「また来ます!」——中国学生訪日団の8日間

2019-05-06 09:27:53

続昕宇=文写真

 

「初めて日本に来た人は?」

 羽田空港から皇居に向かう中国人学生のバスの中でこんな質問をしたところ、10人ほどが手を挙げた。日本が初めてという学生はもちろん、訪日経験がある学生も、車窓からの景色に興奮を隠しきれない。

 2月19日から26日の8日間にわたり、「笹川杯全国大学日本知識大会」と「笹川杯作文コンクール2018――感知日本」、「『本を味わい日本を知る』作文コンクール」、「笹川杯日本研究論文コンクール」の四つのコンクールの受賞者と引率教員の34人が、コンクール主催者の日本科学協会の招きで団長の人民中国雑誌社の王漢平副社長と共に訪日。東京、沖縄、京都、大阪などを訪れ、日本の大都市と離島などの異なる日本の姿を満喫した。しかも観光旅行にとどまらず、日本の学生との討論会では忌憚なく語り合い、沖縄で戦争とサンゴ養殖について学ぶなど、収穫も盛りだくさんだったようだ。

 

美しい沖縄の海辺で記念撮影(写真宇文志鴻/対外経済貿易大学)

 

若者の立場で少子化討論

 少子高齢化は中日両国が共に抱える社会問題だ。そこで今回の訪日中、日本の大学生を含む 90 人で、「少子化現象について将来を担う私たちができること」をテーマに、七つのグループに分かれて4時間にわたる討論を行った。経済レベル、職場状況、政策、地域格差などの異なる角度から、少子化を生む原因と解決方法を共に考えることで相互理解を深め、学生自身の問題意識を高めることもできたようだ。北京外国語大学日本語学科の胡楠さんは、日本の若者の中国に対する熱意に感動し、彼らと友情を結ぶことができたと語り、「若者同士の理解を深める機会として、このようなイベントを今後もどんどん行ってほしい」と力強く話した。今回は新たにスタートした「笹川杯日本研究論文コンクール」の受賞者が訪日メンバーに加わった。このコンクールではより高い日本語コミュニケーション能力と専門分野の研究レベルが問われるため、今後の訪日では交流内容のさらなるレベルアップが期待される。

 

討論会で意見を交換する中日両国の学生たち。参加した日本人の学生の中には、人民中国雑誌社が主催する「Panda杯全日本青年作文コンクール」の受賞者の顔も見られた(写真大熊祥子/人民中国)

 

新たな発見相次ぐプログラム

 2度目の来日という蔡弋鳴さんは、「笹川杯全国大学日本知識大会」の受賞者。この訪日では「教科書の中の日本」の生の姿が見られたと喜ぶ。

 「前回と違う点は『東洋のハワイ』と呼ばれるリゾート地でありながら、過去の戦争体験から平和をとりわけ重んじる沖縄に行ったこと。同じなのは、人々の平和と友好への願いに触れたことです」と2度の訪日を比較した。

 清掃が行き届いた道路と先進的なごみ処理技術が最も印象的だったと語るのは、「『本を味わい日本を知る』作文コンクール」受賞者の郝顔さんだ。初来日で日本語ができない郝さんは、「去年も訪日のチャンスがあったんですが、残念ながら来ることができませんでした。今年ようやく来られて、本当にうれしい」と笑顔を見せた。公共の場所が清潔だという感想は訪日観光客からよく聞かれるが、訪中団はさらに都内江戸川区のごみ処理場や滋賀県の針江地区通称「生水の郷」の見学、沖縄県読谷村でのサンゴ養殖技術の体験学習をすることで、人と自然の調和と共生を実感し、資源と環境の保護の大切さを再認識したようだ。

 

中日両国の学生は四つのグループに分かれ、浅草やスカイツリーなどの東京観光を楽しんだ(写真林濤/北京師範大学)

 

青年交流に希望を託す

 「笹川杯」関連コンクールを賛助する日本財団の尾形武寿理事長は、「人と人がじかに交流しなければ、相互理解はかなわない。両国の若い人たちの交流は本当に必要。だから私たちは若者の民間交流に力を入れている」と、数々のコンクールを展開する意義を語った。

 引率教員として訪日した北京大学日本語学部助教授の岳遠坤さんは、「毛沢東主席は『朝の8時や9時の太陽のように、君たち若者は元気にあふれている。希望は君たちに託されている』と言いました。数年もすれば朝の太陽も昼を迎え、そして夕日になります。もし明日太陽が出なければ、世界は希望を失います。明日の世界に太陽を昇らせるために、中日両国の未来は常に若者に託されているのです」と青年交流の重要性を語った。また団長を務めた人民中国雑誌社の王漢平副社長は、「私は何度も日本を訪れているし、地方都市にも数多く足を運んできたが、常に『新たな発見と出会い』がある。中日青少年交流推進年である今年、学生たちが日本を訪れて交流を行うことに極めて大きな意義があることは、疑う余地もない。今回の訪日では豊富なプログラムで両国青年が直接交流を行い、互いの認識を新たにした。若者たちが重責をものともせず、中日友好事業の素晴らしい後継者になることを願ってやまない」と若者に将来を託した。

 中国を代表するSNSの微信(ウィーチャット)には、毎日の歩数を友人とランキング形式で競う機能がついているが、訪日中はほとんどの学生がトップを記録したという。訪日中の歩数が毎日1万歩を超えることなど、当たり前だったに違いない。しかし歩数という「数字」よりも大切な財産は、中日両国の未来を担う彼らが歩みを刻んだ「道」であり、道中で見た「風景」であり、そこで出会った「人」だろう。「8日間はあっという間。もっと日本にいたい」と口々に語る学生たち。日本で得た知見を心に刻み、「再見」を「さようなら」ではなく「また会いましょう」に変えて、彼らは未来に向かい歩み続ける。

 

沖縄の首里城でみんな一緒に撮った自撮りは一生の記念に

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