AIを人類共通の力に――オープンな発展から広がる国際協力
国際医療福祉大学特任教授、「北京―東京フォーラム」デジタル分科会日本側パネリスト 山崎達雄(談)
人工知能(AI)が世界で急速に発展する現在、上海で2026世界人工知能大会が開催されたことには大きな意味があります。習近平国家主席は、AIについて開放性、多国間主義、公正・公平なアクセスを強調し、イノベーションの促進、安全性の確保、包括的なAI開発支援、国際的なAIガバナンスの強化という方向性を示しました。いずれも共感し、支持できる内容です。
特に評価できるのは、中国がオープンなAIエコシステムを重視している点です。オープンソースのAIモデルを発展させ、イノベーションを共有し、その利益を広く普及させようとしています。民間企業だけでは、収益面から技術を最初から開放することが難しい場合もあります。国が積極的に推進する中国のアプローチは、AIを利用する他国にとっても大きなメリットがあります。
より幅広い参加で実効あるガバナンスへ
今回上海で設立された世界AI協力機構(WAICO)の理念は評価したいと思います。一方、米国、日本、欧州など主要なAI先進国が参加していない点には、今後の課題が残されています。国際的なAIガバナンスを強化する機構を立ち上げたからこそ、今後は参加国をさらに広げていくことが重要で、G20など既存の枠組みを活用することも一つの選択肢だったと思います。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)も設立当初は、中国が独自に進めるための枠組みではないかと見られがちでしたが、結果的に国際機関として立派に発展しています。今回の機構についても、米国、欧州、日本、韓国などを含めた議論の場をつくり、中国の理念をもっと多くの国と共有していただきたいと思います。
AIのリスクについて、これまでは、データの保有・移転や個人情報保護が議論の中心でした。しかし、この1年ほどで生成AIの進化が急速に進み、量子コンピューター技術がなければ起こらないと思われていた事象もすでに起き始めています。
フロンティアAIによってコンピューターやシステムの脆弱性が容易に判明するなど、サイバー攻撃の危険性が非常に高まっています。生物・化学兵器に関する情報がテロリストなどに簡単に渡る可能性に加え、AI自身が人間を超えてしまうことも、全く違う次元の課題になっています。
こうした危険を排除、コントロールするため、AIの悪用を防ぐだけでなく、AI自体のリスクを遮断するルール作りが必要です。これは中国だけでなく、日本を含む各国の共通課題です。
オープンソースが広げる協力
中国では、多くの関係者がAIを活用し、速いスピードと大きな規模で社会実装を進めています。その最大の理由は、AI開発がオープンソース型であることだと思います。さらに中国は高い技術力を持ち、ロボットをはじめとするフィジカルAIでも先行しています。広大な国土と多様な民族を持つ中国だからこそ、AIをうまく活用していける面もあると思います。
オープンソースのため、日本を含む他国も利用できます。習主席が強調した多国間主義やAIへの公平なアクセスが実現すれば、より多くの協力やビジネス上の連携が生まれるでしょう。日本のロボット企業も、オープンアームなどの開発をオープンソースで進めており、各国から引き合いがあります。すぐに利益につながらなくても、長い目でAIを発展させ、社会に役立てるという意味で、中国は非常に良いアプローチを進めてきたと思います。
日中協力では、中国のオープンソースAIと、日本の高い技術力や産業分野で蓄積されたデータを組み合わせることが有効です。日本は医療、介護、教育、防災、消防、環境などで、エージェント型AIを含むフィジカルAIの開発と実証導入を進めようとしています。安全保障上の問題をクリアしながら、中国が先行する分野で協力し、互いに教訓を共有できるのではないでしょうか。実際、中国でAIと日本の技術を組み合わせた実証実験を行っている日本企業もあると聞いていますので、とても楽しみにしています。(李一凡=聞き手)
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