より積極的な今年の経済政策 世界で際立つ安定と確実性

2025-02-25 09:30:00

国人にとって春節(旧正月、今年は1月29日)こそが新たな年の始まりだ。 

宋代の詩人王安石の詩の一節である「爆竹声中一歳除 春風送暖入屠蘇」(爆竹声中一歳を除し、春風暖を送りて屠蘇(とそ)に入る)とは、まさしく春節のことを詠んでいる。年が明け、暖かな春風がそよそよと吹く中、人々はお屠蘇を飲んで新年を迎える。もっとも、時代の発展に伴い、現代人の年越しスタイルはますます多様化している。昨年、春節がユネスコ無形文化遺産に登録された後、泉州、潮州、汕頭などの地方都市は観光地として改めて注目され、多くの観光客が春節連休を利用してそれらの都市を訪れ、現地に満ちあふれる春節ムードを楽しんだ。 

春節期間中に消費は活況を呈し、今年の中国の国内消費は好スタートを切るだろう。過去数年間、新型コロナウイルス感染症や「デカップリングサプライチェーン断絶」、高額関税などにより国際経済が発展から縮小に向かう中、中国経済は世界の平均水準よりも高い成長率を保ってきた。2025年、中国の特色あるより積極的な経済政策は中国経済を引き続き成長させ、日系企業に中国での新たなチャンスをもたらすだろう。 

最大の課題を集中的に解決 

ここ数年、中国各地を巡っていて顕著に感じるのは、都市の様相と交通インフラに極めて大きな変化が生じており、とりわけ中小都市の変化が著しいということだ。市内に高層建築物が増え、都市間を結ぶ高速道路の両側には太陽光発電製品を生産するメガファクトリーがしばしば見られ、高原では無数の風力発電設備が視界に入ってくる。 

だが、不動産や新エネルギー関連設備の集中建設により、需給のアンバランス現象が起きている。不動産市場が落ち込み、土地使用権の譲渡による収入が減少し、地方財政が逼迫(ひっぱく)し始めた。また、大量のリソースが新エネルギー関連分野に投じられた後、競争はますます激しいものとなった。ビジネスチャンスが減ったことで若者などの就職難が生じ、消費の低下傾向が見られるようになった。 

根本的な解決を図らず、場当たり的に直接現金を配布して一時的に民意の支持を得るか、それとも国家経済と人々の生活上の重要な問題の解決に政策を集中させるか。中国が選んだのは後者であり、中国と体制の異なる一部の国にとっては、このような選択は難しく、ひいては不可解なものと映るかもしれない。 

昨年11月、中国は特別債の発行などによる10兆元の財政政策を打ち出した。これは、今後数年間で不動産および地方債務の問題を解決することを狙いとする施策だ。10兆元とは日本円換算でおよそ215兆円に相当する。筆者は1990年代、日本に10年間住んでいたが、当時の大蔵省が算出した不良債権の総額を鮮明に記憶している。例えば、93年に大蔵省が公開した日本の金融機関などが抱える不良債権の総額は12兆7000億円で、日本政府による不動産問題解決のための財政支出額はおおむね不良債権の規模と同等だった。多くの日本のメディアは93年以降の30年間を「失われた30年」と呼んでいる。日本が不動産問題の解決で大きな決断を下せなかったことは、世界に非常に大きな教訓を与えた。その点、中国は日本と大きく異なる。 

各方面にわたる積極的施策 

中国は不動産および地方債務の問題の解決に力を集中させるのみならず、昨年121112日に開催した中央経済活動会議で多くのポジティブなシグナルも発した。 

筆者は日本のメディアをそれなりに熟知しているつもりだが、これに関連する詳細な報道は見られなかった。ここで今年の中国経済と合わせていくつかの分析を試みたい。 

今年の経済振興には、枠にとらわれない経済政策が必要であり、中央経済活動会議はこれまでとは異なる非常に積極的な政策を打ち出した。第一に、同会議は「より積極的で有効なマクロ政策の実施」および「カウンターシクリカル(逆周期)調節のこれまでにない強化」を提起した。「これまでにない」という言葉には、この問題の解決に取り組む中国の決意が込められている。政策レベルでのカウンターシクリカル調節の強化における核心はデフレ解消の促進であり、今年から実質的な景気刺激のための政策パッケージが打ち出され、ここ数年の経済スタンスは根底から改められるだろう。 

第二に、金融政策の面では「金融政策の適度な緩和の実施」が打ち出された。筆者は2008年、米国の投資銀行リーマンブラザーズの破綻が引き金となった国際金融危機の報道に携わった。また、09年から10年にかけて中国が金融緩和を実施し、その後十数年にわたり穏健な金融政策をとってきたことを理解している。中国は今年、預金準備率と基準金利を引き下げ、適度に緩和的な金融政策を改めて実施し、マネーサプライを増やし、人民元の対ドルレート変動幅のさらなる拡大を容認すると予測される。 

第三に、財政政策の面では「より積極的な財政政策の実施」が提起された。この点に関して中国の経済評論界は、財政政策の余地が広がり、主な注力点は財政赤字比率の引き上げ、超長期特別国債の増発、地方特別債による資金の支出分野の拡大であると論じている。その具体的な規模は今年3月の全国両会(全国人民代表大会中国人民政治協商会議)でより明確になるだろう。 

第四に、消費政策の面では「力強い消費の下支え」「国内需要の全方位的な拡大」が打ち出された。「消費を大いに活性化し、投資効果を高め、国内需要を全方位的に拡大すること」が今年の重点任務における第一の項目と位置付けられたことから、中国が内需拡大をかつてなく重視していることが見て取れる。 

第五に、産業政策の面では「科学技術の革新による新たな質の生産力のけん引」が提起された。「人工知能(AI)プラス」行動の実施、未来産業の育成、現代化した産業体系の構築、新たな質の生産力の発展のサポート、産業構造のモデルチェンジとアップグレードの促進は、短期的な経済成長に貢献するだけでなく、経済の質の高い発展を後押しし、科学技術の自主コントロールの実現や国際競争力の向上にもつながる。 

第六に、不動産市場と株式市場の面では「不動産市場と株式市場の安定化」が初めて打ち出された。不動産市場と株式市場が「見通しの安定化と活力の喚起」の重要な足掛かりとされるのは、不動産と株式が住民の資産形成にとって重要な要素であり、地方政府の財政力や住民の消費意欲などと密接に関係しているからだ。 

今年の元旦、中国の国内消費は数年来の活況を呈し、春節期間にはさらなる消費の盛り上がりが予測される。より積極的な経済政策の効果はすでに現れている。 

際立つ中国の確実性 

今年の中国の経済成長率は世界平均を上回り、日本や米国なども超えると世界銀行は昨年末に予測している。今後の中国社会政治経済の安定は、国際社会が認めるところとなるだろう。それに対し、米国の高関税政策はインフレや預金利率の変動、社会の分断の激化を招く可能性がある。今年の正月連休中、日本の多くのメディアは1年の見通しを報じる中で、米国などの国の不確実性を主に取り上げた。 

安定と確実性は企業が成長する上で最も適した環境をもたらすものであり、国家の持続的発展の重要な前提条件でもある。 

 

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