西南結ぶ鈍行列車の車掌 地域密着型の車両動かす

2023-04-23 17:17:00

高原=文 新華社=写真

韓佳さんと韓姚さんの双子姉妹は中国鉄道成都局集団公司成都客運段(旅客管理と乗務員管理を行う部署)で働いている。今年の春運(旧正月前後の帰省Uターンラッシュのための特別輸送体制)期間、姉の韓佳さんが乗務したのは新成昆線(成都と昆明をつなぐ新たな路線)を走る動力分散式列車の高速鉄道「復興号」で、妹の韓姚さんが乗務したのは在来線の成昆線で四川省の攀枝花から雲南省の普雄までを走る「鈍行列車」5633号5634号だ。 

二人はそれぞれ車内で、「高速鈍行」が共存する中国鉄道の二つのスピードを感じ取った。速い高速鉄道は中国の西と南のさまざまな都市をつなぎ、旧式の鈍行列車は山間部に暮らす住民の生活に役立っている。 


子どもと触れ合う韓姚さん


車内で乗客が予約した食事を温める韓佳さん


高速鉄道の観光コース 

韓佳さんと韓姚さんは同じ年に鉄道業界に就職し、8年間ずっと成昆線のK118号で乗務員をしていた。「乗務する車両が姉とかぶったとき、お客様から同一人物だとよく勘違いされました」と韓姚さん。他の車両の乗務員は交代しているのに、どうしてこの車両の乗務員だけ休まず働いているんだという乗客の声が何度も車掌に届けられたという。 

姉妹仲は良く、離れて暮らしたことはない。2020年6月に韓佳さんは研修を経て高速鉄道の乗務員になった。 

昨年末に新成昆線で設計時速160の複線が開通し、韓佳さんはすぐに新成昆線の「復興号」で働くことになった。四川省の成都から西昌、攀枝花、雲南省の昆明まで走るこの列車は、目的地までもともと11、13、19時間かかっていたのが、3、5、7時間以内で到着できるようになり、沿線住民の移動を大幅に改善した。それだけではなく、四川省の峨眉山から楽山、金口河大峡谷、西昌の邛海瀘山、金鱗砂浜、そして雲南省の麗江古城、玉龍雪山などの観光地が連なる個性的な「ゴールデンルート」を形成した。新路線が開通してわずか1カ月で、沿線の涼山イ(彝)族自治州はホットスポットになり、西昌市だけで延べ200万人の観光客が訪れ、観光業で20億元以上の収入があった。 

 

地域のための列車 

姉の韓佳さんが高速鉄道の乗務員となった翌年、妹の韓姚さんは普通列車の車掌試験に合格し、四川省の大涼山に残ることを選び、「鈍行列車」5633号5634号の乗務員になった。この往復列車は、四川省内に二つしかない各駅停車の一つだ。中国鉄道が全体的にスピードアップする中、「緑色に塗装された鈍行列車」はめっきり姿を消し、残っているのは基本的に公益性を重視したもので、交通の不便な辺境地域、少数民族の集中的居住地域、経済が発展していない農村地域などで主に運行し、沿線の村々に暮らす人々の買い物、通勤、通学、受診など日常生活で使われる。 

韓姚さんが乗車する5633号5634号は全営業距離が353、時速40で進み、27駅を通過する。運賃は3駅以内ならたった2元で、始発から終点まで乗っても265元しかかからない。1970年に開通し、沿線には38の村があり、その周りに97の村が点在している。運賃が安く、どの駅にも必ず止まるので、この2本の鈍行列車は現地の人々が日常的に外出する上で第一候補の乗り物となっている。 

沙馬拉達駅は鈍行列車に乗っていなければ誰からも見向きされない、トンネルのすぐ外にある小さな駅だ。付近の村人たちは早朝に列車で県の中心部へ行き、友人とお茶を飲み、午後にまた列車で戻る。村人は列車がいつ着き、いつ出るか暗記している。沙馬拉達駅は平日の乗降客が1日20~30人だが、週末は家に帰る学生が多いため、一気に100人詰め掛けることもある。韓姚さんにとってこの鈍行列車は村民のバスであり、学生の送迎車であり、商売人の市場行きの車でもある。 

 

創意工夫あふれる車内 

鈍行列車は進む速度こそ遅いが、アップグレードや改造を怠っているわけではない。90年代、村民の買い出しや直売を便利にするため、成昆線は全国に先駆けて乗客が家畜家禽を同乗することを認めた。2000年前後には列車内部を改造し、人と家畜が別々に乗車できるようになった。今年、この2本の路線は乗客数に影響しないという前提の下で、さまざまな機能を持つ車両をさらに推し出している。 

韓姚さんは説明する。「鈍行列車にも新たな変化が生まれました。車体を塗り替えただけではなく、学習車両、家畜専用車両、車内市場車両に区分けして、さらに観光情報を提供する車両、移動医療サービスを提供する健康車両などを用意し、お客様のさまざまなニーズを満足させています」 

学習車両では、車両の両側に勉強用の机と椅子が置かれ、読書コーナーも設けられていて、本棚は参考書や課外読み物でいっぱいだ。中学生の沙金華さんは西昌南駅で乗車後、すぐにリュックを下ろして本棚の前まで来ると、お気に入りの本を1冊選んで快適な座席で読み始めた。「週末に家に帰るたびに、乗っている時間を使って宿題をします。教室で自習しているのとあまり変わりません。今までは車内が騒がしかったので、勉強に集中できないこともありました。いまの学習車両はとても静かで、この机で文字を書いても腕が浮いて疲れることもありません。どれもうれしい変化です」 

移動市場車両では、横並び座席を撤去し、両側に縦並びのベンチを設置した。韓姚さんは、車両の中央部を取引エリアにすることで、イ族が車内で特産品を売ることができ、列車を降りて市場に行かなくてもここで売り買いを済ませられるようになったと語る。列車が西昌駅に着く頃、移動市場車内にいたチュムアーイーさんは手の中の紙幣を満足そうに数えていた。朝収穫した新鮮な野菜が駅に着く前に完売したのだ。「この車両のおかげで、各車両を行ったり来たりして、声を出して呼び込みしながら売らなくて済むようになり、とても便利になりました」 

現地の住民は鶏やアヒルなどの家禽を持ったまま移動市場車両に乗ることもできるし、さらに大きな家畜には専用車両がある。「普段は多くありませんが、イ族の伝統行事を控える頃には大勢の村人が豚や羊と共に乗車します。それで列車の1両を荷物専用車両に改造して、家畜をつなぎ止める鉄棒を設置し、動物の排便のためにくぼみを作り、また天窓を増やして通気性を良くしました。この車両には羊を100頭以上収容できます。家畜の輸送が終わったら、作業員たちが掃除をします」と乗務員は説明する。 

現在の鈍行列車のアップグレードと改造は鉄道当局のサービス改革における積極的な試みであり、沿線の乗客の外出時の満足度をさらに高めた。効率と手軽さを追求する「スピード」時代において、鈍行列車の存在もまた人々のニーズを満たしている。 

関連文章