、おそらくこれまでの最長だったこと、および、中国共産党規約に「習近平の『新時代の中国の特色ある社会主義』思想」が、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「三つの代表」重要思想、科学的発展観と同列に党の行動指針に盛り込まれた点ではないでしょうか。世界にとって、前者は、中国の発展の実績や課題、そして、世界との関係が多角・多様になってきていることを物語る証であり、後者は、中国が新時代に入ったとの重大なメッセージとなっているといえるでしょう。

 その「報告」には、二つの大きな視点があると考えられます。一つは歴史的視点、もう一つは、中国と世界の関係を見る視点です。

 「報告」には次のような描写があります。「中華民族は人類のために卓越した貢献をしてきたが、アヘン戦争(1840~42年)以後、中国は内憂外患の暗黒状態に陥り‐略‐中国人民は苦難を嘗め尽くした。-略‐中華民族の偉大なる復興を実現することは、近代以降の最も偉大な夢である」。中国には、「二つの100年の夢」実現の目標がありますが、「報告」で最も注目すべきは、中国の発展条件を全面的小康社会の実現期となる2020年から35年までと、社会主義現代化強国が建設される50年までの「二つの15年」が設定されたことではないでしょか。この間に、21年の中国共産党成立100周年と49年の中国建国100周年の「二つの100年の夢」の実現期が重なりますが、同時に、「アヘン戦争200年の夢」からの覚醒(注)でもあるわけです。

 では、社会主義現代化強国とは何でしょうか。両面あると見られます。一つが「新矛盾」への対応、もう一つが、「ガバナンス」の改革・創新です。「新矛盾」について、「報告」は、「中国の特色ある社会主義が新時代に入り、すでにわが国の主要な社会矛盾は、人民の日増しに増大するより良い生活需要と発展の不均衡・不十分との矛盾へと変化している」としています。要は、全面的小康社会の実現で人民の生活は向上したが、人民はさらに豊かさを希求している。これに応えるため、社会的生産能力をさらに向上させ、社会制度を改善・充実していかなければならないということです。毛沢東思想と鄧小平理論の実践といっても過言ではないでしょう。すなわち、毛沢東は『矛盾論』で、「社会に矛盾があるからこそ発展の原動力となる」とし、鄧小平は、『先富論』で、「先に豊かになった地域・人はまだ富裕途上にある地域・人を支援し、「共同富裕」の実現に協力せよ」としています。社会主義現代化強国とは、新中国成立以来の政治重視から経済優先へ、そして、民生向上(貧困脱却、教育、就業、人材、医療、養老、社会保障の充実など)の「三位」が調和した国家ということではないでしょうか。世界最大の発展途上国で世界第2位の経済規模を持つ中国の「新時代」が到来したということです。

長期的な発展プラン提起

ガバナンスについて、「報告」では、国家ガバナンス体系・能力の現代化を実現し、50年までに人民全体の共同富裕を基本的に実現するとしています。小康社会が基本的に実現したのが10年とされていますので、共同富裕まで40年が費やされるわけです。その時には、中国は世界最大の経済規模とさらに多くの「世界最大」や「世界一」を有していることは間違いないでしょう。この点、「報告」の後半で言及されている次の部分は、大いに注目に値します。すなわち、「中国は、『共に話し合い、共に創り、共に分割(三共)』のグローバルガバナンス観に基づき、その体系の改革と建設に積極的に参与し、中国の知恵と力量で絶えず貢献してゆく」。

今後、世界は、中国のこの「三共」の姿勢に向き合うことになるでしょう。その「三共」を基本原則としているのが、「報告」の4カ所で言及されている「一帯一路」建設です。「一帯一路」にどう向き合うかは、当面、中国と世界との接点を見る最大の視点の一つと言ってよいでしょう。総じて、19大は、中国の長期的な発展プランを提起し、かつ、国内外に少なからぬ問題提起を行ったというところに、これまでにない特徴があったといえるではないしょうか。

 

注 中国とフランスの国交樹立50周年(2014年)の記念大会の式辞で、習近平主席は「ナポレオン(1769~1821年)は、中国は眠れる獅子で、この眠れる獅子が目を覚ませば、世界を震撼させると語った。中国という獅子は目を覚ましたが、これは平和で親しみやすい、文明的な獅子だ」と語ったとされる。

 

人民中国インターネット版

 

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