責任逃れの「汚染処理水」海洋放出
中国社会科学院日本研究所研究員 金嬴=文
東京電力はこのほど、福島第一原子力発電所の放射性物質を取り除いた汚染処理水の放出設備設置を含む「海洋放出」の各準備作業が、今月末までに完了する見通しであることを明らかにした。日本のメディアは、海洋放出計画は7月に本格的に始動すると見ている。これは多くの国や利害関係者の深刻な懸念と強い警戒を引き起こしている。
日本政府が、「処理済みの汚染水を海洋に放出する」という決定に固執する背景には、いくつかの深い要因がある。
まず、日本の当局の汚染水の処理方法が論争を呼んでいる最大の問題点は、福島原発事故の前例のない深刻さにきちんと向き合っていないことにある。事故後の復旧の戦略的な計画であれ、汚染水の処理対策であれ、日本が選んだ基準は意外にも正常に稼働している原発だった。
例えば、「汚染処理水の海洋放出」という決定では、「世界中の原子力施設でトリチウムは日常的排出されている」と主張している。しかし、これは原発の通常運転時の液体排出物と事故処理後の汚染水の本質的な違いをあいまいにする意図がある。事故が発生した原発を「正常化」するこうしたやり方は、客観的に日本の政策オプションの余地を狭めている。
次に、東京五輪ための国家イメージ作りが日本政府の心理的な重荷となった面が大きかった。良いイメージを作ろうとすればするほど、ネガティブな情報を意図的に抑え、いわゆる「科学的エビデンス(根拠)に基づく情報を国内外に迅速・正確・オープンに分かりやすく提供する」ことを空言としてしまった。
さらに、原子力産業を守り、気候変動政策などのグリーン発展のニーズを実現するために、日本政府は東京電力という業界のトップを守ることを最優先とした。また、東電が先進的な原子力事故の処理能力を持つというイメージを保ちつつ、事故処理の負担が過度に重くならないようにした。こうして汚染処理水の海洋放出が「最善の選択」となった。
最後に、福島原発で事故が起きた2011年は、ちょうど米オバマ政権が「アジア回帰」の戦略を打ち出し、日米関係が揺れ動いていた時だった。原発事故の発生後、日米双方はいずれも「東日本大震災」、福島原発事故を戦略的チャンスと捉え、二国間同盟を迅速かつ揺るぎなく推進してきた。日本は、いったん損なわれた日米外交関係を修復し、米国の力を借りて「汚染処理水の海洋放出」に支持を得ただけでなく、汚染処理水の放出問題を東西陣営の対立問題に転化させた。そして、西側陣営による「新冷戦」「陣営化」対立を隠れみのに、日本は自ら果たすべき国際責任から逃れた。一方、米国側はこれを機に日本での軍事的な覇権を守り、日本を抑える手だてを増やした。
福島原発事故の汚染水を適切に処理することは、日本だけの問題ではなく、人類社会の持続可能な成長のために避けては通れない共通の課題である。日本は、国際社会や周辺国、自国民の深刻な懸念に誠実に対応し、安全な処理方法を最大限に活用し、利害関係者と十分な協調・意思疎通を図り、適切な処理プランを確定する必要がある。
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