天安門広場はパワー全開 70周年祝いさらに世界と

2019-12-18 14:48:52

江原規由=文

10月1日に中華人民共和国成立70周年祝賀大会で世界の注目を集めた天安門広場では、その後も「普天同慶」(天下同慶)をテーマにした花壇の前で記念写真を撮っている観光客が後を絶たず、その一方で、祝賀式典で放たれた7万羽の「平和のハト」は無事帰宅できたかと気にするネットユーザーの声が少なくなかったという。2時間半余りに及ぶ式典を見て、世界第2位の経済大国―昨年、国内総生産(GDP)で1952年比で175倍(年平均成長率81%、1人当たり平均9732)―となり、各分野で多くの「世界一」を記録してきた中国パワーと中国の変化を感じた人は少なくなかったでしょう。

 習近平国家主席は70周年祝賀大会の祝辞の中で、「70年前の今日、中国人民は立ち上がり、近代以後100余年来の貧困脆弱状況を徹底的に改め、偉大なる復興の壮大な道を歩み始めた」とし、さらに、「平和発展の道を堅持し、協力ウインウインの開放戦略を奉じ、世界の人民と人類運命共同体の共同建設を推進していく」と強調しました。この祝辞は、中国人民への祝賀あいさつではありますが、同時に、中国と世界との関係を見る視点を提供しているともいえます。

 その70周年をどう見るか?いろいろな見方ができるでしょうが、この祝辞で強調されていた「世界が刮目する偉大な成果を収め、社会主義中国が世界東方に巍然として屹立した」に異論はないでしょう。

 

「一帯一路」は3度目の国際化

 筆者は、中国はこれまで3度の国際化を経験してきていると見ています。そのうち、新中国成立からの70年間に、中国は2度の国際化に直面しているといえます。3度の国際化とは、①1840年のアヘン戦争で当時の列強から迫られた受動的な第1次国際化(香港割譲など)②新中国成立(1949年)からほぼ30年後の改革開放政策(78年)がもたらした第2次国際化、さらに③その30余年後(2013年)に提起された「一帯一路」がもたらすと期待される第3次国際化です。

 3度の国際化の足跡を見ると、①アヘン戦争で割譲を余儀なくされた香港は新中国成立以後、一貫して中国の国際化の窓口として、そして今もなお「一国二制度」下で中国経済の国際化に貢献しており、②改革開放は中国を世界第2位の経済大国に押し上げ、さらに③一帯一路は世界100カ国余りから参加、支持を得ているなど、名実ともに人類運命共同体のプラットフォームになりつつあります。

 中国の国際化は中国は言うに及ばず、世界の発展にも大きく関わってきています。すなわち、世界経済の成長率に対する中国の寄与率を見ると、第2次国際化期間(1979~2013年)」の年平均寄与率は159%、第3次国際化期間(1318年)では、281%であり、目下中国は世界経済の成長に最も貢献しています。

 習主席は70周年記念日の前日の国慶節レセプションのあいさつで、中華民族は、「站起来、富起来、強起来(立ち上がった、豊かになった、強くなった)」と站、富、強の3点を力説していますが、3度の国際化の足跡、行方はそれぞれがこの3点に対応しているといってよいでしょう。

 中国の国際化は、今後、世界の中国化をもたらし、かつ、両者の相互連携を強めていくのではないでしょうか。

 

対外貿易は28位から1位に

 中国の国際化と世界の中国化の連携の事例は枚挙にいとまなしです。例えば、①全面的小康社会(全面的にゆとりのある社会)の実現(20年)と国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献(極度の貧困飢餓の撲滅などを目的、30年が最終年)②中国対外貿易の拡大均衡、③第三国市場協力を含む中国の対外投資と対中投資の相互拡大④人材および科学技術の交流拡大などが指摘できるでしょう。

 過去40年間、中国は貧困人口を8億5000万人余り減少させており、世界の貧困減少に最も貢献しているとされています(貢献率70%超)。SDGsとの関連では、今年4月北京で開催された「第2回『一帯一路』国際協力サミットフォーラム」であいさつしたグテーレス国連事務総長は、「SDGsの実現は容易ではないが、中国はSDGsに多大な貢献をしている」とたたえています。

 対外貿易では、1950年に世界第28位(11)だった中国が、2013年以降は世界第1位(昨年7兆9000万)を維持し、貿易パートナー数は1978年の40国余りから昨年には230余りの国地域に増加。上海で今年11月に開催される第2回中国国際輸入博覧会が今後、中国と世界貿易の拡大均衡にどう貢献していくのかなどが注目されるでしょう。また、対外直接投資では、82年にわずか4000万だった中国が、昨年には1298億3000万(年平均伸び率252%)に達し、相手先は190カ国地域(アジアが709%)で世界第2位。また、外資導入(非金融類)では、79年から昨年までの40年間に、年率平均444%の高い伸び率を記録し、世界第2位(昨年1350億ドル)となっています。

 このほかにも、中国の国際化と世界の中国化の連携事例は多々あります。それらはいずれも、中国と世界が共に「站起来、富起来、強起来」するための歴史的過程といっても過言ではないでしょう。この点、中国経済における「一帯一路」経済のプレゼンスが高まっていることが注目されます。「一帯一路」建設の進ちょくは中国経済の国際化、世界経済の中国化を見る需要な視点になりつつあるということです。

 

大連中山広場に設けられた中華人民共和国成立70周年記念立体花壇の前でハトと遊ぶ少女(写真提供筆者)

 

積極的に人類運命共同体を

 習主席の祝辞でも言及されている「世界を刮目させた偉大な成果」とは何でしょうか。世界500大企業番付で米国企業数を抜いて中国企業が最多の129社となったこと、高速鉄道営業距離世界一、嫦娥4号による世界初の月の裏側着陸、世界最大の情報通信ネットワークの建設など、成果事例は「枚挙にいとまなし」ですが、第2次、第3次国際化の主役である改革開放や「一帯一路」が偉大な成果の生みの親、育ての親となっていることは否定できないでしょう。今後、中国は第4次産業革命(本誌10月号の本欄参照)で、世界を刮目させる偉大な成果を遂げることになるのではないでしょうか。この点、大きく期待されるのが人材です。中国は高等教育と技能を有する世界一の人材資源(1億7000万人)を有するとしています。人材の定義はともかく、近年、中国は積極的に外国人材の受け入れを展開しており、すでに、100万人近い外国人材に来華人材ビザ(昨年33万6000人)を発給するなど、人材大国から人材強国を目指しています。ものごとの大事を成すには、天の時、地の利、人の和の三位一体が不可欠との格言があります。このうち「人の和」が最重要とされているようですが、現在では、「人の才」といってもよいのではないでしょうか。

 中国では、昨年の改革開放40周年に続き、今年は新中国成立70周年、来年は全面的小康社会の実現、2021年は中国共産党結党100周年、続いて22年には中国共産党第20回全国代表大会(党大会)、23年は第14期全国人民代表大会(全人代)が開催され、「一帯一路」10周年を迎えます。今後、中国に世界の目がますます注がれるでしょう。

 さて、ものごとの大事とは何でしょうか。70周年の習主席祝辞にある「人類運命共同体」(筆者は「普天同慶」の世界と考えています)の建設はその一つといえるのではないでしょうか。世界が大きな転換期に入ったとされる現在、70周年は、中国が天の時、地の利とどう向き合おうとしているのかを見る大きな視点を対外発信していたといえるでしょう。

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