文・写真=須賀 努
最近はアジアのどこへ行っても、道路が凄く良くなっている。あっという間にあれだけの高速道路網を作り上げてしまった中国は勿論のこと、マレーシアやタイなども安心して夜行バスで眠れる道路が作られている。そして大都市間を結ぶバス代は非常に安いので、旅をする者にとっては、これほど有り難いことはない。
タイ VIP夜行バスの座席
例えば、クアラルンプールからマラッカまでなら、2時間半を僅か15RM(日本円約400円)で快適なバスに乗れる。バンコックからミャンマー国境のメーソットまでVIP夜行バスに乗っても570バーツ(約1800円)で、夜食や飲み物まで付いてくる。日本の交通費が如何に高いかを思い知るところだ。
ただ特にタイなどでは、長距離バスが到着したバスターミナルから市内にアクセスするバスなどがなく、言葉の問題もあり、僅か10-20分の距離を、法外な料金で運ばれていくこともある。マレーシアでは、郊外に移転したバスターミナルに、市内行きの連絡バスを手配しているところが多くなったが、うっかりタクシーに乗ると、折角高速バスで安い旅をしたのがフイになることもある。「アジアの各街には、それぞれの事情があるんだ」と言われたこともあるが、少しずつその事情が無くなっていき、どこでも同じようなサービスが受けられるようになってほしいものである。
ベトナム 寝台バス
ベトナムでは、ハノイからホーチミンまで、途中中部のダナン、フエなどを経由して長距離バスが走っている。このバスの良い所は料金が全行程、僅か50ドルぐらいであり、また途中下車が可能なため、欧米人を中心に昔から人気が高い。ゆっくりとバスの旅を楽しみ、途中で1-2日観光してまたバスに乗る。ぶらりバスの旅、とても良いものだ。
つい先日、ミャンマーで初めて長距離バスに乗ってみた。ミャンマーの道路と言えば、これまでの経験では「悪路」のイメージしかなく、またヤンゴン‐マンダレーの高速道路? も事故が多発していると聞いていたので、バスで長時間揺られるのは大変だ、と敬遠してきた経緯がある。
ミャンマー 中国製VIPバス
だがヤンゴン在住の友人から「今はだいぶ良くなってきた」と聞いたので、勧められたVIPバスに乗ってみた。ヤンゴンから第3の都市、モウラミュインまで約6時間、料金は12000チャット(約1000円)で、シートは3列で相当に広く、スマホの充電もちゃんとできる中国製のバスだった。
因みにヤンゴンでも市内から郊外にあるバスターミナルへ向かう公共交通手段は限られており、時間も相当にかかる。また先日空港から市内までを繋ぐバスがようやく運行を開始、僅か500チャット(40円)でダウンタウンまで行けるのは何とも有り難いが、英語放送・表示などは一切なく、初めての人は降りる場所が分からないなど、ちょっとハードルは高い。折角ハード面を整備したのだから、もう少し工夫して欲しいものだ。
ヤンゴンからモウラミュインまでの道路は「スマホに文字が打ち込めるほどなめらか」で素晴らしく、眠っているうちに到着してしまうほどだった。だが、モウラミュインからタイ国境のミャワディまでは、なぜか公共バスさえない。不安に思って車に乗ると、案の定、ものすごいデコボコ道だった。僅か50㎞の平地の道を2時間以上走ったところで、ようやくすばらしい舗装道路が出現して、国境までの快適なドライブとなり、心からホッとした。
この道こそが、タイからミャンマーのヤンゴンへトラックで物資を運ぶ主要ルートである、というところが、今のミャンマーの現状を端的に表している。8月には集中豪雨により発生した洪水の影響で何週間も道路が冠水し、数週間に渡り物資輸送が遮断されたという。ミャンマー経済に対する打撃は大きかったはずだ。
ミャンマーのアジアンハイウエイ
そしてこの道はまた、俗にアジアハイウエイと呼ばれる、アジアの主要道路でもある。今回この道を通ってみて、アジア、いやアセアンと言っても、その格差は相当のものがあることを実感せざるを得ない。アジア各国は発展を続けているとはいえ、そのスピードには大いに差があり、アジア全体が発展したと思える日はまだまだ先になりそうだ。まさに「道半ば」をひしひしと感じるバス旅であった。
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