輸入博で見た貿易拡大の道 日本企業400社含め3000社出展

2023-01-16 16:35:27

陳言=文  

刊誌の原稿を執筆する際は、読者がいつ読んでも見応えを感じてくれるよう望んでいる。特に新年号では、このようなテーマ選びがより必要だ。 

筆者は今年の世界経済を展望した記事を多く読んだが、悲観論が主役だ。新型コロナの感染症や戦争、インフレなど前年から残された病根は、新しい年にも治療薬を見つけられていない。世界経済は混乱期にあり、情勢が不確実な時期に悲観論はより受け入れられやすい。 

将来を展望するには、過去の総括から始めるべきだ。昨年はたくさんの事が起きたが、上海で開かれた第5回中国国際輸入博覧会(輸入博)や、東南アジアで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)会議、主要20カ国地域(G20)首脳会議を見ると、中国の市場開放の姿勢は、米国が高関税に固執し日本が経済安保体制を構築したのとは明らかに対照的だ。中国市場そのものが巨大であり、中国の製品生産能力は世界各国を上回っており、人々の生活を改善する物質製品の面では、中国への輸出や中国からの輸入を問わず、円滑な貿易こそが世界経済の収縮を食い止める重要な手段だ。 


日本の総合機械メーカー「不二越」(NACHI)は、今回の輸入博に高速・多用途の超速ロボットSRAシリーズを出展。自動車の組み立てシミュレーションを披露した(vcg)

    

ダブルカーボン政策に注目 

商務部(省)と上海市政府が主催した第5回輸入博は昨年の11月5~10日、上海国家コンベンションセンターで開催された。世界初の輸入をメインとした大型の国家レベルの博覧会として、企業の展示面積は第1回の27万平方から36万6000平方(東京ドーム約8個分)へと拡大し、出展企業数は約3000社を維持している。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、今回、同博覧会に出展した日本企業は約400社に上る。 

筆者は数多くの展示ブースを見て回り、取材した。日立や東芝、パナソニック、三菱マテリアル、みずほ銀行、AGCなど毎年出展している企業は、今回も上海に集結し、新エネルギーや新素材、環境分野などの最新技術や関連動向を展示した。さらに、中国市場のニーズに合わせ、また中国のダブルカーボン政策(30年までに炭酸ガス排出量を減少に転じさせ=ピークアウト、60年までに炭酸ガス排出量ゼロを目指す=カーボンニュートラル)につながる各種技術を全面的に展開していた。日本企業はテクノロジーでさまざまな蓄積があり、依然として多くの分野において先進性、独自性を維持し、市場の見通しも良好だ。日本企業の技術力と中国市場が結び付けば、中国市場において光輝き、中国企業の技術レベルを向上させるだけでなく、日本企業にも研究開発(R&D)を継続させることができ、市場ニーズに対応する面で絶えず前進することができる。 

中国企業の海外進出に対する情熱は依然として根強い。みずほ銀行の出展ブースには、企業や政府関係者がひっきりなしに訪れ、金融面で外部とつながる手段方法について質問していた。現在、日本の金融部門の業務の大部分は日本企業に向けられている。もちろん、日本企業と中国企業間の関連業務も行っており、輸入博などを通して、さらに多くの外国企業の製品が中国に輸出されるので、金融部門の業務は世界各国に支店を持つ日本の金融機関が果たしていくことになり、今後この分野での業務はさらに発展する余地が大きい。 

旭化成は初参加だった。輸入博の期間中、中国中央テレビや環球ネット、第一財経などの中国メディアが旭化成の「健康中国」や「グリーン社会」「デジタル発展」などの出展コンテンツを詳しく報じた。展示会と共に中国メディアを通じて、旭化成の製品、サービスは中国で幅広く紹介された。 

  

鉄道がもたらす貿易拡大 

輸入博の大きな目的の一つは、世界各国の対中輸出の拡大を促すことだ。 

中国は巨大な製品生産能力を持ってから、最初は輸出の拡大に努めた。取引規模が十分に大きくなると、中国は5年前、初の輸入博を開催し、輸入拡大のきっかけとした。取引量の拡大は実体経済の規模の拡大をけん引した。大きな貿易なくして、世界経済の規模の持続的な増大はない。 

ジェトロによると、中日の貿易額は21年に3914億だった。昨年の中国の貿易関連のデータはまだ発表されていないが、昨年の通年の貿易状況によると、中国の重要な貿易パートナーは東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州連合(EU)、米国、韓国と続き、日本は第5位だ。輸入博を開催し、中国は輸入を拡大しており、日本は「一帯一路」参加をいまだ明確にしていないが、中国は日本からの輸入の拡大を望んでいる。 

現在の各種データによると、中国の貿易総額は6兆余りで、そのうち1兆以上は空輸で、残り5兆は基本的に海上輸送だが、今後の伸び幅は鉄道に大きく依存することになる。 

昨年の中国欧州間の鉄道輸送による貿易額は1500億で、中欧貿易全体6000億の4分の1を占めていた。10年後に鉄道輸送が倍増するとすれば、それによる中欧貿易額は3000億になるだろう。 

中国は現在、アジアの南に向かって鉄道を延ばしている。主にベトナムとラオス、ミャンマー経由の3本の鉄道だ。この3路線は、理論的には開通したら少なくとも年間コンテナ1万個分の貨物を輸送できる。3路線なら3万個で約3000億の貿易量だ。 

改革開放から40年余り、中国が、もし沿海都市の工業化と、世界の経済大循環の参加によって急速な発展を得たとすれば、今後は鉄道や道路によってもう一つの発展のチャンスを探し求めるだろう。中国の発展はやり方にまだ変化は起きていないが、海運に依存すると同時に、鉄道道路の役割の転換が強化されている。 

  

中日貿易増も日本シェア減 

中日貿易は10年に3000億を突破して以来、21年は4000億近くに達しており、発展の速度は決して遅くない。だが、中国の貿易総量に比べ、日本は中国の最大の貿易パートナーから次第に後退し、昨年になって第5位に転落した。 

筆者が中国で読む日本の報道には限りがあるが、目にする報道の中には相変わらず中国崩壊論や中国脅威論に関連する記事が多く、こうしたメディアによって形成される世論は中日貿易を阻害する大きな要因となっている。中国が対外開放拡大を継続し、とりわけ市場開放を継続する状況下で、中日貿易を中韓貿易のレベルに近づけさせることができれば、金額的に韓国を再び上回る。これが目下、中日の経済界が関心を持っている課題の一つであろう。 

今年を展望すると、中日貿易は両国経済界の共同の努力によって着実に4000億規模に飛躍し、経済交流が絶えず成長する年になるだろう。 

 

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