明けましておめでとう

2023-01-17 16:01:57

白金科=文 鄒源=イラスト

午後5時、父はあわただしく上階へと駆けあがり、自宅の玄関に春聯(入り口や門に貼る正月飾り)を貼りに行った。 

父は入り婿になってからというもの、ずっと義理の両親と一緒に住んでいる。家は3間の低くて狭い土壁の家だ。義理の父は頑固で、村の計画に従わずに、決して古い家を取り壊そうとしないので、村も新しい家を建てることを許してくれなかった。しかし、息子が大きくなり、新しい家が必要となったので、父は仕方なく、方々からお金をかき集めて村の外の住宅地に息子のための家を買い、息子を一人で住まわせた。 

住宅地と古い家は遠くなかったので、父はすぐに到着した。玄関を開けると、無造作に上着を脱ぎ、靴箱の上に置いて、のりを探し当てると、玄関を出て、戸を閉めて春聯を貼った。 

春聯を貼り終え、父はまた部屋に入ろうとしたが、玄関は内側からロックされていた。鍵は上着のポケットの中で、靴箱の上に置いてある。父は焦ってびっしょりと汗をかいた。 

息子は町の工場で働いていて、今日は遅番で、午後4時に工場へ行き、夜12時に戻ってくる。これは息子が大きくなってから初めて家にいない大みそかの食事となるため、父は切ない思いを抱いていた。父は大みそかの夜の食事を真夜中にしようとしたが、息子は無表情に、「いいよ、工場でも大みそかの料理は出るし、仕事が終わった後は疲れているから眠りたいんだ」と言った。 

しかし父はずっと切ない思いを抱いたままだった。そのため、大みそかの食事が終わった後、息子の家へ行って、息子が帰って来るのを待つことにした。部屋には簡単な炊事器具があったので、父は息子が好きな料理を二つ選び、家で全部下ごしらえしてから持っていった。息子が帰って来る頃に簡単に調理すれば、息子がドアを開けるなり温かな料理を出すことができる。 

でも今は、鍵がないため、計画はおじゃんとなり、父は別の方法を考えざるを得なくなった。 

夜の11時、父は家で二つの料理をつくって、弁当箱に詰め、脇の下に挟んで、さらに湯たんぽをそれに当てて、厚い上着を着た。 

11時半、父は再び建物の下にやってきた。この時間も父が綿密に考えたもので、大みそかの夜なので、工場が早めに退勤させてくれるかもしれないと思ったからだ。父はすぐにあつあつの料理を息子に出したかったのだ。 

材料を持ってきてその場で作らなかったのは、息子が作らせてくれないかもしれないと恐れたからだ。 

工場は大みそかだからといって早く退勤させてくれることはなかった。12時、父は息子が乗った電動自転車が住宅地に入って来るのを見た。料理はまだ熱いはずだと父は思った。父は壁の隅に身を隠した。彼は息子に自分の気配りを知られたくなかったからだ。 

息子が上階に昇り、家に入り、上着を脱いで、手を洗っているくらいの頃合いを見計らって、父は玄関前に立った。戸をたたこうとしたが、手が戸の前で止まった。この建物に住むほとんどの人は実家に帰って年越しをしているだろうから、突然戸がたたかれたら、息子を驚かせてしまうのではないだろうか。やはり電話をしよう。父は手を引っ込め、携帯電話を取り出した。 

戸が開いた。息子が入口に立っていた。「明けましておめでとう、父さん!」と息子は言った。 

この「父さん」という言葉に彼はうろたえた。息子は妻と前夫との間の子で、父が婿としてやって来たときには15歳だった。今、息子は20歳だ。この5年間、息子は彼を父さんと呼んだことはなかった。 

「明けましておめでとう、息子よ」。あわてふためきながら、父は脇にはさんだ湯たんぽに手を当てた。湯たんぽはまだ温かかった。料理もきっとまだ温かいに違いない。 

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