歴史とぬくもりに触れる旅 「Panda杯」受賞青年たちの四川訪問記
王朝陽=文 郭然=写真
6月27日から7月1日にかけて、2024年「Panda杯全日本青年作文コンクール」受賞者訪中団が四川省を訪れた。数日の旅の中で若者たちは四川の歴史と文化に触れ、現代の発展を目の当たりにしただけではなく、同年代の中国の若者と友情を結んだ。
歴史ある四川
「中国語の先生から三星堆遺跡が非常に有名だと教えられたので、ここでの見学を楽しみにしていました」。北京から成都に向かう道中、堂島世梨さんは言った。

三星堆博物館内に展示されている天を突く青銅神樹、神秘的な気配を漂わせる黄金の仮面、巨大な青銅立人像などの至宝を前にした団員たちは、感動しながらもスマホを片手に、来館者が密集する展示ケースの前で最高のアングルを探して写真を撮った。中国留学中の齋藤優人さんは、「今日まで連綿と続いた四川の歴史と文化の源流をこの目で見ることができました。ガイドから細かい解説が聞けて、古蜀文明にますます詳しくなれて感動です」と話した。
理学部の佐藤史織さんは四川文化に魅力を覚え、歴史を大切にする四川人の姿が深く印象に残った。「三星堆博物館だけではなく、成都市内の武侯祠でも歴史の重みを感じました。この重みは地元の人々が古いものを大切にしているからこそ出るのでしょう」
団員たちは歴史を見るだけではなく、それに触れもした。今回の四川の旅でお茶作り、木版年画の印刷などの伝統工芸を体験し、いっときだが中国の無形文化遺産の継承者となった。
前掛けを着け、頭巾をかぶり、小さな竹籠を背負った若者たちが趙坡茶仙谷の茶山で茶を摘んだ。そして製茶の先生の指導の下、摘んだ茶葉をいり、揉み、ふるい分けなどをして、小さなパックに詰めて手作りお茶を完成させた。「お茶は好きですが、作ったのは初めてです。茶文化の理解度が高まり、中国文化にも興味が湧きました」と伊藤優希さんは話した。
お茶作りを終えた訪中団は綿竹年画村を訪れた。緑豊かな田園地帯は生命力に満ちあふれ、石畳の道が続く町並みは古風で趣があり、家々の白い壁には生活の息吹に満ちて色彩豊かな年画が描かれている。その静かな農村の風景に団員たちは魅了された。村内のカフェでは名物の年画コーヒーを注文し、年画のラテアートを写真に収めた。「年画も村の雰囲気も夢の中にいるようでした」と、すでに何年も会社で働いている丸山大貴さんは名残惜しそうに村をあとにした。
融合する四川
昔ながらの年画と現代の都市の生活には欠かせないコーヒーを組み合わせたような伝統文化の再創造を若者たちは数多く目撃した。
天府長島デジタル文化クリエーティブ産業パークの展示ホールでは、パーク内に事務所を構える可可豆アニメーションが中国神話を題材にして製作したアニメ映画『哪吒(ナタ)』シリーズの展示があり、団員たちは足を止めて見入った。そして主人公のナタと敖丙のパネルと写真を撮った。中国製モバイルゲームに夢中の三浦愛稟さんは、ゲーム会社展示エリアで着せ替えゲーム『ミラクルニキ』のプロモーションビデオを見て、主人公のニキの服装に故宮の文化財がモチーフとして使われていると知り、見終わってもまだ興味が尽きない様子だった。四川の少数民族の民謡や楽器の要素をデジタル音楽にして展示するエリアで、村上陽菜さんはその幽玄の音色に新たな感覚を味わった。聞き終えると彼女は「聞いた方がいい、全然違うから」と同行者に強く薦めた。

「パーク内ではここに在籍している企業が開発したゲーム、アニメ、音楽をたくさん見たり聞いたりしましたが、そこには中国の伝統文化要素がたくさん取り入れられていました。伝統文化を切り捨てるのではなく、新たな産業に組み込むことはとても意義があると思いました」。成都でデジタルクリエーティブが沸き起こっている様子に、蒲原詩織さんは四川の旅に対する認識をさらに深めた。彼女は「融合」という言葉で四川という土地の印象をまとめた。彼女の目には、四川では伝統と現代が融合し、ゆとりと忙しない生活リズムが融合し、素晴らしい自然環境と産業の発展が融合し、さらに人と人が交流し融合しているように映った。
ぬくもりある四川
今回、訪中団は成都理工大学と学生交流を行った。蒲原さんにとってこれが同年代の中国人との初の会話だった。「最初は言葉が通じないから友達になれるか不安でしたが、話をするうちにたくさんの共通の趣味があることが分かりました」。他の団員も似たような感想を述べた。初めて中国を訪れ、初めて同年代の中国人と交流した団員は少なくなかった。
交流会後に村上さんはスマホで「地主之誼」(地元の者としてよしみを尽くす)という中国の四字熟語を検索した。その前の交流で、彼女が成都理工大学のマスコットのグッズに興味があることに気付いた中国側パートナーが、先にそれを買って彼女にプレゼントしたのである。「どうしてお金を払ってくれたのかと聞いたら、『地主之誼』だからと言われました」。その熟語の意味を調べ終わった彼女は感動し、「パートナーは来年3月に大阪に留学に来る予定だから、そのときはきっと『地主之誼』で彼女をしっかりもてなしたいです」と語った。

新たな出会いだけではなく、旧友との再会もあった。中国の大学院留学を考えている山野井咲耶さんは昨年成都に来たとき、劉夫妻の家にお世話になった。今回、彼は四川国際友城館で行われる日本青年歓迎式に劉夫妻を招待した。青年代表のスピーチでは昨年の劉夫妻との交流を中国語で振り返り、「成都の生活はとてものんびりしていて、お茶を楽しみながらマージャンに興じている」と話し、会場の四川人を笑わせた。
再会について山野井さんはこう述べた。「昨年来たときはまだ中国語ができず、劉さんたちともほぼ英語でやり取りしていました。今回は中国語を練習し、中国語でスピーチすることができました。僕の中国語を聞いて彼らに成長したと感じてほしい」
短い四川の旅で団員たちは当地の焼けるような暑さ、熱い火鍋、そして住民たちの温かい真心を体験した。丸山さんは「ぬくもり」というキーワードで四川の印象をまとめた。数え切れないぬくもりを胸に、訪中団は7月1日に成都をあとにした。しかし日本の若者と中国の未来へ続く友情の旅は始まったばかりかもしれない。今後の旅で彼らがさらに多くの中国のキーワードを見つけることを期待したい。