第三国市場で共同起業を 企業の持ち味生かし相互補完

2019-02-02 11:16:33

文=陳言

昨年は、中日経済関係に目を見張る変化が起きた。この2019年について、自信を持って言えるのは、中日関係はさらに好転し、その温度はさらに上がり続けるということだ。

 中日経済はそれぞれ異なる発展段階にあり、互いに重なり合っている部分があるが、多くの部分では相互補完的だ。これまで長期にわたって、日本メディアの多くは中日経済関係の重なり合った部分の競争を強調し、相互補完の重要性をなおざりにしてきた。昨年に、李克強国務院総理が訪日したのに続いて、安倍晋三首相が中国を公式訪問したことで、メディアはやっと中日経済の相互補完の部分に着目し始めた。これは好ましい傾向であり、今年はさらにスポットライトを当てるべきだろう。

 

昨年1026日、北京で第1回中日第三国市場協力フォーラムが開かれ、中日両国から多数のゲストが参加した(VCG)

 

「失われた」に偏重した報道

 日本は経済大国であり、また政治大国、軍事大国になりたいと努力していると思うが、今のところはまず経済大国だ。この経済大国にどのような特徴があり、今後の発展はどの方向に向かうのか、当然のことながら、中国は大いに関心を持っている。

 過去数年間の中国メディアの報道を見ると、日本の「失われた10年」とか「失われた20年」を強調する記事がかなり多いことに気が付くはずだ。中国メディアは日本で現地取材する機会に恵まれているとは言えず、主に日本メディアの報道から関連記事を抄訳しているケースが多い。しかし、「失われた」に偏重した報道は、日本を訪問している年間700万人から800万人の中国人観光客が日本で見た情景と大きな相違がある。「失われた」時代を経た日本の庶民生活は非常に安定して穏やかであり、物価、住宅価格は多くのところで北京、上海より安く、このような「失われた」日本は中国民衆には非常にうらやましく見える。

 中国の企業家の日本に対する見方も中国メディア報道と大きな相違がある。少なからぬ企業家は日本を訪れて実地調査し、日本による原材料の研究開発、基礎部品の製造技術において、その多くは中国企業が数年以内に追い付くのは困難であることに気付く。これらの原材料、基礎部品は企業経営を安定させ、数年以内の利益を保証するが、多くの中国企業は組み立てをメインにしており、今後数年の固定利益を保証するのは非常に困難だからだ。彼らは日本企業の研究開発、製造技術に感服している。

 庶民はうらやましがり、企業家は感服している――中日両国の政治関係が好転している昨今、これは急速に日本に対する再評価になりつつある。一方、日本側の対中イメージも大きく好転し始めている。

 

スタートアップ企業に関心

 過去10年間を振り返ると、日本のメディアには中国経済の崩壊を予想する記事がかなり多数見受けられ、同時に中国経済の発展は脅威であるとの評論も多く、中日相互補完、共同起業の観点は少ない。崩壊論、脅威論では、2010年以後の中国の通信技術(IT)産業の急速な発展、モバイル決済、シェアリングエコノミー、新エネルギー自動車の発展が日本にどれだけの影響をもたらすのか、正確な説明は不可能だろう。

 昨年、筆者はほとんど毎月、日本を訪問したが、そのたびに、すぐ新聞を買って、テレビを見た。最近感じている、以前との最大の相違は、日本のメディアが中国のスタートアップ企業を重視し始め、大量の中国の技術革新に関する情報が報道され、その中には筆者が知らない内容も少なくない。以前は、中国の庶民はいかに愚かで、役人はいかに汚職や腐敗まみれで、空気はいかに汚染されているか、などが報道されていたが、現在はまるで違っている。

 経済面において、中国企業の生産能力は往々にして大きく、製品の生産量は日本企業の数十倍、数百倍で、これは確かに日本メディアに脅威と感じさせるかもしれない。しかし、仮に数百倍だとしても、中国市場の規模、対外輸出能力から見れば、少なからぬ分野では依然として取るに足らない量だ。こうした実情は日本のメディア、企業には理解し難いだろう。マクロとミクロの関係を分析するのも困難かもしれない。日本の物差しで測っても、一つの結論を出すのは難しいかもしれない。日本にはさまざまな中国経済の分析結果があるが、大部分は今後の中国経済の成長とフィットしていない。崩壊論、脅威論などの結論ありきの記事は別としても、確かに中国経済の発展はかなり独特であり、分析するには困難が伴うかもしれない。

 しかし、中国のスタートアップ企業は以前の鉄鋼、セメント、ガラス企業とは違って、今後、どの方向に向かうのか、中国企業自身が分かっておらず、日本企業は好奇心に満ちた目で見守っている。日本企業の精細なマネジメント能力、商品製造技術と中国のスタートアップ企業との提携ができるか否か、これは中日の共同研究に値する課題である。

 

日本製造業と中国IT企業

 昨年実現した中日経済関係の好転を基礎に、今年は中日企業の共同起業に大きな可能性が見込まれている。

 特に関心を払う価値があるのは、日本の製造業と中国のIT企業の共同起業である。昨年には日立とテンセント、パナソニックと百度(バイドゥ)、ソニーとバイドゥがすでに戦略的パートナー関係になり、日本の製造業と中国のIT企業が急速に結び付き始めたことを実感させた。今年はさらに多くの日本の製造業と阿里巴巴(アリババ)、京東(JD.com)などとの提携関係が生まれるだろう。

 もう一つは恐らく、第三国市場での共同起業だろう。中日両国は昨年すでに第三国市場における提携に関連する会議を開き、今年には会議で調印した各種プロジェクトを実行に移す段階に入る。日本には第三国市場における調査研究能力、現地政府との交渉経験、プロジェクト管理における独自の持ち味があり、中国には大量の資金があり技術者がいるため、プロジェクトを急速に完了することができる。

 中日相互補完、共同起業は両国に利益をもたらすだけでなく、さらにアジアと世界の他の国にも恩恵を与える。筆者は今年、中日両国が共に相手に対する見方と評価を刷新し、新しい一歩を踏み出すと信じている。

 

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