EV技術革新に新たな競争 中日が直面する課題
昨年末までに、寧波市舟山港の取り扱い貨物量は15年連続で世界一となった。今年も中国の輸出増の勢いは衰えを見せず、同港の世界一の地位は揺るがない見込みだ。電気自動車(EV)を含む貨物貿易の大幅な増加に伴い、寧波市の経済力はさらに強まっており、市場の面から見ても寧波市における地方経済の消費はかなり旺盛だ。
温州市は隣接する福建省寧徳市と深く結びついている。電池の開発と生産で有名な寧徳市には、中国ひいては世界最大の電池メーカー・寧徳時代新能源科技股份有限公司(CATL)がある。温州市では電池産業のみならずEVに関連するほぼすべての部品やモジュール関連の産業も存在する。温州市の1000万人近くの人口のうち、海外で暮らす人々はここ数年で30万人に達しており、彼らは最新の企業経営モデルや技術製品を温州市に持ち帰り、同地に非常に大きな変化をもたらしている。
現在、中日の自動車メーカーはいずれも産業のモデルチェンジに直面し、技術のアップグレード、製品の革新、市場の開拓はますます重要になっている。温州市など浙江省一帯は元来、軽工業を主としてきたが、現在ではEV部品の重要な供給拠点となっており、中国の自動車産業の大きな発展を絶えず後押ししている。
中国メーカーの高いイノベーション力
同じく6月、筆者は次のような情報に接した。
ドイツ最大の経済紙『ハンデルスブラット』のインターネット版が6月26日に報じたところによると、ドイツの著名な業界専門家であるシュテファン・ブラッツェル氏によって設立された自動車管理センター(CAM)が発表したイノベーションランキングで、初めて中国の自動車メーカー(吉利・上汽・小鵬・比亜迪・広汽)が5社ランクインし、世界で十指に入るイノベーション力を持つ自動車メーカーに選ばれた。
このニュースは中国のメーカーが多方面で優位性を示していることの表れだ。『ハンデルスブラット』は、中国のメーカーはEVや自動運転、車載ECUの可用性などの分野で非常に大きなイノベーション力を示していると報じている。CAMの調査結果によると、中国の自動車メーカーは現在の世界におけるイノベーション力の46%を占め、19年の21%を大きく上回り、過去最高を記録した。それに対し、ドイツの自動車メーカーの同時期におけるイノベーション力は19年の45%から現在の23%へと落ち込んだ。
日本の状況については、同報道には詳しいデータは見られない。『ハンデルスブラット』によると、中国が46%、ドイツが23%だとすると、残りの31%は日本や米国、欧州諸国、その他の国々の企業で、日本企業が20%を占めるかどうかは微妙だという。
中国販売が縮小する日系メーカー
2000年前後から日本の自動車メーカーは対中投資と中国での工場建設を盛んに行い、中国における市場シェアを絶えず拡大させてきたが、それから20年余りが過ぎ、このような成長は困難に直面し始めた。
中国の自動車市場の重点がガソリン車からEVへと向かい始めた頃、日系メーカーは新たなチャンスをとらえず、EVのあらゆる分野で技術開発の優位性、既存のEV製品および関連部品を有していながら、国内で大規模なEVへの投資を行わなかった。また、中国市場へのEV製品の投入で時期を逸し、投入車種でも遅れをとった。日本はEVに関し、向上のための努力を自ら放棄したのである。日系メーカーがEVを軽んじる傾向は、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHV)が大きな収益を上げているここ数年の間は引き続き変わらない可能性が高い。
中国の自動車市場で人々が目にしているのは、日系メーカーの度重なる敗北だ。昨年10月、三菱自動車は中国での現地生産の終了を発表した。三菱自動車は1980年代、90年代に中国市場を席巻したが、2000年前後に中国投資を本格的には行わず、10年以降に対中投資を増やしたものの、時すでに遅かった。
今年5月から広汽本田は大規模なリストラを始めた。その主な原因は販売台数の落ち込みが招いた生産不振にある。自動車業界のスマート化とEV化へのモデルチェンジの加速に伴い、広汽本田は近年一貫して販売台数が右肩下がりとなっている。今年5月の販売台数は前年同期比で41・31%減少し、今年1〜5月の累計販売台数は前年同期比で24・3%の落ち込みとなった。
日産自動車は今年6月、江蘇省常州市の製造工場を閉鎖すると公式にアナウンスを行った。同工場は20年の操業開始以来、4年にわたり不振が続いていた。常州工場の主な生産車種はSUVの「キャシュカイ」で、これは同ブランド傘下の三大売れ筋モデルの一つだ。データによると、今年1〜5月の日産自動車の中国における乗用車、車両総重量3・5㌧未満のトラックを含む累計販売台数は28万6445台で、前年同期比で1%減少した。東風日産は中国の自動車業界団体・全国乗用車市場情報連合会(CPCA)が発表する乗用車小売販売台数ランキングでたびたび上位10社から外れている。だが、2018年には日産の中国における通年の販売台数は156万4000台で、トヨタ中国やホンダ中国を上回った。
中国市場では純EVが日増しに普及しており、価格競争も熾烈で、純EV車種が比較的少ない日系自動車メーカーは販売面で非常に大きな試練に直面している。
日産中国マネジメントコミッティ議長兼東風汽車有限公司総裁の山崎庄平氏は、「中国の新エネルギー車の市場浸透率は50%を突破しており、市場と消費者のニーズの急速な変化によりしっかりと適応するため、日産自動車は中国市場でスマート化とEV化へのモデルチェンジを加速させています」と語った。
日系メーカーのシェア回復は可能か?
三菱自動車の撤退、ホンダのリストラ、日産の常州工場閉鎖に象徴されるように、苦境が続く日系企業が直面している最大の問題は中国市場に適した製品が少なく、自動車産業のアップグレードと製品のモデルチェンジの中で目先の利益を重視するあまり、国・地域ごとに現地に合った製品を打ち出し、今後の市場で機先を制する戦略が欠けていたことだ。
日産自動車がこのたび常州工場を閉鎖したのは、グローバルな範囲でのリソース配置を最適化し、EV・スマートモビリティ技術の発展に力を集中させる取り組みの一環かもしれない。計画によると、日産自動車は26年度までに新たに30車種を打ち出し、そのうち16車種はEVとし、30年までにEVのコストをガソリン車と同等にする予定だ。
だが、2年後の日系メーカーのEV技術がガソリン車のように優位な地位を占められるかどうかは未知数で、今後の注目点と言える。