中国の特色を分析する年 春節と氷雪の祭典で幕開け

2022-02-08 15:42:14

陳言=文

今年の春節(旧正月)は2月1日、3日後の4日から20日にかけて北京冬季オリンピック(北京冬季五輪)が開催される。中国の二十四節気をご存じの読者は4日が立春だとお気付きだろう。春節の後に立春、さらに北京冬季五輪が重なり、今年の中国の2月は例年以上に熱気にあふれたムードに包まれるだろう。

中国の春節は事実上、中国国民の心理的な新年であり、新たな1年は、今年は2月1日から正式に始まるといっていい。

今年は、新型コロナウイルスの変異株の毒性が弱まり、経済生活に対する直接的な影響が小さくなるとしても、過去2年余りに受けた打撃によって、元々収縮状態だった世界経済はさらに弱体化するかもしれない。中国の総人口に占める新型コロナ感染者数の割合は他国と比べるとかなり低いが、国外の新型コロナの影響、国内の厳格な防疫体制によって、中国経済は消費、供給、弱含み予想において困難な状態に陥っている。幸いなことに中国経済自体は安定的に発展し、また政府も経済の安定発展を維持する能力を持っており、これが世界経済の大局の安定に大きな役割を果たしている。

 

リーマンショックの後遺症

過去2年ではなく、10年あるいは20年のスパンで世界貿易を分析すると、米国サブプライム住宅ローン危機に端を発した2008年のリーマンショック以降、世界貿易は09年に極めて深刻な下落に見舞われ、その後回復したものの、12年以降、世界貿易の伸び率は低迷を続けている。20年には新型コロナの影響で11年ぶりにマイナス成長に転じた。世界貿易が振るわない背景には世界経済がここ10年一貫して弱含みの状態で、しかも突発的な新型コロナが追い打ちをかけ、全世界の足取りが重い状況に追い込まれていることがある。

リーマンショック後の世界経済は製造業分野で新技術開発、技術革新が停滞状態に陥り、情報技術(IT)関連の業態だけが空前の発展を遂げた。世界貿易には当然サービス業も含まれるが、実体経済の支えがなければ、最終的に貿易総額を新たな段階に引き上げることはできない。IT産業が社会資本を過剰に占有したために、製造業の発展を制限し、製造業の足を引っ張っている。

過去10年の間に目にして来たかなり奇異な現象は、IT関連産業が巨額の利潤を稼ぎ出し、この下に連なるいかなる産業もこれとは比較にならず、ITプラットフォームに依拠しなければ現状を維持できない状況だ。ITプラットフォーム自体は世界貿易を促進する役割は果たせず、クロスボーダー電子商取引(eコマース)が世界貿易を新たな段階に引き上げる要素となったが、過去10年来の貿易増加量から見て、相応の成果が上がったとは思えない。

 

 

中国のITと製造業は緊密

他国と違って、中国では21世紀に入ってからITプラットフォームが発展したとともに、特に製造業の発展を重視していたため、多くの場合、ITプラットフォームと製造業は緊密に結合していた。

現在、世界的に影響力を持つITプラットフォームを備えている国は米国と中国だけであり、米国が世界をリードする位置にあり、一方、中国のITプラットフォームは巨大だが、その影響力は主に国内にとどまり、世界各地で使用されるITプラットフォームは多くない。

中米両国を除けば、日本を含む他国は今のところ世界の主要な国々が使用するITプラットフォームを開発するに至っていない。日本は極めて豊富な技術研究開発の蓄積があるが、中米ほどのサービスシステムを構築するのは恐らく非常に困難である。

米国のITプラットフォームの中で、米国産業に直接組み込まれているケースは多いとはいえない。例えば、アップル製品の生産は主に中国で行われ、アマゾンの物流システムは世界で最も先進的だが、システム内に流通している相当量は中国企業の製品である。米国製造業の特性をもってすれば、物流製品の半分以上を国内製造にすることができるだろうが、全面的に国際化している米国では不可能だ。

これに比べて、中国のITプラットフォームは主に国内でその役割を発揮している。日本を含む他国の製品が多く取り入れられているとはいえ、配達物の95%以上は自国産であり、国内市場開拓、地方経済振興、製造業発展に貢献している。ITプラットフォームと国内経済の緊密な連携は中国の大きな特色であり、中国経済が今年も従来通り安定を維持し得る要素の一つである。

中国のITプラットフォームは世界貿易を押し上げる分野で発揮できる役割が限られているかもしれないが、中国国内の物流を活性化させる上で不可欠である。米国とも、大きなITプラットフォームを開発していない日本や欧州の国々とも大いに異なる。

 

北京冬季五輪のスピードスケート競技場となる国家スピードスケート館は、「アイスリボン」の愛称で親しまれている 。左上には、北京の上空を通過する中国独自の宇宙ステーションの軌跡が描かれている(比較明合成写真、新華社)

 

春節もクリスマスも世界的

日本メディアの報道を読んでいると、クリスマスは全世界の祝祭であり、春節は中国一国だけの祝い事であるかのように感じる。日本のメディア関係者は心理的にクリスマスには親近感を持っているが、春節にはなじみがないのかもしれない。

日本人は立春が春節の前か後か、さほど気にしていないかもしれない。春節の後に立春がやって来る「春」が重なる(中国語では「双春」)時期は毎年活気にあふれるが、北京冬季五輪が開催される今年は特に注目される。さらに今年は1年を通して特筆すべき年である。中日国交正常化50周年を迎え、秋には中国共産党第20回全国代表大会(党大会)が開かれる。新型コロナと闘った20年、21年とは一層異なる感慨を中国の人々に抱かせるだろう。

製造業の相対的な縮小、国際貿易の伸び率鈍化はここ十数年来、一種の常態になっているが、こうした状況下で、国内経済を安定的に発展させた国が最終的に勝ち抜ける。こうした時にこそ、中国の長所に注目し、分析すべきである。クリスマスには注目するが春節には理解が及ばないのであれば、世界の新常態にある中国の特色を見抜けないだろう。

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