東アジアの経済協力、「雁行」から「ころ軸受」に

2020-02-21 12:21:52

 

国際社会はかつて日本人学者が唱えた「雁行形態」によって、北東アジアの地域経済協力モデルを分析したことがある。21世紀に入ると「雁行形態」は徐々に衰えていった。筆者は先ほど上梓した『東アジア統合の苦しい道』の中で、「ころ軸受形態」という概念を掲げた。これは近年の東アジア地域経済協力において形成された、新たな連結配置モデルを定義づけるため用いられる。

この「ころ軸受形態」とは、機械の軸受の外在的な様式、すなわちローラーが回ることで軸受がなめらかに旋回する原理によって、東アジア経済一体化の現象を解析する。この概念を使って見ると、東アジアの各経済国間の貿易生産投資科学技術資源知的財産権労働力などの産業要素が、面積が広く人口の多い東アジア大陸を一つの場とし、クローズドな内部流動により緊密に結びつき、整った産業チェーンを形成していることが分かる。これによって東アジア全体を一つの巨大な地域経済体とする。

うち、東アジア大陸に位置し北東アジアと東南アジアを結ぶ中国が、決定的な支えの力を発揮している。改革開放後に急成長した中国経済には、規模が大きく、広さと深みがあり、構造が多層的で、産業が開放的という大きな特徴がある。地域経済協力に積極的に参与し、強い引力及び地域内の経済国との全分野の産業協力により、東アジアの経済プレートを再構築することができる。

「中国製」が世界各地に広がっているが、これらの商品のうち多くが完全に中国で生産されたものではない。その多くが中国で組み立てられただけであり、中間品の部品は中国周辺の各国で生産され、中国に輸入されてから生産ラインにおける集中組み立てで最終製品になる。これは世界のサプライチェーンにおいて、中国と欧米各国が主に最終製品でつながる生産販売関係であり、東アジア諸国とは中間品でつながる生産関係である理由を説明している。そのため地域内の産業大循環の作用を受けるなか、東アジアを一つの全体的な経済プレートとすることで、真の意義での「世界の工場」となる。

また東アジアの地域協力は南太平洋や南アジアにも延長し、「環東アジア」という経済協力枠組みを形成している。東アジア諸国、豪州、NZ、インドなどが現在「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」の交渉を進めている。将来的に面積の広い、自由貿易区に似た大きな枠組みが形成される見通しだ。これにより「ころ軸受形態」は産業チェーン面で原材料供給及びマンパワーという2つの方向に延長し、かつ東アジアの「世界の工場」としてのバリューチェーンをさらに拡張することになる。

中米貿易戦争のリスクを回避するため、また人件費節約の需要により、一部の企業は生産を中国から東南アジア南アジア諸国にシフトしようとしている。これは注目すべき現象だ。表面的に見ると、これには効果を求める合理性があるが、東アジア経済がすでに「ころ軸受形態」の深い統合にあるなか、その長期的な総合効果に期待できるとは限らない。(筆者蘇浩 外交学院外交学系教授)

「中国網日本語版(チャイナネット)」2019710

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