変わるものと変わらないもの 2024年の経済関係を考える
文=陳言
新型コロナウイルス感染症の流行が過ぎ、人々は中日経済関係が両国の対外経済関係のうちで依然として重要な位置にあることに気付いたが、日本の経済安保政策がそれに深刻な影響を与えるようになった。言い換えれば、経済安保はある程度、1972年の中日国交正常化と78年の中日平和友好条約締結の際に規定された中日経済関係を変えているということだ。
協力・交流は依然として中日経済関係の「主旋律」だが、経済安保の介入によって、日本のハイテクあるいは日本が定義したハイテクは今後中国に持っていくことができなくなった。以前、先端科学研究、重要生産分野での中日交流は基本的にスムーズだったが、現在は政治的要素の影響を非常に受けやすくなっている。
日本が経済安保政策を実施した後、必然的に中国はまた自力更生(国内産業チェーンの強靭化)の道を進まなければならなくなった。中国の科学研究の速度、成果、生産規模などはすでに日本を大きく超えているが、日本側の新政策に対して、中国が開放的な態度で対応するのか、それとも日本と同じやり方を取り、同様に経済安保の方法で日本との交流を制限するのか、目下なお不明瞭である。もし中日が互いに経済安保によって相手国に対応するなら、両国の経済交流は必然的に縮小し、貿易量と貿易額は減少し、かつて順風満帆だった中日経済関係にはさまざまな食い違いが起こるだろう。それを考えると残念に思う。
2024年は隔たりを超え、中日経済関係を再構築する一年になるべきだ。
日本への変わらない期待
コロナ後、昨年は相当多くの中国の地方政府訪日団や企業家代表団が日本を訪問した。中国社会の日本に対する期待がここから垣間見える。
中日には共通するカーボンピークアウトとカーボンニュートラルの目標がある。日本は省エネ・環境保護の先進国家で、水素エネルギーの研究開発においても機先を制しており、日本の既存の技術は有償で中国に譲渡することができる。そして中国の巨大な市場ニーズによって、譲渡された技術は世界でより幅広く使われるようになる。
日本は少子高齢化の先進国、あるいは最も早く少子高齢化の問題に直面し、最も早く対策を取り、相当多くの経験と教訓を有している国だといえる。福祉体制の相違により、中日両国が高齢化問題に対して取る対応の方法は同じではないかもしれないが、問題解決の考え方には共通性があるはずだ。高齢者用品の開発、薬品の研究・生産、ケア方法など、さまざまな面において、中日交流には意義とニーズがあり、中国は日本企業との協力に非常に期待している。
より期待されているのは、日本には社会の各種ニーズを満たせる膨大な数の商品があり、これらの製品を開発する技術と市場マーケティング能力があることだ。中国が消費ニーズを引き上げる必要があるとき、日本から関連製品を導入することは疑いなく経済上の早道の一つであり、中国企業も日本企業と協力したいと願っている。
日本の観光やグルメは依然として中国で評判が良く、日本に旅行することは今日の中国人消費者にとっても大きな魅力がある。
中国のちまたでは、中国に関係する物事は何でも反対する一部の日本の世論について言及したり、東京電力福島第一原子力発電所で起きた深刻な事故について話したりもするが、日本の問題を全面的に見て、冷静に分析する態度は変わっておらず、経済における日本への期待にもこれまでの状況を覆すような変化は起きていない。
経済安保がハイテク交流を遮断
今年は日本が経済安保政策を全面的に実施する一年になる。筆者が中国国内で見た日本の報道によると、経済安保はほぼ中国だけを対象につくられた政策で、ハイテク、特に半導体、電池、先端医療、サプライチェーンにおいて中国との関係を断ち切るというのがその重要な内容だ。
ハイテクは企業あるいは国家が高収益獲得を維持する手段で、ハイテクの対外交流を断ち切れば自然と高収益を放棄することになり、対外貿易額が減少する。おそらく中には、短期間利益の一部を放棄し、長期的な技術的優位性を手に入れることを主張する人もいるだろう。しかし、もし外部の研究開発の速度、生産規模、市場規模が自分を大きく超えていたら、外部との関係を断ち切ることによって最終的にどんな効果が得られるかは、言わずもがなだろう。
ローテク製品を使う、あるいは一般の消費財を通して他国で市場を開拓することに、どれほどの実行可能性があるのか? 国が違えば、結果もおそらく違うだろう。日本ではローテクや一般の消費財とされる製品でも、中国に持ってくれば、まだ関連する製品がないため、一定の市場を開拓できる。だがその製品の優位な競争力を長く維持するのは困難だ。ローテクや一般の消費財を使って対外貿易を拡大する、特に対中貿易を拡大することは非常に難しい。中日貿易は19年以降ずっと収縮状態にあり(21年は新型コロナの影響で比較的特殊な一年だった)、22年に比較的大きく縮小した後、23年の縮小速度はさらにひどくなったようだ。縮小の原因は多いが、ハイテク分野の中日交流の減少が縮小加速の主因の一つだろう。
交流の新たな道――協創
昨年11月に開かれた中国国際輸入博覧会(輸入博)で、筆者が接した日本企業のうち、中国企業や他国企業と中国で「協創」するという構想を提起したところは少なくなかった。
日立(中国)有限公司は輸入博で中国企業と十数件の協力協定を締結した。中国企業との協創を通じて、エネルギーのグリーン化・低炭素化へのモデルチェンジ、産業のデジタル化、強靭化方面の業務を共同で加速させ、医療健康分野の協力を通じて共に幸福を実現していく。旭化成(中国)投資有限公司の出展内容は、新エネルギー車との関連が多く、同社は自社技術の展示を通して、中国企業との協創の新たな道を模索している。
過去数十年間において、中国経済の発展は日本から導入した技術や資本と大きく関係しており、現在すでに、単純な導入から、導入、協創、双方向投資などの多方面に変化し始めている。中日経済交流に変化は起きないだろうが、日本の経済安保政策の影響を受けたり、中国経済自体に規模や研究開発速度などの面で変化が起きたりしている中、この種の交流は今年、協創を通じて推進される必要がある。協創などの新たな変化には、政治的要因により狭まった中日経済交流を引き続き維持していく助けとなることが期待できる。中日関係における「変わるものと変わらないもの」について、今年は上記のような特徴が現れることになるかもしれない。
陳言(Chen Yan)
日本企業(中国)研究院執行院長。1960年生まれ、1982年南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書多数。現在は中国外文局アジア太平洋広報センター副総編集長。