AI分野における中米日の違い 世界人工知能大会と長鑫科技上場から見る

2026-09-23 16:55:00

今年7月、人工知能(AI)分野で注目すべき二つの出来事があった。一つは上海で開かれた会議であり、理念とルールづくりに関わるものである。もう一つは資本市場で起きた出来事であり、技術と産業に関わるものである。一見すると別々の出来事のように見えるが、いずれも現在の世界におけるAI競争の構図を鮮明に映し出すとともに、中国と米国、日本のAI発展の道筋における本質的な違いを浮き彫りにしている。 

ルール形成と資本市場での飛躍 

7月17日から20日にかけて、「2026世界人工知能大会・人工知能グローバルガバナンス・ハイレベル会議」が上海で開催された。今回の大会は「スマートパートナー、共に未来を創る」をテーマに掲げ、展示総面積は初めて10万平方㍍を突破し、1100社以上の企業が出展、3000点を超える展示品が披露された。 

さらに象徴的な出来事として、大会開幕前日の7月16日には、世界人工知能協力機構(WAICO)設立協定の署名式が上海で行われた。中国、カザフスタン、ラオス、パキスタン、ロシア、インドネシアなど29カ国の代表が協定に署名し、創設加盟国となった。 

協定では、WAICOを独立した政府間国際組織と位置付け、国連憲章の理念に従い、「共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う」という理念を掲げ、本部を中国・上海に置くことが明記された。これはAI分野では世界初の政府間国際組織であり、創設加盟国は4大陸にまたがり、その主体はグローバルサウスで構成されている。この組織の設立は、中国がAIのグローバルガバナンスの制度化を推進する上で、実質的な一歩を踏み出したことを意味する。 

一方、資本市場でももう一つの重要な出来事があった。7月27日、中国のDRAMメモリー大手である長鑫科技(CXMT)が上海証券取引所の科創板(STAR市場)に上場した。公開価格は1株8・66元、調達額は約579億元に達し、A株科創板史上最大規模のIPOとなった。上場初日の終値は49元と公開価格の約5・7倍に達し、時価総額は約3兆2700億元(約76兆円)となった。長鑫科技は現在、韓国のサムスン電子、SKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジーに次ぐ世界第4位のDRAMメーカーである。 

長鑫科技の上場が重要視されるのは、巨額の資金調達を実現したことだけが理由ではない。より重要なのは、米国による重層的な半導体規制の下にあっても、中国が依然として重要技術分野で突破口を開いたことを示した点にある。DRAMはAIの計算能力を支える中核部品であり、長鑫科技は今回調達した資金を生産能力の拡大と先端技術の研究開発に投じる計画である。これは、米国による半導体封鎖に対する最も直接的な回答と言えよう。 

この二つの出来事を併せて見ると、中国は一方でルール形成の面では開かれた国際的な枠組みを構築し、他方で技術面では封鎖を打ち破る突破口を切り開いていることが分かる。両者は表裏一体の関係にあり、中国のAI戦略を象徴する動きとなっている。 

中米――オープンかクローズドか 

AI分野における中米の違いは、もはや単なる技術路線の相違ではなく、全く異なる二つのガバナンス理念の違いとなっている。 

米国の路線は、「クローズドな独占+計算資源(コンピューティングパワー)の積み上げ」と要約できる。OpenAI、Google、Anthropicに代表される米国の主要AI企業の多くは、クローズド、あるいは限定的な公開戦略を採用し、中核となるモデルのパラメーターや学習データを厳重に秘匿している。米国政府も輸出規制を通じて、先端AI技術を「友好国」だけの枠内に囲い込もうとしている。さらに警戒すべきは、米国がAIの兵器化・軍事利用を加速させ、半導体規制と同様の論理をAIにも適用しようとしていることである。高度なAIモデルを希少資源とすることで、各国企業を米国主導のAIエコシステムに依存させようとしているのである。このモデルの根底にあるのは、「勝者総取り」の発想であり、最先端のAIモデルと最大の計算資源を握る者がルールを定義するという考え方である。 

これに対し、中国は別の道を選択している。すなわち、「オープンソースによる幅広い普及」と「応用シーン主導」を進めることである。世界のオープンソースAIモデル上位10モデルのうち、8モデルが中国発である。中国科学技術情報研究所と北京大学が共同で発表した報告によれば、中国の代表的な大規模AIモデルは、計算効率が米国の先進モデルを平均30・4%上回り、主要モデルのToken当たり平均価格は米国製品の約4分の1にすぎない。AIモデルの性能差も、中米間で2・7%まで縮小したという。 

こうした中国のオープンソースモデルは、発展途上国にとって特に恩恵が大きい。計算資源用ハードウエアの不足や専門人材の欠如により、高価なクローズドAIを導入できない新興国でも、中国のオープンソースモデルであれば、米国製モデルの約20%の運用コストで約90%の性能を実現できる。 

WAICOの設立は、この「開放・共有」という理念を制度として具体化したものと言える。西側諸国のG7のように、「価値観を選別した上で協力する」という閉鎖的な枠組みではなく、全ての主権国家に開かれた対等なプラットフォームを目指している。中国はAIを覇権追求の道具とすることや、資源の独占、ルールの支配、排他的な小グループの形成に明確に反対する立場を示している。 

中日――「道具」か「戦略」か 

中米の違いが戦略路線の違いであるとすれば、中国と日本の違いはさらに根本的であり、AIの本質そのものに対する認識の違いにある。 

日本の総務省が7月24日に公表した「令和8年版情報通信白書」によると、昨年の日本における生成AIの利用経験率は58・8%で、前年の約2倍に増加したものの、中国の93・6%、米国の75・6%には依然として及ばない。 

さらに注目すべきは、AIに対する認識の違いである。「生成AIはどのような存在か」という問いに対し、日本では「機械・道具」と回答する割合が最も高く、38・3%だった。一方、中国では「秘書・アシスタント」が44・7%、「友人」が39・9%を占めた。日本でAIを「友人」と捉える人は10・9%にとどまるのに対し、中国では約4割に達している。 

このデータが示しているのは、AIに対する全く異なる世界観である。日本ではAIは効率化のためのツールとして位置付けられているのに対し、中国では社会に深く組み込まれ、人々の生産や生活様式を変える基盤インフラであり、パートナーとして認識されている。この認識の違いは、そのまま投資の方向性にも反映されている。 

日本政府は、国産AI・半導体産業を支援するため、兆円規模の資金投入を計画している。一方で、ソフトバンクグループの孫正義氏ら資本界の大手は米国市場へと目を向け、同氏が主導して米国で展開するAIインフラプロジェクトの計画投資額は5000億㌦に達するとされる。 

製造業融合が生む新たな可能性 

こうした違いはあるものの、AI分野における中日協力には依然として大きな可能性がある。 

中国は世界で最も完成度の高い製造業体系を有し、重点産業におけるAI導入率はすでに80%を超えている。一方、日本は精密製造、産業用ロボット、リーン生産方式の分野で長年にわたる技術蓄積を持ち、ファナックや安川電機などは世界の産業用ロボットを代表する企業である。AIと製造業の融合という点では、両国は本来、高い補完関係にある。 

中国には応用シーン、データ、オープンソースのエコシステムがあり、日本には精密なものづくり、高度な生産技術、そして職人精神がある。中国のAIが掲げるオープンソースによる普及という理念と、日本の製造業が持つ精密性・高効率が結び付けば、その相乗効果は単純な計算資源競争をはるかに上回る可能性を秘めている。 

もちろん、そのためには日本が選択を迫られることになる。資本と技術を引き続き米国へ集中させるのか、それとも中国との協力を通じて、製造業とAIの深い融合という新たな成長分野を切り開くのか。その答えは、現時点ではなお見通せない。 

人民中国インターネット版

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