地域の犯罪率下げた警察官 見回りで住民の意識変える
2021-07-01 14:42:00
咸東社区サービスセンターで同社区の80歳以上の住民の状況を聞き取る汪勇さん
汪勇さんが警察官になれたのはアクシデントとも言えた。
2005年、当時兵士だった汪さんは雪の日に強盗に遭遇した。インターチェンジ高架下で大柄の男たちに呼び止められ、人目に付かない場所に連れてこられた汪さんは、その場から逃げようと彼らに向かって大声で、「動くな!俺が誰だか分かってもまだやる気か!」と言いながら士官証を取り出そうとポケットに手を伸ばした。すると彼らは汪さんが警察官だと思い込み、ひるんで逃げた。
その頃、間もなく除隊する汪さんは転職先を探しており、もともとは工商行政管理局で働きたかったが、あやうく強盗に遭いそうになった経験から考えを変え、西安市の公安局に入って警察官になった。
熱意で地元に溶け込む
「最初は刑事になりたかったんです。事件解決や犯人逮捕はやりがいがあるし、成果も出やすいですから」。現在、西安市公安局韓森寨派出所の副所長兼咸東社区(コミュニティー)人民警察の汪さんは率直に語った。しかし当時、身長160㌢の汪さんを見た同派出所の前任の所長から、「多分無理だ。刑事になって成果を上げるやつはいるが、お前がなったところで容疑者に逃げられるだけだろう。お前は社区の人民警察の方が向いている」とこともなげに言われたため、汪さんは平凡な社区の防犯警備の仕事に就いた。
汪さんが担当する咸東社区は西安市新城区の農村部と都市部が重なり合う地点にあり、彼が引き継いだ2006年当時は2400世帯以上7000人余りの住民がおり、流動人口が多く犯罪発生率が高かった。当初、汪さんの戸別訪問調査はうまくいかなかった。「住民と会話にならず、家に入れてもらえませんでした。連絡カードを置いていったら、ニセ警官と疑われました」。これは汪さんが社区の仕事を始めた時に実感した最も困難なことだった。
住民の邵正山さんは汪さんを初めて見掛けた時のことを今も覚えている。その時、汪さんは困り果てていて、いつも付近の小区(居住地)内の家々のドアを一軒ずつ叩いていたが、彼の相手をする人はまれだった。付近の小区は1960、70年代に建てられた誰でも出入り可能な構造で、防犯カメラも管理会社もなければ守衛もおらず、流動人口の多さも加わり、一時的に治安がひどく悪くなったこともあり、窃盗・強盗事件が相次ぎ、住民たちは大きな不満を持っていたと邵さんは言う。だがすぐに邵さんたちは、汪さんが他の警察官とは違うことに気付いた。彼は毎日各小区を回り、家を一軒ずつ訪問して各家の状況を把握し、何度も門前払いされようとも諦めることなく、果物を持って行って訪問を続けた。住民たちは徐々に汪さんの存在に慣れていった。汪さんの一途な努力と熱意が次第に受け入れられ、住民たちは彼と世間話をするようになった。「話の中で何気なくしゃべった困ったことや問題がそれから一つずつ解決されていきました」と邵さんは振り返る。
住民が自発的に見回りを
ここの治安問題を解決するため、汪さんは業者に頼んで、小区の塀に金網を張ってよじ登りにくくし、街灯を増やした。また、警備員がいる小区では彼らに訓練を与え、警備員がいない小区では毎晩懐中電灯を持って自分で巡回した。「誰かが見て回るのとそうでないのでは大違いです」と汪さん。咸寧社区27号院に住む定年退職教師の陳群燕さんはこう話す。「これまでうちの小区はしょっちゅう泥棒の被害に遭い、当時は防犯カメラもなかったので、侵入窃盗事件が解決することはありませんでした」。その後、汪さんは雨の日も風の日も夜間パトロールし、陳さんにも「見張っているので、安心して寝ててください」と声を掛けた。
汪さんにとって予想外だったのは、パトロールの一区切りをつけた晩に邵さんら十数人のお年寄りが小区の入り口で彼を待っていたことだ。「年なので泥棒を捕まえられないが、追い払うことぐらいなら協力できる」というその時の言葉を、汪さんは何年たった後も覚えている。彼らは、夜眠れず、夜中を過ぎても起きていることがよくあるので、汪さんが毎晩一人でパトロールする姿を以前から見掛けており、みんなで話し合って汪さんと一緒に見回りすることを決めたのだと言った。この夜間パトロール隊はその後、党員と離職休養者・定年退職者計173人が加わった治安パトロール隊になり、犯罪発生率が高い毎晩0時~4時に社区を巡回し、さまざまな事件の発生を効果的に防いでいる。
現在、汪さんが担当する地域の世帯数は2400余りから4800余りに増えたが、毎年数百件あった犯罪発生率は2桁台にまで抑えられ、多くの小区で事件発生ゼロを達成している。咸東社区はこれにより「全国治安総合管理平安社区」と評価された。
「何かあればすぐ駆け付ける」
社区の住民にとって、汪さんは信頼の置ける仲間だ。住民たちからの電話やショートメール、または直接のトラブルの相談も汪さんは一つ一つ心に刻み、午前中にできることは午後に回さず、その日のうちにできることは翌日に延ばさない。急ぎの用事があれば、呼ばれたらすぐに向かった。
ある夏、社区に住む80歳過ぎのお年寄りが一人で昼寝をしていたところ、急に胸が苦しくなり、息子と汪さんにそれぞれ電話した。電話を受けた汪さんは直ちにその家に行き、お年寄りを背負って階段を下り、車を呼び止めて病院に向かい、救急受診の申し込み手続きなどを行った。その息子が病院に到着した時、汪さんは全ての手配を終わらせ、お年寄りも命の危険を脱していた。
咸東社区で汪さんの名前を出すと、住民たちは、「彼はうちの家族だ!」「警察官がやるべきことをやるだけでなく、息子がやるべきこともしてくれた」と心から褒め立てる。社区に昔から住む葉さんはここ数年、毎日咸東社区を駆け巡る汪さんの姿を見ている。葉さんによれば、社区にはお年寄りが多く、一人暮らしや病人が20人以上いる。汪さんはここに来てから毎月1回は彼らの家を訪れ、祝日にはお年寄りにチマキを贈ったりギョーザを作ったりし、普段のパトロール時でも会えば優しく声を掛ける。「足が不便な人、子どもがそばにいない人、体が悪い人を全て覚えていて、重大なことでも些細なことでも電話をすれば絶対に来てくれる。実の息子でもここまでできない」と葉さん。薬物依存症者の薬物断ちから更生後の仕事の紹介、小さなことでは玄関の鍵の交換まで、「何かあればすぐ駆け付ける」とは汪さんが住民にした約束だ。
「住民のことで、知っていて知らないふりはできない」。住民を自分の家族のように思ってこそ、しっかりと役目を果たせる。湖南省の山村出身の汪さんは一人暮らしするのが早かったので、社区でお年寄りの家を訪問して彼らのために働くのは、自身の心の反映でもある。困っている住民がいれば即座に手助けするのである。汪さんにとって、人々に安心感を与えるのが警察官の務めだ。(高原=文 新華社=写真)
咸東社区の職員に新型コロナ予防・抑制に関する注意事項を伝える汪さん(左手前)
防犯対策室で業務記録台帳をめくる汪さん
社区内にかけられた汪さんの電話番号などが書かれたネームプレート
防火安全検査中に荷物運びを手伝う汪さん
社区の巡回前の準備をする汪さん
人民中国インターネット版 2021年6月30日
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