「双春年」に経済回復の基礎中小都市のオンライン消費が堅調

2023-02-10 17:46:00

陳言=文

22日は2023年の春節(旧正月)だ。 

日本の読者はご存じないかもしれないが、中国では旧暦の23年は「双春年」という縁起の良い年に当たる。1年間に立春が2度やって来るからだ。まず今年2月4日に立春が来て、来年の春節の24年2月10日が来る前に、もう一度2月4日の立春がやって来る。つまり、今年の1月22日から来年2月9日までの旧暦の23年には「立春」が2度あることになる。中国では200年に1度のこのような旧暦の1年を「双春年」という。 

筆者は子どものとき、父母と一緒に河南省の農村に「下放」された。当時は文化大革命の最中だったが「鞭打春牛」の習慣が残っていた。村人が紙とのりで牛を作り、中にトウモロコシやアワを詰め、この紙の牛をでたたくと、中から穀物が飛び出し、豊作の祈願となる。旧暦23年はこの伝統行事も2度行われるので、中国経済も低調から好調に向かうのではないだろうか。 

中国社会全体がそうなるに違いない。 

  

IMF「中国は比較的好調」 

20年以降の世界経済は、まず新型コロナウイルス感染症の影響を受け、続いて22年にはロシアとウクライナの衝突が勃発し、エネルギー、食糧供給が不安定化し、欧州、米国にインフレをもたらした。衝突前には、米国の対中デカップリング(切り離し)政策、日本の対中ハイテク提携を制限する経済安保政策、中国を「未曽有の重大な戦略的挑戦」と見なすことが、世界情勢の不確実性を高めた。 

国際通貨基金(IMF)は23年の世界経済の成長率を2・7%、つまり21年の6・0%の半分にも満たないと予測している。その中で米国は21年の5・7%から23年には1・0%に下落し、欧州の状況も米国と基本的に似たり寄ったりで、5・2%から0・5%に下落すると見ている。米国、欧州を問わず世界経済の大衰退はIMF予測の主要な結論だ。 

これに比べると中国の状況はかなり良いと言える。中国は21年の8・1%から23年には4・4%に下落すると予測されているが、米国の1・0%、欧州の0・5%に比べて高い。アジアの新興市場および途上国の状況もかなり好調で、成長率は21年の7・2%から4・9%に低下すると見込まれるが、欧米諸国よりはるかに高い。 

中国経済はなぜ米日欧に比べて好調なのか?まず、コロナ下1、2年目の対策が有効で、経済発展が維持されたことが挙げられる。 

次に、コロナ下でも、中国の大部分の都市でeコマースが維持され、消費が完全に沈黙することはなかった。また中国は国土面積が広大で、地域によってコロナ下の程度に濃淡があり、ある地域の都市の消費が低調でも、その他の多くの地域は影響を受けつつも、消費そのものは堅調が維持され、一部の分野では消費が急速に伸びたことさえあった。 

  

新消費層と新技術の出現 

中国最大のeコマースプラットフォームの一つ、京東商城(JDドットコム)のチーフエコノミスト、沈建光氏は昨年1119日、中国マクロ経済フォーラムで行った講演で、「京東グループの今年のビッグデータが示すところによると、コロナ対策による打撃はあったが、中国のオンライン消費意欲は依然としてこれまでの水準を維持したばかりか、新たな目玉も浮上し始めた」と語った。 

その第一の目玉は健康価値型の消費が広く受け入れられ始めたこと。健康消費、教養消費、情緒消費等の価値型の消費の伸びが特に速い。第二は新技術、新製品の消費が急速に伸びたこと。新技術、新デザイン、新体験型の新製品の消費規模、伸び率が絶えず右肩上がりだ。例えば、掃除ロボット、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)眼鏡、人工知能(AI)製品などの伸びが非常に速い。コロナ対策による長期のステイホームとの関連で、縄跳び、ダンベルなどの家庭用健康器具の消費の伸びも速かった。 

第三は都市周辺や農村地域の消費が急速に伸びたことだ。昨年上半期のこれら地域の消費の伸びは大規模な1、2、3線都市よりもはるかに速く、中には中小規模の4、5線都市よりも急速なところもあった。総体的に見て、都市周辺、農村地域の消費の伸びが最も急速であり、これに中小規模の都市が続き、3番目に大都会の1線都市、最後に2線都市が続いた。 

ドイツ紙『フランクフルト・アルゲマイネ』のウエブサイトは昨年12月8日、「中国は自国に『ロボット帝国』を作り出そうとしている」という見出しを付けた記事を配信し、中国の工業用ロボットの応用水準を高く評価した。記事には「国際ロボット連合会が先に発表したレポートによると、中国は従業員1万人当たり322台のロボットを擁し、世界最大の経済大国である米国は274台で、ロボット密度では明らかに中国を下回っている」と書かれていた。21年の中国の工業ロボット販売量は世界のその他の地域の総和とほぼ同じだった。 

コロナ下でも中国の消費、産業技術の進歩は止まらず、この変化は将来的に経済成長の回復に重要な保障を与える。 

  

地方政府はすでに行動開始 

筆者は22年末に党中央政治局会議が開かれ、23年の経済活動を分析・研究したことに注目している。この重要会議の注目点は以下の三つだ。 

①安定的成長が主要任務。成長の安定、物価の安定、雇用の安定を重点的に強調している。会議では上下各種政策のタイアップ使用、協力態勢構築を強調しており、従って23年は多数の政策が打ち出され、政策効果が比較的大きく作用する年になろう。多数のエコノミストの推測によると、国内総生産(GDP)の成長率目標は5%前後であり、IMF予測の4・4%を大幅に上回っている。 

23年には積極的な財政政策が実施される。財政出動の方向はインフラ整備、大規模税還付から消費の全面的な促進、産業イノベーションへの投資に変わる。 

③不動産業に対するさらなる「緩和」措置。昨年11月以来、すでに不動産融資を全面的に支持する一連の政策が打ち出されており、財政出動と相まって、23年の不動産業界は内需市場と国民経済の「バラスト」になるだろう。 

新政策の下で、一部地方では直ちに行動を起こすに違いない。昨年12月上旬、浙江省政府は「千団万企市場開拓・受注獲得行動」を発動し、企業1万社を組織し、全世界に購買チームを派遣し、しかも「チャーター機」を飛ばした。これに続いて、蘇州、無錫、深圳、四川などでも「受注チャーター機」派遣のニュースが飛び交い、まさに「星火燎原(星の光のように小さな火でも燃え広がると原野を焼き尽くす)」の勢いだった。実際にはこれらの都市はコロナ対策が緩和される前に、次々に行動を起こしていた。日本は当然、中国の地方都市が特に重視していたターゲットだった。 

「双春年」の今年中には、新たな消費形式、新技術が大量に導入され、加えて新政策が打ち出され、中国経済が高速軌道を走るための良好な基礎が固められるだろう。 


現在、VRなどの新製品が中国の若者の間で人気を集めている。写真は、江西省南昌市で開催された2022世界VR産業・メタバース博覧会で、VR製品を体験している女性(vcg)

 

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