米国が年間輸入台数わずか1万台余りの中国製電気自動車への関税を引き上げるのはなぜか?
現在、中国製新エネルギー車の米国市場への輸出台数は決して多くなく、他の海外市場と比較しても、中国の自動車メーカーの北米市場への進出は少ない状況にある。中国の自動車メーカーは米国市場に対し、取り立てて言うほどの「打撃」はない。
中国税関総署の統計によると、2023年の中国製新エネ車の米国への輸出台数はわずか1万台余りで、輸出全体に占める割合は1%未満だ。「ウォール・ストリート・ジャーナル」の報道によると、従来の25%という関税率ですでに、中国の電気自動車(EV)メーカーに米国市場進出を躊躇させる効果を果たしている。
東呉証券は最近のリサーチレポートで、バイデン政権が圧力の下で「中国カード」を切った最終的な目的は、「金」ではなく「票」にあると見られると指摘した。
商務部(省)の報道官は、米国が国内の政治的な考えから301関税(米通商法301条に基づく追加関税)再審査手続きを濫用し、一部の中国製品に対する301関税をさらに引き上げ、経済・貿易問題を政治化・道具化したことは典型的な政治工作であるとして、中国側としてこれに強い不満を表明した。世界貿易機関(WTO)は301関税について、WTO協定違反であるとの裁定をとうに下している。それにもかかわらず、米側はこれを是正しないばかりか、反対に独断専行し、過ちを重ねている。
政治的な考え以外に、バイデン政権がこの一見「転ばぬ先の杖」的なシグナルを発する理由は何か?東呉証券のリサーチレポートは、米国経済の観点から見ると、中国製EVその他クリーンエネルギー製品に対する関税引き上げは、表面的には自国の新エネルギー産業の発展に有利だとしている。
今回の関税引き上げリストには、電気自動車用リチウム電池や電池部品などの製品の関税を7.5%から25%に引き上げることも含まれている。上海交通大学安泰経管学院教授で深セン産業研究院の首席科学者である蒋煒氏によると、関税政策全体から見ると、米国が電池や新エネ車の製造を米国内に移転させ、自動車製造業の米国回帰を促進したいと考えていることが明らかにうかがえるという。
沃達福デジタル自動車国際協力研究センターの張翔センター長は、「これは米国にとっても損失だ。現在、自動車産業は国際化された開かれたものであり、門を閉ざして製造することは不可能だ。中国製自動車も米国製チップを購入しているように、米国製自動車が中国の動力電池などの部品を購入するのも正常なことだ。互いに協力し合うことで初めて良い製品を作り出し、価格も競争力を持つことができる。米国が実施しようとしている政策は、地元の新エネ車産業や消費者にも負の影響をもたらす」と指摘する。(編集NA)
「人民網日本語版」2024年5月21日