2029年の中国と世界 三中全会公報から見えてくること

2024-09-19 13:40:00

029年、すなわち5年後の国際社会はどのようなものとなるだろうか? 

そのとき、米国経済の国際社会における地位はさらに弱まっているかもしれない。2003年に世界の2926%を占めていた米国の国内総生産(GDP)が23年には2595%にまで減少した過去20年の経験から見て、これは大いに予測し得る未来だ。その他の国、例えば日本経済や韓国経済が29年までにどうなるか、どの政府文書を見れば今後数年間の両国の経済発展に関する計画をおおむね理解できるのかということについて筆者は日本と韓国の専門家に尋ねたが、はっきりとした答えは得られなかった。 

今年7月15日から18日にかけて、中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が開催された。中国人はこれまでの経験から、この会議が中国の経済発展において果たす役割を十分に理解している。それはきっと中国研究の海外専門家も同じだろうが、海外のメディアによる三中全会の報道を見ると、デカップリングやサプライチェーンの断絶、経済安全保障など、新たなイデオロギー対立の下で中国経済の暗い見通しを伝えるものばかりで、全く的外れであると中国人は感じてしまう。このような報道から海外の読者が中国の未来や中国経済の持続的発展、中国経済が世界経済を改善する上で果たす役割を読み解くことはできない。 

経済成長に必要な生産力の向上 

46年前の1978年121822日、中国共産党第11期三中全会が北京で開催され、この年から中国は改革開放の道を歩み始めた。海外から企業と資本を誘致し、中国社会の技術進歩をもたらしたことで、中国の国民経済にドラスティックな変化が生まれた。同年における中国のGDPは3700億元、一人当たりGDPは400元に過ぎなかったが、2023年にはそれぞれ126兆600億元(340倍)、8万9400元(223倍)となった。 

海外からの企業と資本の誘致が社会に技術革命をもたらし、この発展モデルによって中国は改革開放を絶えず深化させてきた。現在の中国経済の規模は十分に大きく、それに伴って国内の研究開発や技術のアップグレードもますます重要性を増している。新たな発展段階において、第20期三中全会のコミュニケは「新たな質の生産力」に2度言及している。この新たなコンセプトは日本や米国、欧州諸国が認識する生産力とは異なり、それが社会の発展において発揮する役割も同じではない。日本などの海外メディアは既存の経済安全保障や中国とのデカップリングサプライチェーン断絶というイデオロギー的観点から「新たな質の生産力」を分析しているため、日本の人々はこのコンセプトを理解しにくくなり、中国の人々とおおむね相通じる結論を導き出すこともできないだろう。 

中国の人々の理解では、「新たな質の生産力」は国民全体の教育水準を高め、科学技術の研究開発を大々的に推し進め、人材育成を十分に行う中、従来型産業のモデルチェンジとアップグレードを成し遂げ、戦略的な新興産業の発展のスピードを加速させ、未来産業の発展のためにしっかりとした基礎を打ち立てるものだ。 

ここで言う従来型産業のアップグレードとは、主に従来型産業のハイエンド化、スマート化、グリーン化というモデルチェンジの推進のことを指している。現在、中国は戦略的な新興産業の向上に大いに力を注いでおり、その中には主に次世代情報技術、新エネルギー、ニューマテリアル、半導体などのハイエンド設備、電気自動車(EV)をメインとする新エネルギー車などが含まれる。海外の読者は中国のグリーン環境保全、船舶および海洋プロジェクト設備、バイオ製造、低空経済(民間有人航空機無人機を使った低空域飛行活動で関連分野の融合発展をもたらす総合的経済業態)などの実情もあまり理解していないかもしれないが、実際にはこれらの分野における中国の技術や製品の多くは世界の最先端を行っている。また、未来産業は主にメタバース、ブレインマシンインターフェース、量子コンピューター、ロボット、汎用人工知能(AI)、アドバンストディスプレー、新世代ネットワーク、新型エネルギー貯蔵などを指し、それらの多くの分野でも中国は世界をリードしている。 

新たな質の生産力は中国が中国の特色ある工業の現代化の道を歩む上での新たなコンセプトであり、西側の既存の経済発展の歴史やモデルを当てはめたところで、この新たなコンセプトが経済成長において果たす役割を想像するのは困難だ。メディアで疑念を呈するのは簡単だが、忘れてはならないのは、中国はこの新たなコンセプトを活用して今後数年、さらにはより長きにわたって経済発展を維持し、加速させるということだ。新たな質の生産力の効果は最終的に、中国と海外の経済発展のスピードと規模、そして人々の生活の質の向上の比較によって明らかになることだろう。 

2029年と2035年の中国経済 

20期三中全会は新たな質の生産力を後押しとして35年までに実現すべき発展目標を定めた。まず、29年の中華人民共和国成立80周年までに、今回の三中全会で発表された「改革をいっそう全面的に深化させ中国式現代化を推進することに関する中共中央の決定」が提起した改革の任務を達成する。続いて35年までにハイレベルの社会主義市場経済体制を全面的に完成させる。 

このような計画は、中国が「中所得国のわな」を乗り越え、一人当たり国民所得で長期的に1万2000以上をキープするためのものだ。過去、ラテンアメリカのメキシコやブラジル、アルゼンチン、東南アジアのフィリピンなどの国々が天然資源や人口といったそれぞれの優位性をよりどころとして急速な経済発展を遂げ、一人当たりの所得も一定の水準に達したが、その後長く同水準にとどまり、発展を持続できなかった。その大きな要因の一つとして、これらの国々では自国の経済状況に適した生産力の向上という新たな発展コンセプトが提起されなかったことが挙げられる。 

新たな質の生産力のコンセプトを掲げ、従来型産業におけるモデルチェンジとアップグレードを実現し、戦略的な新興産業と未来産業で優位を占めているからこそ、中国経済の持続的発展は保たれる。中国では関連する計画が打ち出されると、必ずや具体的に実行に移される。このような過去46年間にわたる中国の歩みは、今後も変わることがない。 

イデオロギー思考で中国を見誤る西側 

デカップリングやサプライチェーンの断絶、経済安全保障ばかりを強調する一部の海外メディアは、中国のEVや電池、太陽光発電といったハイテク産業も過剰生産であると見ている。あまりにも多くの海外メディアがイデオロギー的観点により新たな質の生産力への評価を見誤っているが、それが中国の発展の歩みを止めることは決してない。 

いずれ29年が訪れ、中国と海外の具体的なデータが出そろい、どの国が発展し、どの国が停滞しているのかが明らかになる。そのときこそ、われわれは今日の視点から1978年の第11期三中全会と改革開放を見るように、今回の三中全会と新たな質の生産力を再び評価することになるだろう。 

 

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