急速に進む中国の科学技術 研究者7500万人超で論文数は世界一

2017-11-01 09:53:55

文=ジャーナリスト 陳言

日本で新聞学と経済学を学び、研究して14年、今年は中国に帰国してちょうど14年目。経済学では主に技術が経済成長に与える影響を専攻していた筆者が最も関心があったのは、おのずと戦後日本の技術導入と復興であり、技術改革はどのように日本を経済大国に押し上げたかなどを研究テーマに選んだ。中国に帰ってから、中国の科学研究、技術開発を取材して、日本とは大きな相違があることに気が付いた。

減った黄砂と減るスモッグ

2003年に帰国した当時、戸外で1日取材して家に帰って、ワイシャツの袖口を見ると、かなり色が変わっていた。日本で暮らしていた当時、袖口はもっときれいだったと、その違いに驚いた。

日本にいた時、外出前にはまず天気予報を見て、傘を持って行くかどうか考えた。北京に帰ると、外出の時は砂嵐が来るかどうか確かめ、マスクやゴーグルなどを準備するかどうか考えた。

                                   

時ならず来襲する砂嵐は、筆者は、数十年の植樹、造林事業が行われなければ、変わることがないだろうと思っていた。日本企業は組織的に多くの植林活動を行い、例えば、三菱商事は河北省で造林を行い、日立建機は内蒙古自治区アラシャン(阿拉善)で植樹活動に取り組んでおり、筆者も参加できる時は必ず参加していた。

ところがいつの間にか、砂嵐は北京市民の心配ごとではなくなり、瞬く間に、かつては日常生活とは無縁だった「霧霾(ウーマイ=スモッグ)」という単語が流行してきた。特に10年以降、スモッグが人心に与える影響は次第に大きくなり、スモッグが来襲するたびに、心の中に焦りが生じ、河北省張家口などの風がよく通る場所で暮らしたくなるような感じがし、風と砂ぼこりがどれだけひどくても、スモッグに包まれ、どんよりした生活はごめんだ、と感じている。

自動車販売台数が増え続け、石油会社がガソリン製品の品質を日本市場と同じレベルにしたという話も聞いたことはないので、高度成長期の日本を振り返ると、中国のスモッグ退治には数十年はかかりそうに思えた。

しかし、17年から、明らかに北京のスモッグはかなり改善されたように感じる。もしかしたら石油会社にも良心があり、または企業が環境問題を重視し始め、さらに経済成長速度の鈍化とも関連しているのかもしれないが、スモッグ問題は私たちが想像していたよりかなり速く解決しつつある。これはかつて北京が砂嵐を退治したのに似ているのではないだろうか?

環境、技術面での中国の変化は大変速く、多くの場合、想像を超えている。

理系卒業生は年500万人

6月は中国の大学入試の季節だ。メディアの依頼に応えて、中国の大学入試40年を振り返る原稿を書いた時、いくつかのデータを集めた。

筆者が1977年に高校卒業1年前に大学入試を受けた時、受験者579万人に対し、合格者は27万人だった。翌年、高校卒業後に正式に受験した際には、受験者610万人に対し、合格者は40万人だった。ここ数年の受験生数はすでに1000万人前後に増え、合格者数も700万人前後に増加している。毎年、数百万人が希望の大学に入学できないとしても、結局ほとんどの人は大学に入る機会を得ている。

中国の大学と日本の大学は以下のような非常に大きな相違がある。中国では大学生の大部分が理系を専攻するが、日本では理系、文系それぞれ半々だ。中国では毎年おおむね500万人前後がエンジニア、技術系職員のグループに加わる計算で、これは一つの国の人口に相当する。ここ40年来の大学教育によって、2014年時点で、中国にいる科学技術研究者の総数は7512万人(科学技術部〈日本の省に相当〉の発表)に達し、米国に比べて少なくとも1000万人上回っている。

中国の科学研究経費の変化も同様に大きく、国家統計局のデータによると、10年の研究開発(R&D)費は7062億元だったが、14年には倍近くに増え、1兆3015億元に達した。経産省発表の数値と比較すると、中国の研究開発費は日本の倍以上だ。

R&D費の増加に伴って、中国ではここ数年、コンピューター科学、数学、化学、材料科学やテクノロジー分野の論文数が世界一になり、今後、主な科学研究分野で、米国と肩を並べ、一部の分野では米国を凌駕することも困難ではない。

確かに、日本のメディアが繰り返し報じているように一部の中国の研究者は偽の論文を書いている。中国の研究開発の独創性などの問題は解決が迫られている。しかし、14年前に筆者が北京に戻った当時、日本の科学研究や技術力は中国が5年から10年後に達成できると推測していたが、今では、発展のスピードは想像をはるかに超えている。

今後数年、中国の科学研究は加速度的に進展し、想像を上回るコンテンツが多数生み出されるだろう。

家電は日本製から中国製へ

同様に、14年前北京に戻ったばかりのころ、無意識のうちに購入した全ての家電が全部日系ブランドであることに気が付いた。しかし、10余年後、家電を買い替えた時、カメラが日本製のままだったことを除けば、その他のデジタル製品、家電で、日本製は多くなかった。

しばしば、価格体系によって日本製品は中国で販売萎縮現象が現れているというが、筆者の経験では価格とは大きな関係はない。日本のメディアはインドを中国のライバルとして描写するのが好きなようだが、インドへ行って見ると、中国の携帯電話がかなり流行していることが分かる。さらに携帯電話だけにとどまらず、中国で常用されている携帯電話アプリ(APP)、中国の家電なども流行している。大衆化する製造技術の不断の進歩によって、中国の家電、デジタル製品が市場を席巻する勢いになったのだ。

日本で取材する際に、政治家がしばしば日本の「ハイテク」について語るのを耳にする。中国語に翻訳すると「高質量(品質)技術」あるいは「高評価技術」であり、「高成本(コスト)技術」と翻訳することもできる。この「高」の一字で急速に勃興している中国の科学研究、不断に進歩している中国製造業を表現することができるかどうか?筆者は知る由もないが、日本の「高」で中国企業の製品をブラッシュアップすれば、恐らくウインウインで双方が利益を得られると感じている。ただどのように聞いても、語感から言えば中国に対する「差別化」であり、「指導」「協力」「共同進歩」のニュアンスは少ない。

 

 

 

 

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