文・写真=佐藤祐介
10月28日、学問による中日交流を促進する北京日本人学術交流会(以下、交流会)の第300回記念が開かれた。交流会は2008年に当時北京大学大学院博士研究生だった山口直樹氏が中心となり始まった民間研究会で、主に北京在住の日本人研究者を講師として招き、知的交流の場としてこれまで歴史、科学、政治、経済、特撮、アニメなど幅広い分野で中日の学術的対話を行ってきた。
3部構成で進行した当日はゲストに元北京大学国際関係学院教授の賈蕙萱氏、国際関係学院教授の魯義氏、外交学院教授の周永生氏、清華大学・野村総研中国研究センター理事の松野豊氏らを招き、その他中日の学者、記者、社会人、学生ら40人が参加し、中にはこのために日本から来た人もいた。第1部では北京大学国際関係学院教授で日本政治と中日関係を専門とする梁雲祥氏が講師として国交正常化45年間の中日関係の変化を語り、関係改善の具体案を出した。質疑応答の際には梁氏と参加者双方が率直に意見を交わし、中日の共通利益を探った。
講演後に松野氏(右)の感想を聞く梁氏(左)と司会の山口氏(中央)
講演後に中日の民間交流について持論を述べる魯氏(中央)
第2部では山口氏がパワーポイントでこれまでの活動を振り返り、当時の思い出を語った。300回の中では山口氏自らが講師となった交流会も少なくなく、南満州鉄道の科学技術をテーマにした第1回目をはじめ、科学、経済、文学、政治などで数々のジャンルで問題を提起し、中日双方の参加者の討論を助けた。変わったものでは中国での蒼井そら人気を考える会や、山口氏の研究テーマの一つである「ゴジラ」を扱って放射能と原子力を考える会もあった。
過去に参加した講師の中には、日本に転校した中国人小学生を追ったドキュメンタリー「小さな留学生」の元少女であり現在は中国新聞記者の張素氏、交流会で村山談話や田中角栄などをテーマに4回連続で講演した経済評論家の佐高信氏、中国人学生の日本への興味や中日両国の認識ギャップを語った元読売新聞記者で現在は広東省の汕頭大学新聞学院教授の加藤隆則氏ら大勢の著名人がいる。
第3部では食事会が開かれ、中華料理を食べながら各自親睦を深めた。終わり際に参加者同士の名刺交換が行われたが、Wechatアカウントの交換という中国ならではの光景も見られた。
全体の集合写真
交流会は今後も一、二週間に1回のペースで継続して行われ、北京の「知」のプラットホームとして発表の場と学習の場を中日の人々に提供する。また、山口氏はあいさつの中で「今後は若手研究者が論文を発表する学術雑誌をつくりたい」と抱負を述べた。来年10周年を迎える交流会の活動は中日関係の一つの座標になるだろう。
北京日本人学術交流会の連絡先
pngk218523@gmail.com(担当:山口)