多極化と相互利益の新パラダイム体現 日中協力で「一帯一路」に新地平を 

2023-10-19 10:39:00

               

文=ジャーナリスト・岡田充

 

 

習近平国家主席が第3回「一帯一路」国際協力国際フォーラムで行った基調講演の精髄は、次のようにまとめられる。世界で起きている大変化は、軍事思考に偏重した米欧主導の世界秩序が、発展段階の違いや異なる文化、異なる社会システムの違いを乗り越え、多極化する世界秩序に代わる「パラダイム」(主要な規範)転換であり、「一帯一路」は、多極化と相互利益(ウインウイン協力)を体現している。 

 

日本や欧米メディアは「一帯一路」が途上国に債務危機を招いたなど「負の側面」を極大化して伝えている。しかし日本も安倍政権時代「一帯一路」に着目し、2016年8月末、「アフリカ開発会議「インド太平洋戦略」を発表した。それは、日本を軸にインフラ中心の広域的経済・開発協力と、中国を抑止する安保連携の二つの側面からなっていたが、米戦略の下で中国抑止の安保連携だけが突出し、経済協力は実行されなかった。 

 

安倍政権は2017年5月、悪化していた日中関係の打開に向け「一帯一路」へ協力する方針を、「安倍親書」を通じて習主席に伝えた。それにより首脳交流が再開され。関係正常化が軌道に乗った歴史がある。この政策転換は、17年5月北京で開かれた第1回「一帯一路」国際フォーラムで行われた因縁がある

 

安倍氏は17年12月、日中経済界による「日中CEOサミット」で、「一帯一路」での日中経済連携の推進に意欲を見せ、同年12月7日には「一帯一路」に日本企業が参加する際の三つの協力分野をまとめ政府系金融機関の支援も検討するとされた。 

 

このスキームは残念ながら実行に移されないままになった。日本外務省によると、対外債務のうち2国間債務最大債権国中国で全体の43%、次いで日本23%、インド15%など。経済・社会指標が衰退する一方の日本が、単独で第3国向けのインフラ建設を十分に行う力はない。日本政府は第3回フォーラムに政府代表の派遣を見送った。しかし安倍氏の打ち出したスキームは死んではいない。安倍時代より悪化した日中関係を正しい軌道に戻すには、一帯一路へ協力は意味がある。世界第2位と第3位の経済大国の協力は、債務問題解決に向けた多国間協力を含め、「一帯一路」の内容を質量ともに新たな地平に導く役割を果たせる潜在力があると思う。 

  

プロフィール 

岡田充 1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局張、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員 

 

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