地方都市に新変化の兆し 固安:LCDや医薬 貴陽:ビッグデータ

2017-11-01 09:53:54

文=ジャーナリスト 陳言

 しかし、こうした都市にある程度の時間滞在すると、都市間の個性の違いに気が付くはずだ。中国では経済成長が中高速段階に入ると、人口の伸び率が停滞し、都市間の産業競争、人口競争は日本に比べてずっと激しく、農村人口の都市への移転は非常に速く、農村と都市の関係、都市と都市との関係はますます複雑になってきた。

 魅力ある都市づくりは、現地政府や住民にとって、以前よりずっと重要になっている。投資などで中国に関心を持つ日本企業は、ますます都市に対する新たな認識が必要になっている。

北京郊外の雄安区を見る

 河北省の雄安新区は4月1日に正式に成立した。これは1979年にスタートした広東省の深圳経済特区、92年に成立した上海市の浦東新区に続いて、今後の中国経済の成長プロセスにおいて重要な意味を持つもう一つの新区だ。

 7月10日、筆者はマイカーを運転して雄安地区を見てきた。4月に雄安新区のニュースが流れた直後、群がり来たという「マンション転がし団」の姿は、この時は跡形もなく消え、通りには人影も少なく、河北省の寂れた地方都市と大差なかった。現在、雄安では個人が大量の住宅を持つことは禁止され、聞くところによると、今後、新戸籍は認められず、ここは科学研究、教育、本社管理部門の所在地にしていくそうだ。

 比べて見ると、北京市の中心部から50、2019年に供用を開始する北京新国際空港から10で、南側が雄安新区に隣接している固安は、筆者に工業化転換を指向する新しい都市を想像させた。

              

 固安開発を請け負っているのは華夏幸福基業公司で、同社は中国各地でいくつかの工業城鎮(新型都市)を開発中で、その中で北京から最も近いのが固安だ。北京に隣接しているので、首都の研究開発部門と生産部門の一部がここに流れ込み、数年前から新型住宅、セクター開発の工業パークが盛んに建設され始めている。

 「工業の中で最も発展の将来性があるのが液晶ディスプレイ(LCD)、医薬であり、同時にここが北京新国際空港からわずか10であることから、航空部品製造にも大市場が期待できることを考慮に入れると、固安の工業開発は主に、LCD、医薬、航空部品が中心になっている」と同社の固安プロジェクトの企業誘致を担当している高幸氏は筆者に語った。

 パーク内にある何カ所かの工業エリアを見た。医薬研究開発の関連ビルはすでに立ちあがり、一部企業の研究室はこちらに移転し、医薬研究開発の集積地になっているように見える。医薬エリアの中心部には大きな広場があり、いくつかのフォーラムがここで開かれていた。関連研究機関の人々はしょっちゅう顔を合わせ、相互間の関係はますます緊密になっているようだ。

 スマートフォン(スマホ)、テレビなどを含めたLCDは、今後、見通しがますます明るくなる業界だ。工場は現在建設中だが、高氏ら関連プロジェクトの担当者が中国国内外の至る所から探してきた投資企業である。空港は2年足らずで開港し、関連部品航空機部品の企業だけでなく、自動車部品の企業も徐々に工業エリアに進出している。

避寒、避暑に最適な聖地

 今年の北京の夏はとりわけ早く到来し、しかもとりわけ暑い。北京から貴陽までの飛行距離は北京_東京間とほぼ同じで、東京で体験するのは北京と同じような暑さだが、貴陽の気温は北京に比べて20度も低い。今年6月、貴陽で開かれた会議に参加した際、特にそうした感慨が強かった。

 貴陽市あるいは貴州省全体が避寒、避暑に最適の聖地だといわれ、冬は気温が零下まで下がることはほとんどなく、夏も二十数度が最高で、猛暑を感じさせることはない。貴陽は経済成長の過程にあるが、高エネルギー消費、高汚染型の重工業を追求していないのは、ここの地理的環境がそのような企業にふさわしくないからだ。グリーン農業、観光、グルメが急速に発展している。1人で来て、スマホさえ持っていれば、街角のQRコードをちょっと読み取ると、歴史的な話やグルメ情報などが、あっという間、スマホのスクリーンに飛び出してくる。ガイドがいなくてもおいしいものを食べ、ゆっくり旅を楽しむことができる。

 貴陽の最大の変化はビッグデータ産業の発達に違いない。アリババや中国電信などの3大キャリアはデータセンターをここに置いている。ここの大きなメリットは、他の地域が夏の最も暑い時でも、気候が涼しく、データセンターの運営、管理にほとんどエアコンが必要ないので、データセンターの節電効果が非常に大きいことだ。

 筆者は地元の政府関係者から次のような話を聞いた。ビッグデータ産業が立地して以後、これらのデータをどのように使用するかが課題となっている。ビッグデータの関連研究開発、使用する人材が集中している貴陽は、エコ環境の特長を生かして、観光、ビッグデータ方面で、この2年非常に大きく発展している。

農村人口の新たな受け皿

 中国国家統計局発表のデータによると、昨年末の中国都市化率は574%。農村人口の都市流入が続いており、今後数年、これまで通り毎年1000万人以上が農村から都市へ流れ込むとみられている。こうした農村人口を受け入れるのは北京、上海、広州、深圳という大都会ではなく、固安、貴陽のような大都会周辺あるいは発展途上の都市になるだろう。

 今後、中国の都市間の人口争奪戦は依然として、どこが最も先に農村人口を吸収するかだろう。都市部に流入してくる農民のために雇用機会を提供してこそ、都市の経済成長を促進させることができる。都市開発をチャンスと見て、不動産の先行投資をすることは、個人の角度から見れば、当然求めることだろうが、住宅価格の高騰を招き、農民の都市移転を阻害することになり、最終的には都市の工業発展を難しくさせる。

 都市開発の道は固安のLCD、航空、自動車産業といった工業製造の道のほか、固安の医薬研究開発、貴陽のビッグデータやエコ観光のようなサービス業もある。新しい都市の魅力はたぶんここにあり、日本企業の対中投資はこうした面から選択すべき時代が来ているのではないだろうか。

 

 

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