中日の製造業で「共創」を 新しい価値創造で成長促進

2023-05-16 16:47:00

陳言=文

国人の戸籍で重要なのは「本籍」が記載されていることだ。筆者の理解では、父か母の出生地が明記されていなければならない。筆者はこれまで一度も父の出生地上海市崇明区に行ったことはないが、本籍地にはずっと崇明と書いてきた。 

最近、その崇明を訪れる機会があり、せっかくなので父が生まれた古い家を見てきた。その家は築300~400年の古い建物だが、度重なる開発の影響で庭の大部分は道路へと変わり、残った部屋も少なかった。昔の家には家具を置く場所はあまりなく、何とか生活を成り立たせるだけの場所だったことが分かった。 

父がほぼ百年の人生で買いそろえた重要な生活用具には、祖父母と比べてラジオや自転車などの機械製品があった。しかし、筆者は父親と比べ、生活家電一式だけでなく、自動車も買い、数でも内容でも何倍にもなっている。3世代の生活用品を比べると、中国がここ数十年で激変したことが分かる。 

前の2世代が暮らした古い家を見て、中国人のライフスタイルに変化が起きた理由を考えると、中国の製造業に大きな進歩が現われたと感じる。中国の製造業は今も変化の中にあり、これからもどのような形で変化を続けていくか。その中でも日本企業との関係が特に注目される。 


中国国内の港で船積みを待つ輸出向けの自動車(vcg)

人口増と工業化で経済急成長 

個々の家庭が保有する物資的な状況は、社会全体の富の生産能力と密接に関連している。 

中国人1人当たりの国内総生産(GDP)は、1978年は385元だった。父の世代では、数年お金を貯めて自転車を1台買うというのは、かなり大変だったと思う。2022年には中国人1人当たりのGDPは8万5698元に上昇しており、大都市の一般家庭でも、自転車の百倍以上する普通車を購入できるようになっている。 

1人当たりGDPの変化は、国の富の生産能力が変化した結果でもある。1978年~2022年に中国人1人当たりのGDPは222倍増え、同時期の国のGDPは3700億元から327倍の121兆200億元に増加した。これには中国の人口増加の要因がある(1978年の9億6200万人から2022年には14億1200万人に増加)。一方で余剰人口は4億人近くあり、総人口3億3200万人の米国より多い。あふれた人口は労働力であり、市場の強さの源泉でもある。人口増加、工業化がもたらしたのは中国経済の急速な成長だった。 

われわれの祖父の世代は、両手を使った労働により生活物資と引き換え、父の時代にはある程度は機械を使っていたが、やはり木製の機械が中心だった。崇明博物館で、父の世代が使った昔ながらの木製の紡績機や紡織機などを見ることができた。1978年以降、加速した工業化によって中国社会は木製機械の時代に完全に別れを告げた。機械化は次第に家事労働に取って代わり、自転車やオートバイ、自動車は人力車、馬車に完全に取って代わった。崇明の田舎では、農村の住民は皆バイクで村々を行き来し、遠くまで歩いて出掛ける人はほとんど見掛けなかった。 

中国の工業化の技術、資金の多くは国外からもたらされた。崇明島から長江をはさんで見える宝山には、日本から技術を導入して建設された宝山製鉄所がある。上海には数万社に及ぶ外国企業がある。海外の技術と資金がなければ、今日の中国の経済発展はあり得なかった。 

国内に経済成長の条件が備わり、加えて外部から導入した技術、資金によって、中国は過去40年余りの間に徹底的に変化した。 

デカップリング政策の影響 

崇明港で数え切れないほどの輸送船が長江に浮かんでいるのを見て、貿易の拡大は工業化がもたらした必然的な結果だったと感じた。円滑な貿易は、工業化の成果を実現する重要な手段であり、国内貿易だけで持続的な経済成長を維持している国は見当たらない。 

かつては戦争が貿易を遮断する主な原因だったが、ここ数年、一部の国々の中国との切り離し(デカップリング)政策、自国の経済安全保障を強調する経済安保政策が貿易と経済の往来を遮断する主な原因になっている。現在、デカップリング、経済安保は主にハイテク分野に集中しているが、今後の国際貿易全体に影響するのかどうか、貿易が絶え間ない拡大から徐々に縮小していくのかどうかは、今しばらく見守っていかなければならない。 

世界に既存のサプライチェーン以外に新たな地域的なサプライチェーンが構築され、効果的だった国際産業分業メカニズムに別れを告げた後、世界経済には全体的に明らかな収縮状況が現れている。これは、まず金融分野において一部の国で大きな混乱という形で起きており、技術革新も停滞の様相を呈している。地域化あるいは分断されたサプライチェーンがどのような形で進化していくか、次第に関心を集めつつある。 

変わる中国での「地産地消」 

日本の製造業企業は中国に投資し、中国を重要な生産拠点と位置付け、中国での生産を通じて世界に商品を販売している。また、中国での生産を通じ中国市場で関連製品を消費する「地産地消」も、中国が製造大国になって以降、変化が起きつつある。 

中国市場における販売方法の変化は、例えば、電子商取引(eコマース)など日本や欧米諸国の企業が熟知している流通モデルとはすでに大きな違いがある。市場の変化、経済政策の新エネルギーへの傾斜、これらの製品に対する新たな需要は、電気自動車(EV)など新エネルギー車の普及速度を急速に高めている。日本企業も、まだよく知らない新市場に対応する必要性がますます高まっており、中国企業とのより深い提携が求められる。また、中国企業と共同で市場のニーズに対応し、自国市場以外の全く新しい市場システムを構築する必要がある。 

中国企業との「共創」(コクリエーション)は、多くの日本企業トップの間で重視され始めている。イノベーションを開放し、中国企業を自らの実験室に招き、製品や技術的な問題を共同で検討したり、中国向けの製品を開発したりすることなどが多くの日本企業で盛んになってきている。 

このような製造業大国の間でのコクリエーションは、中国製造業の持続的な成長や、外国企業が中国で持続可能な収益能力を持つための保障を提供できる。 

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