鉄道旅客に奉仕し続け70年 駅の困りごとに何でも対応

2021-07-07 10:37:51

 

鄭州駅西広場のボランティアサービスステーションで旅客の質問に答える左春秀さん 

「おばあちゃん、ここでスマホ(スマートフォン)の充電できます?」

「おばあちゃん、81番のバス停はどこ?」

真夏、河南省の鄭州駅西広場にある赤い外観の案内所で、一人のお年寄りが次々やって来る旅行者に対応し、スマホの充電ケーブルを挿したり地図を書いたメモを渡したりしている。左春秀さん(88)は鄭州駅で案内活動に携わって70年になり、中国共産党に入党して70年の古参党員でもある。

高齢者のボランティアチーム

左さんは1933年3月に河北省滄州市に生まれた。両親共に中国共産党員で、彼女も49年に入党した。左さんが中国鉄路鄭州局集団の鄭州駅に勤め始めたのが50年のことで、そこから39年間働いた。この間、彼女は駅の仕事をほぼ全て経験し、70年代には切符売り場の責任者になった。どんな仕事でも、旅客のために働くことは彼女にとって最も楽しいことだった。

硬券切符を使用していた時代も、左さんの記憶にはまだ新しい。当時の仕事は「一に切符出し、二に座席確認、三にそろばんはじき、四に料金徴収」だった。改革開放初期、出稼ぎのために南下するのがはやり、旅客数が大幅に増え、切符の入手が困難になり、切符を買う旅客が列に並ぶ時間を減らすため、切符販売員の動作をできるだけ早くしなければならなかった。左さんは旅客の待ち時間を少しでも減らし、釣り銭を間違わないようにするために、毎週火、木、土曜日に販売員の業務の流れを改善化する段取りを組んだ。過去を踏まえ、左さんはこう感慨にふける。「昔の硬券切符と比べると今はとても便利になりました。電子切符は数秒で出てきますし、顔認証で改札を通れる駅もあります」

人生の大半を鉄道にささげた左さんは89年に定年退職した。その時に頭によぎったのが、働き始めたばかりの頃に突然高血圧になった乗客を助けたことだ。その乗客の「駅に来るたびにあなたがいてくれたらいいのになぁ」の言葉が、退職後も引き続き人々に貢献する意識を芽生えさせた。「自分にはまだ駅に奉仕する力と情熱があると思いました。乗客が望む限り、私は休みません」

93年、左さんの呼び掛けの下、十数人の定年退職者が高齢者ボランティアチームを結成し、駅広場に2台のテーブルと数個の腰掛けを置いて屋外サービスステーションをつくった。彼女らは駅員が秩序を保ち安全検査を行うのに協力し、乗客の質問に答え、切符の変更や払い戻しの代行、お湯の提供などをした。「ボランティアを始めたばかりの頃はみんなでお金を出し合って新しいポットを5個買い、毎日家からポットを持ってきて、旅客に無料でお茶を提供していました。屋外でちょっと大変でしたが、誰も文句は言いませんでした」。真夏の炎天下でも真冬の厳しい寒さでも左さんたちは30年近くやり続けた。 

駅で旅客にお湯を提供する当時の左さん(手前左から2人目)

人助けのためならスマホも使う

駅で長い間ボランティアをしているため、左さんは旅客から親しみを込めて「左おばあちゃん」と呼ばれている。左さんの影響と先導の下、これまで170人余りの高齢者がボランティアに参加した。当番制をつくって毎日誰かが必ず時間通りにやって来て、人助けの熱意のみに支えられて給料は受け取らない。左さんたちの業務日誌は「正」の字で埋め尽くされている。1人を手助けするごとに1画描くから、「正」の字は5人を助けたということだ。隙間なく「正」が書き込まれたノートを開くたびに、左さんは達成感が湧くと言う。

旅客により良い道案内をするために左さんたちは駅周辺の路線バスに乗り、各バスが通過する主要なバス停や所要時間を記録した。これらの情報はスマホアプリで調べられるし、スマホの方がより詳細に表示されるが、これらの操作に慣れていない高齢者が道を訪ねに来た時に手渡す道案内のメモにはアプリの情報にはないぬくもりがある。

長年の仕事で左さんの印象に最も残っているのは、新疆ウイグル自治区から上海までの長距離旅行をしていた乗客が、疲れから頭がぼーっとなり、荷物全部を車内に置き忘れたまま鄭州駅で降りてしまったことだ。事情を知った左さんはその乗客を自分の事務所に案内し、彼女にお湯を飲ませ、服を洗濯して、その家族に連絡し、自費で切符を購入して彼女を乗せた。この件をずっと覚えていた左さんは、乗客の差し迫った問題を解決する手助けをするため、ボランティアチームのメンバーで5000元を出し合って「困っている旅客のための基金」を設立した。これまで100人余りの旅客のために数万元立て替えた。

左さんの同僚の姚淑英さんはこう話す。「左さんと知り合って50年余りになりますが、彼女は若い頃から『人民に奉仕する』という言葉をいつも口にしていました。スローガンを叫んで大げさなことを言ってるだけだと思っていましたが、それは見せ掛けではなく一人の共産党員の信念だと後になって理解しました」 

同僚と昔の写真を眺める左さん(中央) 

年齢を理由にしない

2013年7月に鄭州市政府は、鄭州駅東広場にボランティア詰め所を2箇所設置し、左さんたちにここで活動してくれるよう声を掛けた。当時80歳だった左さんはこれを聞いてとても喜び、「自分に向いている」としてボランティアを続けることを決めた。同年、メンバーは時代の変化に合わせて業務範囲を積極的に拡大し、もともとは鉄道旅行する乗客に簡単なサービスを提供するだけだったのが、バスや地下鉄の乗り換え案内、人助け、携帯電話の充電、家庭内トラブルの仲裁まで幅広いサービスを提供するようになった。平均年齢67歳のメンバーはスマホを手に、無料で旅客のために振り込みや検索などを行い、時代の流れに追い付いている。「私たちは老党員ですが、考え方は老いてはならず、時代と共に進まなければなりません」これは左さんがよく口にする言葉だ。

数年前に左さんは腰椎椎間板ヘルニアが再発して手術を受けた。入院中、彼女は歩行器を使って毎日40分以上かけて駅に行き、2時間のボランティアを欠かさなかった。はたから見るとこれは自分を苦しめる無茶な行為だ。しかし左さんはこう話す。「中国共産党の趣旨は全身全霊で人民に奉仕することです。私は党歴70年の老党員として、人民奉仕を生涯続けます。年を取ってしまいましたが、家で何もせずにいることは耐えられません。大きなことができずとも小さなことをするだけでうれしいんです。人を助けて幸福感を得る、これは党員として党や社会に報いる最も良い方法だと思います」。インタビューで左さんは、自分の生きがいは貧しい人や困っている人を助けることにあると語った。(高原=文  新華社=写真)

 

人民中国インターネット版 202177

 

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