スカートが話せたら

2019-12-27 16:42:51

 

張軍霞=文

砂威=イラスト

 周濤はこの学校の教師となって数カ月だが、同僚の呉小婷にひそかに恋心を抱いていた。しかし、「あのダンス教師の呉小婷はお高くとまっていて、一般人は全く眼中にない」と人がうわさするのをとっくに耳にしていた。

  周濤は諦めず、何度も探りを入れた。例えば、呉小婷より早く出勤して、彼女のためにお湯を沸かしておく、または彼女が観葉植物のポトスが好きだともらせば、すぐさま買いに行き、鉢をデスクの上に置いておくなどだ。こうしたことに呉小婷は全く心を動かされた様子もなく、一笑に付した。

  ある日、周濤は呉小婷が同僚と3日後の開校記念日のイベントについて話しているのをふと耳にし、「本当はダンスプログラムを準備していたのだけど、いつもの頭痛がまた始まっちゃって、どんなに薬を飲んでも駄目で、病欠届を出さなければいけなくなりそうだ」と言っているのを聞いた。

  女性の同僚は残念そうに、「私の田舎の荒れ地に生えている草をお茶にして飲むと頭痛に効いて、それは『頭髪草』と呼ばれているんだけど、あなたが頭痛持ちだと知っていたら、持って帰って来たのに!」と言った。

  言っている方は何気なく言ったのだろうが、聞いた者にとってはとても意味のあることで、周濤がひそかに探ると、この同僚の故郷ははるか遠くだった。彼は校長に休暇届を出し、すぐさまこの同僚の故郷に向かい、鉄道を乗り継いで、車に乗り換え、オートバイを借りて、とうとう伝説の「頭髪草」を手に入れ、開校記念日の前に急いで戻って来た。

  彼は「頭髪草」で入れたお茶を両手で持ち、長旅でやつれた姿で呉小婷の前に現れた。呉小婷が反応する前に、女性の同僚が先に、「これは私の田舎の頭髪草じゃないの?」と叫び声を上げた。すぐに彼女は気が付いたようで、呉小婷に目配せをして、事務室の戸をそっと閉めて出ていった。

  「私は頭痛がするだけなのに、どうしてそんな遠いところまで大変な思いをして行ってきたの?」と、長旅で疲れた様子の周濤に申し訳なさそうに言った。「それは、あなたのダンスが見たかったから」と、はにかみながら周濤は言った。「それと?」呉小婷はからかうように聞いた。「それと……もちろん、あなたが好きだから……」。周濤は口ごもりながら答え、緊張のあまり汗までかいていた。

  「いいわ、開校記念のイベントは間もなくだから、賭けをすることにしましょう。もし校長がスカートをはいて出席したら、私はあなたと付き合う。そうでなかったら、あなたは今後一切私に構わないで」

  なんてこった。これは本当に難題だ。周濤は学校に来て間もなく、女性の同僚の何人かが、どんなに暑くても女性校長は絶対スカートをはかないと言っているのを聞いたことがある。女性校長の初恋の人が彼女にスカートを贈るのをとても好きだったけれど、双方の親が反対したために、二人は結局一緒になることができず、そのせいで彼女はもうスカートをはかなくなったとのことだ。

  周濤は天命を待つしかなかった。開校記念の日、彼は早々に観客席に座り、軽く目を閉じて、緊張した呼吸を繰り返し、熱烈な拍手に迎えられて校長が席に着くと、ようやく彼はそっと目を開いた。なんてことだ、校長は深緑色のワンピースを着ているではないか!

  あの日の呉小婷のダンスについてはもはやあまり覚えていない。しかし、1年後に彼と彼女が結婚した時、自分の一番緊張したあの瞬間について語らないわけにはいかなかった。「本当に奇跡かと思ったよ。校長がスカートをはくとは!」彼女は含み笑いをしたが、真相を明かすことはしなかった。校長は普段、確かにスカートをはかないが、開校記念日だけはいつも例外で、なぜならそれは、校長と初恋の人が知り合った記念日に当たるからだ。それを彼女はあらかじめ知っていたのである。

 

翻訳にあたって

男の子がすてきな女の子にアタックして、すげなくされても諦めず、何度もアタックし、熱意で心を動かして最後にようやくOKをもらうというストーリーは中国の典型的なもので、女の子がすてきな男の子にバレンタインデーに手作りチョコを渡すなどして「告白」するというストーリーは、日本の典型的なもののように思われる。男女の付き合いにも、両国間の差は多々あるようで、とても興味深い。「心比天高」はしばしば「心比天高、命比」(心が天よりも高く、運命は紙よりも薄い=気高い心を持っているが、運命には恵まれないこと)などのように使われる。分不相応のプライドの高さをやゆする時にも使われ、ここではこうした意味合いをもつ「お高くとまる」という訳を使用した。(福井ゆり子)

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